杏林医学会雑誌
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症例報告
保存的治療で救命し得た高齢者の劇症型アメーバ性大腸炎の1例
尾﨑 良齋藤 大祐大津 晃康徳永 創太郎箕輪 慎太郎嶋崎 鉄兵三浦 みき櫻庭 彰人林田 真理三好 潤松浦 稔倉井 大輔久松 理一
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2021 年 52 巻 4 号 p. 177-182

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抄録

 症例は77歳男性。水様性下痢を主訴に受診し,感染性腸炎が疑われ抗菌薬投与により加療されるも,経過中に中毒性巨大結腸症を発症した。詳細な問診の結果,発症の数カ月前に風俗店での異性間性交渉歴が確認されたことからアメーバ性大腸炎を疑い,中毒性巨大結腸症を伴うことから劇症型と考えた。メトロニダゾールの投与を開始し症状は速やかに改善が得られた。アメーバ性大腸炎は原虫のEntamoeba histolyticaによる感染症であり,主に下痢や血便,腹痛などの症状を呈する。予後は良好であるが,一部に劇症型が存在し,重篤な経過を辿ることもある。劇症型アメーバ性大腸炎では外科的治療を要することが多いが,本症例では保存的治療が奏功し救命が得られた。劇症型アメーバ性大腸炎の救命のためには早期の診断および治療開始が必要であり,通常の治療が奏功しない感染性腸炎ではアメーバ性大腸炎を鑑別疾患として疑うことが必要である。

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