抄録
【目的】低心機能あるいは心不全の既往をもつ発作性心房細動(AF)に対するベプリジルならびにアミオダロンの長期予防効果と心血管予後を比較した.【方法】対象は入院を要した心不全の既往があるか,もしくは心臓超音波検査で左室駆出率が50%未満の発作性AF36例(男性21例,女性15例,年齢71±7歳)である.アミオダロン内服群(A群,n=21;50~150mg/日)およびベプリジル内服群(B群,n=15;100~150mg/日)の2群に分け,各群における長期予防効果ならびに心血管予後を後ろ向きに比較した(平均観察期間41±24ヵ月).【結果】(1)患者背景因子の比較については,基礎心疾患の割合はA群が18例(86%),B群が6例(40%)で,B群に比しA群が有意に高率であった(p<0.05).左室駆出率はA群が44±11%,B群が59±14%で,B群に比しA群が有意に低値であった(p<0.05).(2)観察期間1ヵ月,6ヵ月,12ヵ月,18ヵ月,24ヵ月目の各群における非再発率はA群が100%,90%,81%,71%,57%,B群が87%,47%,33%,20%,20%で,観察期間24ヵ月時点でA群がB群に比し有意に高率であった(p<0.05).(3)慢性化阻止率は,A群が16例(76%),B群が6例(40%)で,A群がB群に比し有意に高率であったが(p<0.05),慢性化に至るまでの期間は,A群が11±29ヵ月,B群が26±39ヵ月と,各群間に有意差を認めなかった.(4)観察期間12ヵ月,36ヵ月,60ヵ月ならびに90ヵ月目の各群における心血管死回避率は,A群100%,95%,90%,86%,B群100%,100%,93%,80%であり,各群間に有意差を認めなかった.【結語】低心機能を合併した発作性AFに対する予防効果は,アミオダロンがベプリジルに比し良好な成績であったが,心血管予後はいずれの薬剤も変わらなかった.