臨床血液
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総説
  • 長谷川 大輔
    2021 年 62 巻 4 号 p. 229-238
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル 認証あり

    骨髄異形成症候群(MDS)は造血幹細胞の異常によって血液細胞の分化が障害され,血球減少と細胞の形態学的異常(異形成)を呈する疾患群の総称である。成人では加齢に伴って造血細胞内に生じる遺伝子異常が発症に関わるとされるが,小児では先天性素因の関与について注目が集まっている。異形成はMDSを特徴づける所見であるが,MDS以外の造血器疾患のみならず感染症や先天性免疫不全などでも認められるため,「異形成=MDS」と短絡的に考えずに鑑別診断を行うことが重要である。骨髄生検は必須で,芽球増加を伴わないMDSは再生不良性貧血との鑑別が,芽球増加を伴うMDSは急性骨髄性白血病との鑑別がそれぞれ重要である。小児MDSの治療方針は芽球の多寡によって異なる。芽球増加を伴わないMDSは血球減少の程度,染色体異常の種類などを勘案して方針を決定し,芽球増加を伴うMDSは造血細胞移植の適応となる。

臨床研究
  • 安達 弘人, 関谷 紀貴, 神原 康弘, 熱田 雄也, 大塚 友貴, 小沼 亮介, 須崎 賢, 和田 敦司, 岸田 侑也, 内堀 雄介, 迎 ...
    2021 年 62 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル 認証あり

    同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)後の結核発症率は一般集団と比較して10~40倍高く,0.1~5.5%と報告されている。しかし,本邦のallo-HSCT後の患者における特徴は明らかでない。2002~2018年の間に,当院でallo-HSCTが施行された症例のうち,allo-HSCT後に診断された培養陽性結核の発症率・臨床的特徴を後方視的に検討した。1,047例のうち,5例(0.4%,人口10万人対発症率472)が肺結核を発症し,発症時期はallo-HSCT後中央値1,730(586~2,526)日であった。発症時に3例で慢性移植片対宿主病(cGVHD)を認めており,tacrolimus又はステロイドでコントロール良好であった。5例中3例が結核の治療を完遂しており,治療完遂症例では再燃を認めていない。Allo-HSCT後の結核発症率は一般集団(0.01%,人口10万人対発症率12.3)と比較して高く,晩期合併症として考慮する必要がある。

症例報告
  • 後藤 実世, 福島 庸晃, 飯田 しおり, 伊藤 真, 河村 優磨, 鵜飼 俊, 佐合 健, 福山 隆一, 河野 彰夫, 尾関 和貴
    2021 年 62 巻 4 号 p. 245-250
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル 認証あり

    二重微小染色体を有する急性骨髄性白血病(AML)は稀で,化学療法抵抗性および長期予後不良が報告されている。68歳男性。血液検査にて白血球増多,血小板減少を指摘され,当科を紹介受診した。骨髄検査にてペルオキシダーゼ染色陽性の芽球を79.5%に認め,AML(French-American-British分類:M2,World Health Organization分類:AML,not otherwise specified,AML with maturation)と診断した。翌日よりdaunorubicinとcytarabineによる標準的寛解導入療法を開始したところ,速やかに腫瘍量の低下を認めた。診断時の染色体検査にて45, X, −Y, 5~33 dmin[20]の結果を得,二重微小染色体を有することが明らかになった。FISH法ではMYCシグナルの増幅を認め,SKY法では二重微小染色体は8番染色体由来であることを確認した。以上の所見から化学療法への抵抗性が示唆されたが,血球回復後の骨髄検査にて腫瘍量の低下およびMYCシグナルの増幅低下を認め,完全寛解を達成した。二重微小染色体を有するAMLで,初回寛解導入療法後に完全寛解を達成した症例は稀である。

  • 長松 顕太郎, 高野 久仁子, 坂田 真規, 柳井 優花, 片山 映樹, 本田 周平, 吉田 奈津美, 河野 利恵, 今村 朋之, 緒方 正 ...
    2021 年 62 巻 4 号 p. 251-256
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル 認証あり

    65歳女性。高リスク骨髄異形成症候群に対して,HLA-DRB1アリル1座不一致のドナーから非血縁者間骨髄移植を行った。移植後day 237にアデノウイルス(adenovirus, ADV)出血性膀胱炎の発症と同時に,急性消化管GVHD(graft-versus-host disease)が再燃した。methylprednisolone(mPSL)2 mg/kgに増量,mesenchymal stem cellを投与し,GVHDは改善した。ステロイドを漸減中に高熱が持続し,肉眼的血尿の増悪がみられ,汎血球減少の進行,LDH,ferritin,肝胆道系酵素の上昇,骨髄検査では血球貪食症候群の発症が示唆された。Day 278の血漿ADV-DNA量が6.3×106 copies/mlに増加,髄液ADV-DNA量増加しており,播種性ADV感染症と診断した。Cidofovir 1 mg/kgをday 288から週3回,計8回投与した。また血球貪食症候群に対し,mPSL 2 mg/kgに再増量した。症状は改善し,day 369に血漿ADV-DNA量の陰性化がみられた。Cidofovirは重症ADV感染症に対して,有用であると考えられる。

