育種学雑誌
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コムギの穂発芽検定法と難穂発芽性遺伝子源の系譜
星野 次汪友岡 憲彦福永 公平瀬古 秀文
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1989 年 39 巻 3 号 p. 365-372

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抄録

コムギの穂発芽性の簡易検定法について検討し,雌穂発芽性遺伝子源の系譜及び遺伝様式の解明を行った.穂発芽率は,-16℃貯蔵0℃貯蔵16℃貯蔵室内貯蔵の順で増加し,サンプリング直後の穂発芽率(0%~12.8%)に比べ-16℃貯蔵を除き増加した.サンプリング直後の穂発芽率と0℃1か月貯蔵,16℃1か月貯蔵,室内1か月貯蔵,室内2か月貯蔵との間には有意な相関関系は認めらたが,0℃2か月貯蔵,16℃2か月貯蔵との間には有意な相関関係は認められなかった.恒温条件及び変温条件での検定では,恒温条件が変温条件より高い穂発芽率を示したが、登熟の進行に伴う穂発芽率の推移はほぼ平行関係にあった.穂発芽率調査までの処理日数は,サンプりシグ直後の検定では14日程度,サンプリング後約1か月以上貯蔵した穂では6日であった.サンプリング直後の穂発芽率,ろ紙に包み各種条件で検定した簡易検定法(ろ紙包み法)での穂発芽率との間に高い有意な相関関系が認められた.白達摩,トヨホコムギ,農林6!号,センコウシコムギは穂発芽性難の品種で,トヨホコムギの難穂発芽性は赤坊主→福岡小麦12号→福岡小麦18号→農林61号,センコウシコムギは伊賀筑後→伊賀筑後オレゴンを経由して導入されたことが明らかになった.難穂発芽性は優性で,9(難+やや難):6(中+やや易):1(易+極易)の分離比に適合し,2遺伝子の存在が明らかになった.本試験の結果より,農業特性の優れている農林61号,トヨホコムギを難穂発芽性遺伝子源とし,早期世代で多数の個体・系統をサンプリングし1か月程度貯蔵した後,収穫期の繁忙を避けろ紙包み法で穂発芽性検定を行うならば難穂発芽性系統が早期に選抜,固定されると考えられる.

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