Brugada症候群の致死性不整脈発生のメカニズムに関してはいまだ議論があるが,複数の研究で右室流出路心外膜に脱分極異常を示唆する心室遅延電位の関与が指摘されている.心室遅延電位を非侵襲的に評価する方法として加算平均心電図検査があるが,Brugada症候群のリスク層別化における有用性については議論がある.本研究では,有症候性(20例)および無症候性(21例)Brugada症候群患者において,通常の加算平均心電図の心室遅延電位と新たに開発された単極誘導によるホルター加算平均心電図を用いた右側胸部誘導の心室遅延電位を計測し,リスク層別化に有用かどうかを検討した.通常の加算平均心電図の心室遅延電位は有症候性と無症候性患者の間に有意差を認めなかったが,単極誘導のホルター加算平均心電図では,第3肋間V2誘導のRMS40の夜間測定値が有症候性において有意に低値を示し(5.5±0.8 vs 8.2±0.8μV;p=0.027),Brugada症候群リスク層別化の有用なマーカーとなる可能性が示唆された.
症例は60歳男性.意識消失を伴うBrugada型心電図に対し行った電気生理学的検査で心室細動(ventricular fibrillation:VF)が誘発され,一次予防として植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator:ICD)植込みが施行された.X年7月,屋根上で断続的に指先に弱い感電を自覚しながら,素手でクーラー室外機取り付け作業をしていたところ,突然全身に強い衝撃を受け,50cm程下の段の屋根に落下し,当院へ救急搬送された.デバイスチェックでVF検出閾値を超えるノイズ信号がVFと誤感知され,ショック治療が作動したことが判明した.ICDは,致死的頻脈性不整脈による心臓突然死を予防し,生命予後を改善する,もっとも有効かつ確立された治療法であるが,まれに電磁干渉(electromagnetic interference:EMI)による不適切作動が生じることがある.EMIによる不適切作動は,医療機器だけでなく,日常生活で取り扱う様々な電気設備の影響でも起こりうる.電気設備からの感電は,適切な患者教育により回避できる可能性が高く,感電はデバイスの不適切作動の原因となりうることを広く啓発する必要がある.
近年,不整脈治療において生活習慣病管理の重要性が指摘されている.具体的には,高血圧,糖尿病,睡眠時無呼吸症候群などの疾患管理,および運動,肥満,喫煙,飲酒などの生活習慣の管理である.不整脈発症の一次予防における開業医の役割は重要で,生活習慣病管理が不十分であれば不整脈の発生率増加につながる.また専門病院での治療を行っても,開業医へ戻った際の生活習慣病管理が不十分であれば,再発リスクは高まる.不整脈の予防,および治療後の再発予防が重要となる.近年行われるようになった,数日から数週にわたって記録可能な長時間心電図は,イベントの検出能において,24時間ホルター心電図よりも優れていることが明らかとなっている1), 2).長時間心電計の機種は多様であるが,筆者は,平均睡眠周期性心拍変動(cyclic variation of heart rate index:CVHRI)による睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)のリスク算出,加速度センサーを用いた運動量の計測,心拍変動解析による自律神経評価機能などに着目し,これらの有用性と得られたデータを,開業医が患者の包括的管理において,どのように活用すべきかについて検討する.
心電図P波の読影は,形態を経験で読み解く文系的な診断文化の中で発展してきた.山の形やノッチに意味を見いだす文系的アプローチは,P波に宿る病態の物語を伝えてきた.一方,近年はデジタル解析やAIの進展により,P波幅を客観的に評価する理系的アプローチが注目されている.12誘導心電図における最大P波幅(Pmax)は,左房容積や心房伝導時間と相関し,解剖学的のみならず電気的リモデリングを反映する指標である.疫学研究および臨床研究により,Pmax延長は新規心房細動発症や心血管イベント,心血管死亡リスクの増加と関連し,特に140ms以上が実臨床で有用な閾値となる可能性が示されている.P波幅は心房リモデリングを可視化するサロゲートマーカーとして,心血管リスク層別化への応用が期待される.
心房細動(AF)の早期発見とリスク層別化において,心電図のP波解析は極めて重要な役割を担っている.近年,P波幅の延長や二相性変化(advanced interatrial blockなど)といった古典的な指標に加え,人工知能(AI)を用いた深層学習モデルが革新をもたらしている.AIは洞調律時の微細なP波の変化から,AFの既往や将来の新規発症を高精度に予測可能とした.しかし,AIの予測精度と臨床的な意思決定の間には乖離が存在し,AI判断のブラックボックス性や医師の信頼感が課題となっている.さらに,AIによるスクリーニングが実際の患者予後改善に直結するかを検証する実装科学(implementation science)の視点も不可欠である.本原稿では,P波研究の変遷を概観しつつ,AI技術の臨床応用における現状の到達点と,将来に向けた課題・展望について論じる.