肥満は,2型糖尿病や冠動脈疾患など,多くの健康障害と関連している。肥満の脂肪組織内ではマクロファージ等の免疫細胞が浸潤し,慢性的な炎症状態が引き起こされている。この持続的な炎症がインスリン抵抗性や動脈硬化などの病態の基盤になりうる。我々は脂肪細胞とマクロファージを共培養し脂肪組織の慢性炎症に関与する因子を網羅的に解析し,その中で脂肪細胞での発現が顕著に亢進したケモカインの一つ,CCL19に着目した。脂肪細胞特異的にCCL19を過剰発現させたCcl19ノックインマウスを作製し検証した結果,脂肪組織におけるCCL19シグナルの活性化が脂肪組織の炎症を増幅し,脂質代謝,エネルギー制御機能の減弱化を引き起こし耐糖能低下に関与することが明らかになった。通常食,40%高脂肪食,60%高脂肪食の3つの群のうち,野生型マウスとの比較における差は,40%高脂肪食群で最も顕著にみられた。これらの結果から,軽度の肥満の場合には局所の炎症が全身に及ぼす影響が増大することが示唆された。日本人に多い軽度肥満では,脂肪組織におけるマクロファージ等の免疫細胞と脂肪細胞の相互作用による炎症性シグナル経路の活性化を介して歯周炎症が全身レベルに増幅する可能性が考えられる。
歯周基本治療の原則は,プラークコントロールと咬合支持の確立である。しかし,リグロスⓇを含めた歯周組織再生療法を対象として,術前の咬合支持域によって,アタッチメントゲインや骨再生量にどの程度の影響を与えるのかは不明である。
本研究の目的は,術前の咬合支持域数による歯周組織再生療法の治癒への影響について,骨充填率をアウトカムとして統計的に解析することである。
2017年2月~2024年6月まで,日本大学松戸歯学部付属病院で実施された歯周組織再生療法の臼歯部症例を対象とした。除外基準に従って対象者を決定し,対象部位以外の咬合支持域数によって2つのグループに分けた。臨床パラメータの治療効果は術前,術後12か月で評価した。主要評価項目は術後12か月のエックス線画像上の骨充填率に設定した。咬合支持域数とエックス線画像による骨充填率の関係を統計学的に分析した。各グループにおいて,術後12か月のプロービング深さ(probing depth,PD),臨床アタッチメントレベル(clinical attachment level,CAL),プロービング時の出血(bleeding on probing,BOP)および骨充填率は改善したが,グループ間での骨充填率に有意差は認めなかった。PD減少量,CAL獲得,BOP改善,動揺度およびプラーク付着の改善,骨充填率は術前の咬合支持域数と関連していなかった。
本研究は,臼歯部の歯周組織再生療法において,治療効果が咬合支持域に大きく影響を受けない可能性を示唆していた。この見解は,咬合関連以外の術前因子の方が,よりコントロールする必要がある可能性を示唆していた。