日本歯周病学会会誌
Online ISSN : 1880-408X
Print ISSN : 0385-0110
ISSN-L : 0385-0110
Er: YAGレーザーの歯周病原性細菌に対する殺菌効果
安藤 嘉則青木 章鈴木 久美梅田 誠渡辺 久石川 烈
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 35 巻 2 号 p. 374-381

詳細
抄録

近年, 歯科領域においてEr: YAGレーザーの応用が研究されてきている。Er: YAGレーザーはCO2レーザーやNd: YAGレーザーに比べて照射野周囲の硬組織や軟組織に対して損傷が少ないレーザーである。われわれのこれまでのin vitroの実験により, 本レーザーは注水下で用いた場合, エネルギー密度7 . 1~10. 6J/cm2で縁下歯石の除去が効果的に行えることが明らかになった。本実験の目的は, スケーリングに適したエネルギー密度でレーザー照射した場合の歯周病原性細菌に対する殺菌効果を検討することであった。あらかじめTrypticase-Soy血液寒天 (TS) 培地とBrain Heart Infusion (BHI) 培地に播種されたPorphyromonas gingivalisActinobacillus actinomycetemcomitansに対しエネルギー密度0. 04~2. 6J/cm2で1 pulseのレーザーを照射し, 嫌気培養後の細菌コロニーの発育状態を観察した。また, エネルギー密度1. 8, 3. 5, 7. 1, 10. 6J/cm2P. gingivalisの1コロニーに対して1 pulseのレーザーを照射し, 照射されたコロニーを釣菌, 嫌気培養後, コロニー数を計数した。今回の実験の結果, P. gingivalisA. actinomycetemcomitansの発育は, エネルギー密度0.3J/ cm2以上で明らかに抑制されていた。P. gingivalisの1コロニーにレーザー照射した場合, コロニー形成数はコントロールに比べて, エネルギー密度7.1, 10.6J/cm2のとき有意に減少していた。これらの結果より, Er: YAGレーザーはレーザースケーリングに適したエネルギー密度で用いた場合, 歯周病原性細菌に対して殺菌効果を持つことが示唆された。

著者関連情報
© 特定非営利活動法人日本歯周病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top