抄録
低融点であり化学的耐久性に優れた封着加工用鉛フリーガラスは, 封着材としてセラミックスやエレクトロニクス産業の分野で望まれている. 本研究では最初にV2O5-ZnO-BaO系の鉛フリーガラスの三成分を様々な組成で調製し, 封着加工用鉛フリーガラスとしての要求を満たすガラスの評価を行った. 評価項目としては, 熱量分析におけるガラス転移点, ガラス軟化点, 熱的安定度評価, 熱機械分析における熱膨張特性, 粉末X線におけるガラス構造解析を行い, 三成分系のガラス化範囲の同定を行った. その結果, (20-80 mol%)V2O5-(0-60 mol%)ZnO-(20-60 mol%)BaOの範囲において封着加工用ガラスとして低温軟化性かつ熱的安定性に富むガラスを調製することができた.とくに50.9 mol% V2O5-18.9 mol% ZnO-30.2 mol% BaOの組成からなるガラスは, 低温軟化特性を有しΔT(熱的安定度)が101℃, かつ非晶質ガラスであることがわかった. 次に, この鉛フリーガラスに対してTeO2を適量添加した結果, とくに35.9 mol% V2O5-13.4 mol% ZnO-21.3 mol% BaO-29.4 mol% TeO2の組成から成るガラスは, 極めて優れた熱的安定度(ΔT=135℃)や良好な封着·封止特性が得られた. また, 市販の鉛ガラスと比較して高い耐水性を有しているガラスであることもわかった. 実際にデジタルスチールカメラなどの電子デバイスに組み込まれている平面蛍光管に対して本鉛フリーガラスを用いて封着·封止を行ったところ, 鉛ガラスと同等な封着·封止能を有していた. 本研究で開発した鉛フリーガラスは, 鉛ガラスの代替物として極めて有効なガラスであることを示した.