日本農芸化学会誌
Online ISSN : 1883-6844
Print ISSN : 0002-1407
ISSN-L : 0002-1407
米麹のプロテアーゼ組成に関する研究(第2報)
酸性プロテアーゼ及びアルカリ性プロテアーゼの基本的性質
布川 弥太郎難波 康之祐衣山 陽三
著者情報
ジャーナル フリー

1962 年 36 巻 11 号 p. 879-883

詳細
抄録

米麹の酸性及びアルカリ性プロテアーゼの一般特性を種々検討し,今までに報告されている他の菌による同じ呼称のプロテアーゼや同じ黄麹菌によるが培養基質を異にするプロテアーゼとの比較を行った.また米麹プロテアーゼの天然蛋白質に対する分解様式についても検討を加えた.
(1) 酸性プロテアーゼの至適pHは試験した範囲の基質に対してはすべて2.5~4.0であり,アルカリ性プロテアーゼのそれは,カゼインに対しては9.0~10.0,ヘモグロビンに対しては4.5と8.5附近,オリゼニンに対しては8.0~11.0であることが知られた.
また両酵素とも60°, 10分で完全に失活し, 45°, 10分の処理では酸性プロテアーゼはpH3.0~5.5の間で,またアルカリ性プロテアーゼはpH4.5~7.0の間で安定であった.
(2) 両プロテアーゼともに程度の差はあるが, HgCl2, SDS, DFPによってそれぞれ阻害され,また酸性プロテアーゼはリバノールによって沈澱することが知られた. potato-inhibitorはアルカリ性プロテアーゼのみを阻害した.
(3) アルカリ性プロテアーゼはカゼインやオリゼニンを分解して大きな切片を生ずるが,小さな分子切片を生ずることはなく,これに反し酸性プロテアーゼは蛋白質分子を小さく分解することが推測された.そして酸性プロテアーゼが作用する場合,その作用pHによって低分子物質の放出率が異なり,低pHでは低分子物質放出率がいくぶん下ってくるように見受けられた.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本農芸化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top