2011 年 60 巻 2 号 p. 283-286
閉鎖孔ヘルニアは非常に稀な疾患で,発症頻度は全腸管ヘルニアの0.1%である.触診や視診による診断が困難なことから治療開始が遅れ,腸管の壊死や穿孔に続発した感染症による致死率が高い疾患である.腸閉塞などの腹部症状のみならず,嵌頓した腸管によって閉鎖神経が圧迫され,下肢痛や股関節痛をしばしば認め,閉鎖孔ヘルニアに特徴的な所見である.今回我々は,左下肢痛と股関節部痛を主訴に整形外科を受診し,腹部症状のない早期に診断が可能であった症例を経験したので報告する.