日本海洋学会誌
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海面境界過程における局所平衡
I. 風波の発達過程について
鳥羽 良明
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1972 年 28 巻 3 号 p. 109-120

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抄録

単純なスペクトルの風波に対して, 3つの基本的概念の上に, 新しい発達方程式が提出された. 波の代表量としては, ピーク周波数とエネルギーレベルとに対応するものとしての, 無次元形の有義波の周期と波高とを用いている. 3つの基本的概念の1つは, 局所平衡の概念であり, 他の2つは, それぞれ, 風波のエネルギーの獲得, および, 風波のエネルギーの逸散もしくは風波の運動量の流れへの移行に関するものである. この方程式は, 風波のエネルギーの獲得と逸散に関する2つの普遍定数 (それぞれ, B=6.2×10-2とK=2.16×10-5) とともに, 風洞水槽の中の波から, 外洋の十分発達した風波に至る広範囲の風波に普遍的にあてはまるようである.
また, 「単純なスペクトルの風波に関する3/2乗則」, および, その系として, 風波の軌道運動による表面の平均流速は常に風の摩擦速度に比例すること, 重力波の範囲で波形勾配は波令の平方根に逆比例することなど, 一連の関係が導かれた. また, 風の海面応力のうち直接風波に入る部分の割合は, 波令に対してほぼ指数函数的に減少し, 波令の若い波に対しては, 7.5%であることも導かれた.
また, 吹走流の運動量の増加, および, 風波による乱れのエネルギーの上層海洋への供給に関する方程式も示された.

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