抄録
症例は72歳男性.主訴は舌痛,味覚低下. 30年前より胸部X線写真にて径約10cmの縦隔腫瘤を指摘されたが,自覚症状を認めず.平成8年11月より舌痛,味覚低下,その後慢性下痢と体重減少が出現したため当科入院となった.口腔内には扁平苔癬を認めた.血液検査では免疫グロブリンの低値を認めた.また,胸部CT, MRIでは12×10cmの巨大な縦隔腫瘤を認めた.穿刺生検で紡錘細胞型胸腺腫であり,扁平苔癬を伴った胸腺腫と低ガンマグロブリン血症(Good症候群)と診断された.慢性下痢に対し免疫グロブリン静注が効果的とされ,本症例でも改善を認めた.胸腺腫の切除は低ガンマグロブリン血症を改善しないとされ,本症例でも行われなかった.本症例はGood症候群に扁平苔癬を合併したまれな症例と考えられた.