杏林医学会雑誌
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特集「癌治療とゲノム医療」
消化器癌のゲノム医療
岡野 尚弘長島 文夫古瀬 純司
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2019 年 50 巻 4 号 p. 191-197

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抄録

 がん関連遺伝子パネル検査が保険診療に導入され,消化器癌においても徐々にがんゲノム医療が本格化してきている。大腸癌,胃癌に関しては一次治療,二次治療後の後方治療は標準治療として確立しているが,その治療効果は限定的である。そのため,後方治療中からがん遺伝子パネル検査を考慮しながら,治療を行っていくことが重要である。胃癌は消化器癌の中ではマイクロサテライト不安定性(MSI)-Highの頻度が高いことが報告されており,後方治療でニボルマブが保険承認されているが,早期からMSI検査を行い,MSI-High患者へのペムブロリズマブの投与タイミングを逃さないように治療戦略を組み立てていくことが求められる。胆膵癌は確固たる二次治療は確立されていないため,一次治療中からがん遺伝子パネル検査を検討してもよい。近年,胆膵癌で遺伝子異常に基づく治療薬の有望な治療成績が報告されており,今後の発展が期待されている。頻度は低いが一定の頻度で治療対象となる遺伝子異常を有する消化器癌患者がいるため,患者をどのように同定し最適な時期に最適な治療を届けるかが重要となっている。

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