杏林医学会雑誌
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原著
  • 神山 麻由子, 岡本 博照, 和田 貴子, 照屋 浩司
    2019 年 50 巻 4 号 p. 145-155
    発行日: 2019/12/27
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

     都市部男性消防職員のバーンアウトに影響を及ぼす仕事ストレッサーを検討する目的で,A市消防局男性消防職員953人を解析対象とした多重ロジスティック回帰分析を行った。
     男性消防職員のバーンアウトリスク群は対象集団の18.8%を示し,その中でも日勤職員での割合は28.4%と最も高かった。バーンアウトのリスクとなる仕事ストレッサーは,職場の対人関係上のストレスの高さ(OR=2.67),仕事のコントロールの低さ(OR=2.31),適性の低さ(OR=2.15),技能の活用の低さ(OR=1.73),心理的な仕事の負担(質)の高さ(OR=1.71), 心理的な仕事の負担(量)の高さ(OR=1.64)であった(いずれもp<0.05もしくはp<0.01)。社会的支援では同僚のサポートの低さ(OR=1.74, p<0.05),それ以外では7時間未満の短時間睡眠がバーンアウトのリスク要因であった(OR=1.53, p<0.05)。男性消防職員のバーンアウトのリスクになると考えられる仕事ストレッサーを把握し,その対策を講じることは消防職員のメンタルヘルス向上につながることが期待できる。

  • 須田 健二, 柏木 ともか, 菊田 雅宏, 副島 昭典
    2019 年 50 巻 4 号 p. 157-167
    発行日: 2019/12/27
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

     近年,高血流量の血液透析が一般的になりつつあるが,再循環による透析量(Kt/V)の低下と,抜針事故時の大量失血のリスクが懸念されている。本研究では,電気的インピーダンス値を利用した抜針検知システムと,内シャント血流量計測システムの開発を目的とし,透析用血液回路へ通電を行う電極付アダプタ,発振器,検出器を作製した。次に,模擬内シャントを作製し,一般的な血液透析を再現した状態で抜針検知システムの動作実験と,内シャント血流量計測システムの誤差を測定した。その結果,抜針検知システムは留置針の内径や血流量に依存することなく,抜針時に警報を発生させることが可能であった。また,内シャント血流量計測システムでは,設定値と測定値との流量誤差が模擬血液(牛血)で±20%以内であった。基礎的な検討の結果,本システムは臨床に近い環境でも正常に作動し,有効に機能することを明らかにした。

特集「癌治療とゲノム医療」
  • 井本 滋
    2019 年 50 巻 4 号 p. 169
    発行日: 2019/12/27
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー
  • 大塚 弘毅
    2019 年 50 巻 4 号 p. 171-178
    発行日: 2019/12/27
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

     同じ臓器のがん種でも遺伝子異常は多様性を有することが明らかとなり,がん治療は臓器別から遺伝子異常に応じた治療すなわちがんゲノム医療へと変わりつつある。次世代シーケンスの登場により,がん関連遺伝子異常を網羅的に解析し,患者の治療薬や臨床試験に結び付けることを目的としたがん遺伝子パネル検査が可能になった。これにより個々の患者のがんゲノムプロファイルに応じた最適な治療の実現につながることが期待される。現在わが国では,がん遺伝子パネル検査として,日本で開発されたOncoGuide™NCCオンコパネルシステムと米国Foundation Medicine社で開発されたFoundationOne®︎CDxがんゲノムプロファイルの2つの検査法が承認されている。本稿ではこれらの2つの検査法を中心にがん遺伝子パネル検査とがんゲノム医療について解説する。

  • 麻賀 創太
    2019 年 50 巻 4 号 p. 179-185
    発行日: 2019/12/27
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

     女性が罹患する悪性腫瘍のうち,最も高頻度にみられるのが乳がんである。これはわが国に限らず西欧諸国でも同様であり,乳がんに関して予防,治療,支持療法などあらゆる面で広く研究が行われている。このうちゲノム医療は乳がんの予防と治療の進歩に大きく寄与している。予防面ではゲノム医療によって遺伝性乳がんの存在やメカニズムが明らかとなり,遺伝性乳がん症例に対する一次予防としての予防的乳房切除,二次予防としての適切なサーベイランス法の開発が研究された。一方,治療面では,ゲノム医療技術を用いて乳がんの再発リスクや薬剤感受性が従来よりも正確に評価できるようになり,患者ごとにより適切と考えられる治療選択が可能になり,また,近年では遺伝性乳がんをターゲットにした新規薬剤の開発もなされた。このようにゲノム医療によって乳がん領域の臨床,研究は大きく進歩し,患者に還元されている。本項では,乳がんにおけるゲノム医療の果たす役割と,現在行われている乳がん領域でのゲノム医療の状況について概説する。

