日大医学雑誌
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特集 「睡眠障害をめぐって」
ORAL APPLIANCE (口腔内装置)
吉田 美昭
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2010 年 69 巻 1 号 p. 33-37

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抄録
近年睡眠医学の学際的な研究が進み,睡眠時の呼吸障害のもたらす多くの健康障害が明らかになってきた.睡眠呼吸障害 (SDB) の中で閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA) の治療は科学的に評価され,ガイドラインも示されている.その治療法の一つとして Oral Appliance (口腔内装置:OA) 療法は睡眠時に OA 装着することで咽頭部の上気道閉塞を改善することが認められている.但しその適応は軽度から中等度の閉塞性呼吸障害すなわち AHI (Apnea-Hypopnea Index) 20 以下の症例である.OA は医師による閉塞性睡眠呼吸障害の診断の下に医師からの依頼により歯科医が作製し,定期的な歯科管理を必要とされる.OA には下顎前方整位型 (MRA) と舌整位型 (TRD) があるが,MRA が世界的にも広く普及しており,睡眠時の気道閉塞の改善に有効とされている.MRA は顎関節症 (TMD) の治療に用いられる咬合床副子 (Occlusal Splint) を応用して作製されている.MRA は歯に固定源を求めて下顎を前方に引き出すことにより舌根部の沈下を改善して上気道の拡大を図ることができる.OA 療法は非侵襲性で OA 使用継続のコンプライアンスも良く,携帯可能でありさらに保険適応であるのでこの治療法の普及が今後も期待される.潜在的な閉塞性無呼吸症の患者は我が国でも数百万人いるとされており,睡眠呼吸障害に起因する種々の健康障害の治療もしくは予防において歯科医が一翼を担うことになるがそこには医科と歯科の連携が必須である.
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© 2010 日本大学医学会
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