杏林医学会雑誌
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特集「癌治療とゲノム医療」
乳がんのゲノム医療
麻賀 創太
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2019 年 50 巻 4 号 p. 179-185

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抄録

 女性が罹患する悪性腫瘍のうち,最も高頻度にみられるのが乳がんである。これはわが国に限らず西欧諸国でも同様であり,乳がんに関して予防,治療,支持療法などあらゆる面で広く研究が行われている。このうちゲノム医療は乳がんの予防と治療の進歩に大きく寄与している。予防面ではゲノム医療によって遺伝性乳がんの存在やメカニズムが明らかとなり,遺伝性乳がん症例に対する一次予防としての予防的乳房切除,二次予防としての適切なサーベイランス法の開発が研究された。一方,治療面では,ゲノム医療技術を用いて乳がんの再発リスクや薬剤感受性が従来よりも正確に評価できるようになり,患者ごとにより適切と考えられる治療選択が可能になり,また,近年では遺伝性乳がんをターゲットにした新規薬剤の開発もなされた。このようにゲノム医療によって乳がん領域の臨床,研究は大きく進歩し,患者に還元されている。本項では,乳がんにおけるゲノム医療の果たす役割と,現在行われている乳がん領域でのゲノム医療の状況について概説する。

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