日本臨床外科学会雑誌
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大腸癌を伴ったStreptococcus bovis IIによる感染性心内膜炎の1例
伊東 博史美甘 章仁榎 忠彦野島 真治濱野 公一
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キーワード: 感染性心内膜炎, 大腸癌
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2006 年 67 巻 5 号 p. 976-980

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抄録

症例は62歳,女性.労作時の呼吸困難で近医を受診し,急性心不全を伴う感染性心内膜炎と診断された.心臓エコー検査で僧帽弁にvegitationの付着と高度の僧帽弁逆流を認め,血液培養検査でStreptococcus bovis (S. bovis) IIが検出された.同菌による感染性心内膜炎と診断し,緊急手術を行った.僧帽弁には両尖にわたる粟粒状のvegitationの付着と検索の断裂を認めたため,僧帽弁置換術が行われた.感染性心内膜炎の起因菌がS. bovisであることより消化管の精査を行ったところ,上行結腸に2型の癌が認められた.僧帽弁置換術後1カ月後に結腸右半切除術, D2郭清を行った.術後経過は良好で,僧帽弁置換術後2カ月後に軽快退院した. S. bovisによる感染性心内膜炎患者では消化管の腫瘍を合併していることがあるが,多くはS. bovis Iと言われている.本症例では起因菌が比較的稀なS. bovis IIであり,上行結腸癌が感染性心内膜炎の原因であると考えられた.

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