1995 年 36 巻 4 号 p. 334-338
症例は79歳男性。冬期の褐色尿とレイノー現象を主訴に当科入院。入院時貧血(Hb 9.2 g/dl)を呈し,間接ビリルビン1.2 mg/dl, ハプトグロビン10 mg/dl以下,ヘモグロビン尿を認めたことなどから血管内溶血を伴う溶血性貧血が疑われた。寒冷凝集素価は256倍と低力価であったが,寒冷凝集素の作用温度域を検討し低力価寒冷凝集素症と診断した。本症例に認められた冷式抗体はモノクローナルなIgM·κ型の抗HI抗体であった。寒冷凝集素症では通常寒冷凝集素は抗I抗体であり,抗体価も数千倍以上の高値を呈すると言われている。本症例で認められた寒冷凝集素は低力価であり,しかも抗HI抗体であったことが興味深い所見と思われた。