日本臨床外科学会雑誌
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穿孔をきたした空腸巨大憩室の1例
江口 武彦加藤 剛本田 一郎
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キーワード: 空腸憩室, 穿孔性腹膜炎
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2004 年 65 巻 7 号 p. 1850-1854

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抄録

症例は22歳,男性.下腹部痛にて受診し急性虫垂炎として緊急手術を施行,術後に腹部ドレーンより腸液が流出し再手術となった.腹腔内の検索にてTreitz靱帯から約170cm肛門側の空腸に嚢状巨大憩室を認め,病理組織検査で空腸真性憩室と診断された.小腸憩室は稀な憩室であり50歳代の男性に多い.空腸憩室はこの中で多数を占め,近位側で腸間膜付着側に発生する仮性憩室が多く単発性で比較的大きい.無症状で経過する場合が多いが約10%が合併症を発生する.術前診断は困難であり診断・治療の遅れから重篤となることがある.本症例は遠位側の腸間膜反対側で単発性巨大憩室という比較的珍しい憩室であった.経過から,憩室の軸捻転による血行障害に伴う憩室炎を虫垂炎と誤診し虫垂切除施行後憩室穿孔をきたしたと考えられる.急性腹症では虫垂炎と診断しても肉眼的に虫垂の炎症が軽度の場合には,小腸憩室の存在を念頭に入れ精査を行うことが重要と考えられた.

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