日本歯周病学会会誌
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エナメルタンパク再生療法のゆくえ
吉江 弘正
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2001 年 43 巻 2 号 p. 99-106

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抄録

エナメルタンパク (商品名エムドゲイン) を使用したフラップ手術が実施され約6年が経過して, 現在までに多くの臨床研究, 臨床症例, 基礎研究が報告されているので, 現時点での成果をここに要約する。
エナメルタンパク療法の臨床的評価では, 1) エナメルタンパクによる直接的副作用報告はない。2) ポケット減少量は平均4.2mm (1.9~5.7mm), 付着ゲイン量は平均3.1mm (1.7~4.6mm), 垂直的骨添加量は平均1.6mmである。 3) 通常のフラップ手術より, 有意に歯周組織再生が得られたが, GTR法ほどの効果は期待できない。
エナメルタンパク療法の組織学的評価では, 1) 線維埋入性の無細胞セメント質形成が得られる。 2) 歯槽骨, 歯根膜の再生は, GTR法とほぼ同程度である。 3) 長い上皮付着形成の抑制が認められる。
エナメルタンパクの細胞学的評価では, 1) 歯肉線維芽細胞, 歯根膜細胞の付着・遊走促進, 分裂能の促進, アルカリフォスファターゼ活性上昇, TGF-β 産生増加が認められている。 2) 骨芽細胞のアルカリフォスファターゼ活性上昇が顕著である。 3) 上皮細胞ではG1期静止による分裂抑制が示されている。
エムドゲインを含めた生物製剤では, 細菌, ウイルス, 病原タンパク, 抗原性, 発癌・催奇性を最大限排除しなければならない。 つねに, その時点の科学水準に照らして, 自主点検ならびに他者評価をしていくことが重要である。

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