心電図
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最新号
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Editorial
総説
  • 花木 裕一
    2025 年45 巻2 号 p. 87-95
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/07/30
    ジャーナル フリー

    瘢痕組織関連心室頻拍(VT)の治療において,血行動態が安定している場合にはVTの旋回路を同定し,重要な緩徐伝導部位を焼灼することが目標となるが,不安定な場合には基質を同定して焼灼することが中心となる.その中でもペースマッピング法は,心室性不整脈の起源を同定することや,異常な電気伝導経路を特定することで,VTの基質を同定することができるために大変有用な手法で,カテーテルアブレーションの黎明期から広く用いられている.また,三次元マッピングシステムなどの技術の進歩によってVTの伝導回路が三次元的様相を呈することや,機能的基質マッピングにおける遅延伝導特性との関係などが示され,カテーテル治療時にマッピングシステムを駆使してVT回路を三次元的に描出し把握することが重要となっている.本総説では,ペースマッピング法の基本的な知見と臨床での活用方法,そしてその限界について,さらには我々の発表したVT回路の中での伝導遅延部位や障壁によって生じるペースマッピング波形の急激な変化(abrupt change)を参考にした三次元的なVT回路の推定についても概説をする.その他,最新の論文におけるペースマッピング法の新たな知見についても触れている.

原著
  • 布施 茂登, 高桑 康成, 秋元 真裕子
    2025 年45 巻2 号 p. 96-102
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/07/30
    ジャーナル フリー

    目的:小児心電図における自動計測によるST値の各誘導の時系列変動と変動上限を検討すること.方法:対象は2004年から2023年までに当院小児心臓外来を受診した患者100名.年齢は1ヵ月から12歳,検査間隔は2日から436日,ST値はST-midとした.同一患者で2回計測し,ST値の差の絶対値をST値の変動とした.結果:ST値の変動と検査間隔の間にはいずれの誘導においても有意な相関を認めなかった.1~11ヵ月群,1~3歳群,4~12歳群の3群で比較すると,ST値の変動はいずれの年齢群も小さかったが,とくに4~12歳の群が四肢誘導とV6誘導においてST値の変動が小さかった(p=0.001から0.01).ほとんどの年齢,誘導においても,変動上限を95%タイル値とすると100μV未満であり,十分に小さかった.結語:小児においては年齢,各誘導ごとにST値の変動上限を考慮することにより,時系列によるST異常の判断が可能である.

症例
  • 髙橋 拓也, 鈴木 啓資, 鈴木 舞, 中潟 寛, 青木 恒介, 佐藤 英二, 中嶋 壮太, 山科 順裕, 宮下 武彦, 三引 義明, 石田 ...
    2025 年45 巻2 号 p. 103-110
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/07/30
    ジャーナル フリー

    症例は63歳男性.X−3年に心肺停止で搬送され,蘇生後に右冠動脈#3へ緊急経皮的冠動脈形成術を施行した.X年に心房頻拍が認められ,レートコントロールに難渋したため,高周波カテーテルアブレーションの方針となった.電気生理学的検査では,頻拍周期234msの心房頻拍が誘発され,3Dマッピングシステムではfigure of eight reentrant tachycardiaのactivationパターンが得られた.左房下壁の峡部付近は低電位領域であり,exit siteでの心房entrainment pacingによるpost pacing intervalは頻拍周期+6msであった.同部位を心房頻拍中に焼灼したところ,即座に停止した.左房下壁が低電位領域になった原因検索を行うと,X−2年の冠動脈造影では右冠動脈から分岐する左房枝が低電位領域になった左房近傍を走行しており,X年の心電同期冠動脈造影CT検査では他の同等の冠動脈側枝が残存しているにも関わらず,その左房枝が消失していたことが明らかになった.以上のことから,左房下壁に低電位領域を形成した要因の一つとして,心停止時の冠動脈血流低下や動脈硬化病変の進行によって心房梗塞が起こったものと推測した.

Letter
大会レポート
心電学フロンティア2024「P波から見える心房細動」
  • 甲谷 友幸
    2025 年45 巻2 号 p. 121-126
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/07/30
    ジャーナル フリー

    心電図のP波のパラメータとして,長さ,軸,形の3種類がある.P波の長さの延長は心房リモデリングを反映し,心房細動や心血管イベントの予測因子となる.形の変化はターミナルフォースの増大やノッチ型P波があり,どちらも心血管イベントと関連することが示されている.動脈硬化性疾患でのP波の変化は,後負荷増大に伴う心房リモデリングを反映する機序が考えられる.今後,高血圧患者や心不全患者などでの心房細動発症や心血管イベントの予後予測,リスク層別化などにP波の測定を役立てたい.

  • 深谷 英平, 斎藤 大樹, 吉澤 智治
    2025 年45 巻2 号 p. 127-133
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/07/30
    ジャーナル フリー

    心房細動(AF)は超高齢社会において有病率が増加しており,早期診断およびアブレーション後の再発予測が重要な課題である.本稿では,心電図におけるP波に着目し,心房の電気的・構造的リモデリングとの関係,ならびにAF発症および再発との関連について概説する.P波の形態や持続時間,時間的ばらつき,および加算平均心電図による心房遅延電位(A-LP)の有無は,AF新規発症やアブレーション後の再発予測に有用な指標である.特にA-LP陽性例では再発率が高く,治療戦略において基質修正の重要性を示唆する.また,P波オルタナンスの変化は心房逆リモデリングの指標ともなりうる.P波解析は,非侵襲的かつ簡便に得られる情報として,AFの病態理解と治療方針決定に寄与する可能性がある.

  • 矢野 正道
    2025 年45 巻2 号 p. 134-140
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/07/30
    ジャーナル フリー

    心房リモデリング(構造的リモデリング)は心筋細胞の脱落と間質の線維化の形成によるものであり,心電図におけるP波時間の延長や波高の低下として現れる.今回我々はP波長(Pd)と3次元空間におけるP波ベクトルの大きさ(Pvm:P-wave vector magnitude)の比,Pd/Pvmを用いて心房細動アブレーション後の成績との関連を検討した.High Pd/Pvmは有意にアブレーション後の再発が多く,High Pd/Pvmは手技に伴う心筋傷害(高感度トロポニンⅠ)が少なく,再発形式はリンエントリー性の心房頻拍が多いといった,心筋細胞の脱落や線維化を示唆する所見を認めた.Pd/Pvmは術後の再発を予測する簡便で非常に有用な指標であり,同時に心房リモデリングの進行も予測できるため,事前のアブレーションシステムの決定や術中の追加アブレーションの検討にも役立つと考えられる.

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