  • 野崎 要, 後藤 功一
    2019 年 50 巻 4 号 p. 187-190
    発行日: 2019/12/27
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

     分子標的薬の登場によって進行非小細胞肺癌に対する化学療法は大きく進歩した。遺伝子情報に基づいた個別化治療(Precision Medicine)は非小細胞肺癌の診療においてはすでに浸透しており,今後さらに発展し,他分野のPrecision Medicineを牽引していくことになると思われる。
     本年,NGSを用いた3つの遺伝子パネル検査が承認され,網羅的遺伝子解析が身近なものとなった。治療ターゲットとなる遺伝子変異の検出や分子標的治療後の患者における治療耐性に関わる遺伝子異常の検出が容易になったと言えるが,検出された希少頻度のドライバー遺伝子異常に対する治療開発や目の前の患者に対する治療機会の提供についてはまだまだ課題も残っている。また,今後は,侵襲を伴う組織生検に代わり,血液中の血漿遊離DNAを用いた網羅的遺伝子解析が大きな役割を担うことが予想されるが,どこまで代替可能かは注意深く見守る必要がある。

  • 岡野 尚弘, 長島 文夫, 古瀬 純司
    2019 年 50 巻 4 号 p. 191-197
    発行日: 2019/12/27
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

     がん関連遺伝子パネル検査が保険診療に導入され,消化器癌においても徐々にがんゲノム医療が本格化してきている。大腸癌,胃癌に関しては一次治療,二次治療後の後方治療は標準治療として確立しているが,その治療効果は限定的である。そのため,後方治療中からがん遺伝子パネル検査を考慮しながら,治療を行っていくことが重要である。胃癌は消化器癌の中ではマイクロサテライト不安定性(MSI)-Highの頻度が高いことが報告されており,後方治療でニボルマブが保険承認されているが,早期からMSI検査を行い,MSI-High患者へのペムブロリズマブの投与タイミングを逃さないように治療戦略を組み立てていくことが求められる。胆膵癌は確固たる二次治療は確立されていないため,一次治療中からがん遺伝子パネル検査を検討してもよい。近年,胆膵癌で遺伝子異常に基づく治療薬の有望な治療成績が報告されており,今後の発展が期待されている。頻度は低いが一定の頻度で治療対象となる遺伝子異常を有する消化器癌患者がいるため,患者をどのように同定し最適な時期に最適な治療を届けるかが重要となっている。

  • 小林 陽一
    2019 年 50 巻 4 号 p. 199-202
    発行日: 2019/12/27
    公開日: 2019/12/26
    ジャーナル フリー

     婦人科癌とゲノム医療の関連性については,BRCA,BRCA2遺伝子変異が原因である遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)と,ミスマッチ修復遺伝子(MMR)異常が原因で子宮内膜癌を好発するLynch症候群がよく知られている。HBOCについてはPARP阻害薬であるOlaparibが保険適応となり,卵巣癌治療が大きく変化している。またLynch症候群ではコンパニオン診断においてマイクロサテライト不安定性(MSI)が高い症例について免疫チェックポイント阻害薬であるPembrolizumabが保険適応となり実臨床で応用可能となってきたが,他の領域と比較するとまだまだ使用可能な薬剤が少なく,立ち遅れている感が否めない。近年国際的ながんゲノムアトラスプロジェクト(TCGA)により,卵巣癌,子宮内膜癌,子宮頸癌の遺伝子プロファイルが明らかにされ,ターゲットとなる遺伝子異常の全貌が見えつつある。これらの解析によって,今までの組織型分類とは異なる遺伝子異常に基づいた新たな分類が提唱され,癌腫や組織型を超えた新たな治療戦略が展開されていく可能性が示唆されている。また遺伝子変異と免疫療法は密接に関連しており,婦人科癌においても免疫チェックポイント阻害薬の早期適応拡大に期待したい。

市民公開フォーラム「中高年の排尿トラブルを解消する」
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