肝臓
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限局性結節性過形成に類似した臨床所見を呈した肝原発神経内分泌癌の1例
堀米 直人金子 源吾疋田 仁志千賀 脩太田 裕志松尾 恭介上原 剛伊藤 信夫
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2002 年 43 巻 6 号 p. 294-298

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抄録

術前検査の特徴的所見から限局性結節性過形成と診断し切除術を施行したが, 病理検査で神経内分泌癌と判明した症例を経験した. 症例は70歳男性, 胃検診で胃外性圧迫を指摘され精査のため来院した. 上腹部に手拳大の腫瘤を触知し, 腹部USで肝左葉を占める巨大な腫瘍が認められ, CT, MRIでは中心性瘢痕, 血管造影で糸玉状血管増生, 車輻状血管像を呈した. 肝炎ウイルスマーカー陰性, 腫瘍マーカーはCA19-9が軽度上昇していた. 限局性結節性過形成と診断し切除術を施行したが, 病理組織検査で神経内分泌癌と判明した. 術後9カ月で残肝再発を来し, 化学療法を施行したが効果なく1年9カ月で死亡した. 背景に肝疾患が存在せず腫瘍マーカーも陰性で腫瘍には血管増生が目立った. 急激な発育によって形成されたと考えられる中心部の血行障害や虚血壊死が“中心性瘢痕”と類似していたため, 限局性結節性過形成と誤認した.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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