化学工学論文集
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環境
超硬スクラップ中タンタルとニオブの塩化揮発挙動
野中 利瀬弘船山 齊菅原 勝康
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2009 年 35 巻 4 号 p. 403-410

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抄録

超硬工具等の合金スクラップからのWおよびCoの回収プロセスにおいて生成する浸出残渣(WCR)には,TaやNbなどのレアメタルが高濃度で含有されている.本研究ではこれらレアメタルの高効率な分離回収プロセスの開発に関する基礎研究の一環として,塩素ガス気流中におけるTaやNbならびに共存元素の塩化揮発挙動を詳細に追跡すると共に,揮発挙動に及ぼす炭素の添加効果を調べた.573–1273 Kで塩化処理を行った結果,Taは15–46%,Nbは95%以上を揮発分離でき,NbはTaよりも優先的に気相中へ放出されることがわかった.これに対し,固体炭素共存下で塩化処理することでTaおよびNbの揮発形態はオキシクロライドから塩化物へと変化し,両元素共に873 Kでほぼ完全に揮発した.試料中に含有されるTaおよびNb化合物のモデルとしてクロム酸塩を合成し,炭素共存下における揮発挙動を調べた結果から,273–573 Kの低温域ではCrNbO4由来のNbの塩化揮発反応が優先的に進行し,Crの放出が顕著に観測された573 K以降では,(Ti, Nb, Fe, Ta)O2由来のTaおよびNbの気相への放出が進行することが明らかとなった.次に,TaとNb,共存するレアメタルの分離を目的として,2段階の塩化処理を試みた.第一段階目では,TaとNbの揮発率の差が最大となる1273 Kで1 h塩化処理を行い,Nbの96%とTaの26%を気相中へ分離・回収した.これにより固相中のTa濃度は原試料の12%から32%へと濃縮した.第二段階目では,固体炭素を添加して再び塩化処理することで,固体中に残留するTaを873 Kで全て気相中へ放出させ,冷却区間で100%回収することができた.これら二つの塩化処理工程を経ることで,レアメタルをそれぞれ塩化物として全量回収できることがわかった.

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© 2009 公益社団法人 化学工学会
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