日本農芸化学会誌
Online ISSN : 1883-6844
Print ISSN : 0002-1407
ISSN-L : 0002-1407
温州ミカン果汁中のS-メチルメチオニンスルホニウムの除去
筬島 豊下田 満哉前田 久夫植野 彰三
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 59 巻 5 号 p. 501-508

詳細
抄録

温州ミカン果汁製品の加工・貯蔵・流通過程における品質劣化の主体をなすジメチルスルフィド(DMS)の発生防止を目的として,その前駆体であるS-メチルメチオニンスルホニウム(MMS)の除去を試みた.処理果汁の残存MMS量は,イモ臭の発生が実際上問題とならないカンキツ果実中の含量(バレンシア:6μM~ポンカン:10μM)を基準とした.
(1) 果汁中のMMSを除去するためには,ゲルタイプの強酸性陽イオン交換樹脂,アンバーライトIR-120Bが最適であった.
(2) カラム法により果汁を処理した場合,果汁中のMMS (16.1μM)を10μMまで除去するのに必要な樹脂の量は処理果汁量の0.83%であった.
(3) 果汁中のMMSを16.1μMから10μM (B果汁)まで減少させたとき,アミノ態窒素は22.7mg%から20.5mg%まで,酸度は0.73% (pH 3.48)から0.72% (pH 3.55)まで減少した,一方,灰分は0.29%から0.32%まで増加した.屈折計糖度,アスコルビン酸含量,色調にはまったく変化がなく,異臭も皆無であった.
(4) 樹脂からのMMSの回収は2M水酸化カリウムによって定量的になされ,同時に樹脂の再生も完全に行われた.
(5) 官能検査の結果, 37%deg;C, 10日間の貯蔵によって, B果汁と未処理果汁の間に有意差が認められ,以後その差は急激に拡大した.
(6) B果汁の棚寿命は未処理果汁に比べて約2倍に延長されると考えられる.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本農芸化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top