  • 森山 瑞葵, 西川 拓朗, 中村 達郎, 棈松 貴成, 中川 俊輔, 児玉 祐一, 岡本 康裕, 岩元 二郎, 河野 嘉文
    2021 年 62 巻 4 号 p. 257-261
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル 認証あり

    症例は,乳児期より慢性的に血小板減少を認める13歳男子。慢性血小板減少症の家族歴を有すること,小型血小板,免疫グロブリン治療に不応などより,X連鎖性血小板減少症(X-linked thrombocytopenia, XLT)を疑い,Wiskott-Aldrich syndrome蛋白(WASP)発現解析を行ったところ,発現低下を認めた。WASP遺伝子解析では,WASP-interacting protein領域のエクソン3部位のミスセンス変異[c.296A>G (p.Gln99Arg)]を認め,XLTと診断した。運動制限解除のためeltrombopagの内服を12.5 µg/日で12歳時から開始した。25 µg/日まで増量したところ血小板数は5万/µl前後まで上昇し,運動制限解除後も出血症状は出現しにくくなった。Eltrombopag治療後の透過型電子顕微鏡検査では血小板微細構造,凝集能検査の異常を認めていた。XLT症例に対するeltrombopag治療は,血小板数増加,出血症状の改善を期待できる。

  • 及川 輝久, 青田 泰雄, 小川 雅史, 森山 充, 岡部 雅弘, 赤羽 大悟, 五関 善成, 後藤 明彦
    2021 年 62 巻 4 号 p. 262-266
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル 認証あり

    症例は71歳女性。顔面浮腫と呼吸困難を主訴に近医を受診し,胸部レントゲンで縦隔腫瘤陰影と右胸水を指摘された。前医でのCTガイド下生検でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断され化学療法施行目的で当院に入院した。入院時心電図で約4秒間の洞停止,ホルター心電図で最長約7.4秒の洞停止が計6回観察され,洞不全症候群(sick sinus syndrome, SSS)の合併を認めた。縦隔腫瘤が上大静脈を完全に圧排しており,また感染のリスクも考慮し体外式ペースメーカーは挿入せず,洞停止の原因として腫瘍の影響を考え,化学療法の開始を優先した。Vincristineとprednisolone先行R-CHOP療法を開始したところ,初回治療後に洞停止は観察されなくなった。SSSの原因として腫瘍による頸動脈圧受容体圧排が関与した頸動脈過敏症候群や微細腫瘍浸潤により迷走神経を直接刺激されたことによる可能性が考えられた。

短報
  • 砥谷 和人, 江田 雅志, 朝霧 正, 小島 研介
    2021 年 62 巻 4 号 p. 267-269
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル 認証あり

    We report the case of a patient with lead poisoning caused by a dietary supplement. A 40-year-old man was referred to us due to intermittent upper abdominal pain and normocytic anemia. His hemoglobin level was 9.3 g/dl, with basophilic stippling in 2.8% of red blood cells. Bone marrow aspirate smear showed ringed sideroblasts that represented 19% of the erythroblasts. The patient reported the use of an unauthorized, Indian-manufactured dietary supplement and was diagnosed with lead poisoning based on a significantly high blood lead level. The dietary supplement was discontinued, and he was successfully treated with lead chelation therapy, and his hemoglobin level normalized within 2 months.

第81回日本血液学会学術集会
学会奨励賞受賞論文
  • 水牧 裕希
    2021 年 62 巻 4 号 p. 270-277
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル 認証あり

    一部の再生不良性貧血(AA)患者には,特定のHLAクラスIアレルを欠失した白血球(HLA-LLs)が検出される。今回我々は,HLA-LLsを有するAA患者を対象として,HLAクラスI遺伝子のdeep sequencingを施行し,HLAクラスIアレルのexon1に,異なるHLA間で共通するナンセンス変異(Exon1変異)が高頻度にみられることを見出した。さらに,新たにExon1変異を検出するため確立したdroplet digital PCRの測定系を用いてAA患者353例を解析したところ101例(29%)にこの変異が検出され,さらにExon1変異を有するHLAクラスIアレルは12種類(4種類のHLA supertype)に限られていることが明らかになった。この所見から,AAの発症に関わる自己抗原は,特定のHLAクラスIアレルによって提示される限られたペプチドであることが示唆された。

第82回日本血液学会学術集会
JSH-ASH Joint Symposium (Symposium 8)
  • 牧島 秀樹
    2021 年 62 巻 4 号 p. 278-288
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル 認証あり

