日本臨床外科学会雑誌
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鼠径・陰嚢部膿瘍をきたした鼠径ヘルニア虫垂・盲腸嵌頓の1例
榊原 年宏森田 誠市小山 眞塚田 一博
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2001 年 62 巻 4 号 p. 1068-1071

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抄録
右鼠径ヘルニアに虫垂.盲腸が嵌頓し鼠径・陰嚢部膿瘍をきたした1例を経験した.
症例は72歳男性.右鼠径部から陰嚢にかけての発赤を伴う腫脹,陰嚢の皮膚壊死を主訴に来院した.全身状態は良好でイレウス症状・所見もなかった.嵌頓鼠径ヘルニアの診断で開腹すると,虫垂と盲腸の一部が鼠径窩に強固に嵌頓していた.膿が腹腔内に流入しないように鼠径部・陰嚢を切開して十分に排膿後,嵌頓した虫垂・盲腸を腹腔内へ引き戻すと周囲の高度炎症,盲腸の穿孔を認めたため,回盲部切除を行った.ヘルニアに対しては腹腔内よりメッシュによる修復術を行った.術後病理学的検討では盲腸憩室穿孔による膿瘍形成が示唆された.
鼠径ヘルニアに虫垂が嵌頓することは稀で,盲腸嵌頓の本邦報告例はなかった.膿瘍合併例の手術では,膿の腹腔内流入を避けるため鼠径部・腹腔内両側からのアプローチが必要と思われた.
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