心電図
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原著
87点体表面心電図におけるQRS波形による心臓再同期療法の有効性の予測
横川 美樹清水 渉野田 崇岡村 英夫里見 和浩須山 和弘栗田 隆志相原 直彦神崎 秀明庭屋 和夫小林 順二郎鎌倉 史郎
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2009 年 29 巻 5 号 p. 342-349

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抄録
心電図上のQRS波形は,心臓の興奮伝播様式を反映するとされている.本研究では,心臓再同期療法(CRT)施行前後でのQRS波形の変化を87点体表面心電図(体表面電位図)を用いて評価し,CRTの有効性の指標を検討した.慢性心不全を伴う拡張型心筋症患者35例(男性28例,58±16歳,左室駆出率20±8%)を対象に,CRT施行前(18±17日前),CRT施行後(1日後,1ヵ月後,3ヵ月後)の87点体表面心電図(体表面電位図)を記録した.87誘導のうち,正常興奮伝播での最終興奮部位に相当する流出路領域(OT:D-F/5-6,高位前胸部領域)と左室心外膜ペーシング部位に相当する後側壁領域(PL:J-L/3-4,低位左側背部領域)におけるQRS波形を評価した.各領域における6誘導のうち,R波形を呈する誘導(R誘導)数とQS波形を呈する誘導(QS誘導)数を,有効群21例と無効群14例で比較した.CRT施行前の各領域におけるR誘導数とQS誘導数に,両群で差はなかった.CRT施行後,有効群でOT領域でのR誘導数が有意に増加したが,無効群では不変であった.また,有効群でPL領域でのQS誘導数が有意に増加したが,無効例では不変であった.CRT施行後の各領域におけるR誘導数,QS誘導数は,両群ともに経過観察期間を通じて不変であった.CRT施行後の流出路領域のR誘導数の増加と後側壁領域のQS誘導数の増加は,CRTの有効性の予測因子となることが示唆された.
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© 2009 一般社団法人日本不整脈心電学会
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