    近年のシーケンス技術の進歩に伴い,骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes, MDS)とその関連疾患である骨髄異形成骨髄増殖性疾患(myelodysplastic/myeloproliferative neoplasms, MDS/MPN)において,およそ1%以上の頻度を呈する60余りのドライバー遺伝子が明らかにされている。多彩な病型を呈するこれらの疾患群においてゲノム異常が発症および二次性白血病(secondary acute myeloid leukemia, sAML)への病期進展にどう関わるかに関して,多くの成果が報告されている。1症例あたり平均4個余りのドライバー変異が認められ,変異によりその獲得タイミングは異なる。DDX41SAMD9/SAMD9Lの胚細胞変異は,発症のはるか以前の出生時に既に存在し疾患発症リスクを高める。DNMT3A/TET2/ASXL1の変異は非血液疾患の高齢者の血液中の体細胞変異をもつクローン性造血に認められ,血液疾患発症の危険因子となる。また,発症後はNRASFLT3PTPN11WT1IDH1IDH2NPM1の変異がsAMLへの進展と有意に関連する。このように,MDS,MDS/MPNの発症・進行は,ドライバー変異の合併と獲得の多彩なパターンと深く関連する。

  • —我が国のレジストリデータから—
    石山 謙
    2021 年 62 巻 4 号 p. 289-298
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル 認証あり

    骨髄異形成症候群(MDS)の根治療法は同種造血幹細胞移植のみである。しかし移植実施の可否は様々な要因から成るため,国単位での比較により治療成績が異なる可能性が考えられる。米国と日本のレジストリデータを比較したところ,血縁者間HLA半合致移植の増加傾向は両国で共通していたが,自家移植と同種移植の比率が異なることや,日本で増加している臍帯血移植が米国では減少傾向にある等の相違が認められた。また,日本造血細胞移植学会の成人MDSワーキンググループが行った解析では,我が国の高齢者や染色体中間リスク群,臍帯血移植の成績はいずれも欧米のデータよりもやや優っていた。移植成績の差は患者背景の違いから生じている可能性があるため,「治療に関するエビデンス」は自国で検証することが望ましいと考える。MDSのような希少疾患であっても,大規模レジストリデータの活用によりクリニカルクエスチョンの回答を得ることができる。

Symposium 10
  • 河野 和
    2021 年 62 巻 4 号 p. 299-304
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル 認証あり

    制御性T細胞(Treg)は転写因子FOXP3の発現が特徴的であるエフェクターT細胞や抗原提示細胞の機能を抑制するCD4+T細胞である。近年,多発性骨髄腫患者において骨髄中のTregが骨髄腫の病勢に関与していることを示唆する報告がなされている。しかしながら,骨髄腫の病勢におけるTregの関与については不明な点が多い。今回,我々のVk*MYC移植モデルを用いた骨髄中のTreg解析研究を通じて,骨髄腫の病態におけるTregの役割を解説する。骨髄中のTregはマウス骨髄腫の早期の段階から増加し,Treg除去マウスでは有意に骨髄腫の進展抑制を認めた。骨髄腫関連TregはI型インターフェロン(IFN)経路が活性化しており,I型IFN受容体抗体やI型IFN受容体ノックアウトマウスのTregを用いた実験系よりI型IFNは骨髄腫関連Tregの増殖・活性化に重要であることが明らかとなった。

  • 池田 翔
    2021 年 62 巻 4 号 p. 305-313
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル 認証あり

    骨髄微小環境は低酸素であり,低酸素応答により骨髄腫細胞は幹細胞性や治療抵抗性を獲得していると考えられている。筆者らは,骨髄腫患者検体および細胞株を低酸素培養し,網羅的遺伝子・microRNA発現解析を行った。低酸素環境で重要な働きを示す因子としてヒストン脱メチル化酵素KDM3A,解糖系酵素HK2,そしてmicroRNA-210を同定した。これらは低酸素誘導因子HIFに制御される。一方,分化の維持や増殖に必要なIRF4やMYCの発現は低酸素環境では抑制される。この事実は,骨髄腫細胞の薬剤耐性・抗アポトーシス能を惹起する制御因子は環境の酸素分圧によって常に変化していることを示唆している。ゆえに,dominant cloneと,低酸素微小環境に適応したdormant cloneを異なる薬剤で同時に治療する相補的治療戦略が,多発性骨髄腫の治癒を目指すうえで重要と考えられる。

  • 三村 尚也
    2021 年 62 巻 4 号 p. 314-320
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル 認証あり

    多発性骨髄腫の治癒に向けて我々は,骨髄腫細胞のエピジェネティック修飾異常を標的とした新規治療薬の開発を行ってきた。H3K27me3転移酵素であるEZH2/EZH1共阻害剤の単剤あるいはプロテアソーム阻害剤との相乗的な抗骨髄腫効果を明らかにし,また選択的Akt阻害剤との併用効果のメカニズムを解析した。BMI1ダウンレギュレーターとして開発されたPTC596はプロテアソーム阻害剤と協調的にBMI1蛋白を減少させるが,その本質的な薬理作用は微小管の重合阻害作用であることが分かった。そして我々は,H3K27脱メチル化酵素Utx欠損とBraf V600E活性型変異の両方の体細胞変異を成熟B細胞にのみ誘導したコンパウンドマウスを作製したところ,一定数のマウスで形質細胞腫瘍を発症した。エピジェネティックな骨髄腫発症の機序解明と新たな治療法開発を続けていきたい。

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