臨床血液
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Picture in Clinical Hematology
臨床研究
  • 萩原 政夫, 杉 富行, 内田 智之, 大原 慎, 今井 唯, 井上 盛浩, 三田村 敬子
    2022 年 63 巻 4 号 p. 247-253
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル 認証あり

    当院に通院中の血液疾患症例125名につき,BNT162b2ワクチン2回接種2~6週間後の血清を採取し,SARS-CoV2 anti-spike IgGを測定した。悪性リンパ腫症例は抗体陽性率,抗体価共に対照例との比較で低値であった。特にrituximab(R)含む治療例はR含まない化学療法およびR終了9ヶ月以降を含む経過観察例との比較で有意に抗体価が低値であった。多発性骨髄腫症例は71%と陽性率は高いものの,抗体価に関しては有意に低値であった。特にdaratumumab投与例は経過観察例と比べ有意に低い抗体価を示した。急性骨髄性白血病/骨髄異形成症候症例も抗体価は有意に低値であった。全疾患をまとめた解析では,末梢血リンパ球数と抗体価間は相関し,リンパ球数は抗体陽性症例において陰性例と比較し有意に高値であった。血液疾患では,高度の液性免疫低下状態によってワクチン効果が乏しいことを念頭に診療を進める必要性が高い。

症例報告
  • 山野 裕介, 牧山 純也, 荒木 政人, 古本 嵩文, 鳥山 愛生, 新野 大介, 森内 幸美
    2022 年 63 巻 4 号 p. 254-259
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル 認証あり

    自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の約半数程度が基礎疾患に由来する続発性で,腫瘍随伴症候群によるものが多い。近年,高齢化やがん患者の長期生存率が上昇しており,異時性重複がんの発症が増加している。症例は78歳,女性。2017年5月にS状結腸がん,同年10月に温式AIHAと診断された。温式AIHAに対してprednisolone(PSL)が投与され,貧血症状は軽快した。2020年1月に温式AIHAの再燃が認められ,PSLが再開された。同年5月に小腸穿孔による穿孔性腹膜炎を発症した。腹腔鏡下小腸切除術が行われ,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断された。悪性腫瘍の既往があり,AIHA診断から長期間が経過した場合でも,AIHAの再燃がみられた場合には異時性重複がんの可能性も考え,悪性腫瘍の検索を進めていくことが重要である。

  • 木村 萌, 西山 優, 上田 浩樹, 北條 亜樹子, 有松 朋之, 久保木 麻衣, 髙畑 篤, 斎藤 真貴子, 坂下 千瑞子, 岡田 啓五, ...
    2022 年 63 巻 4 号 p. 260-264
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル 認証あり

    発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は溶血,血栓症,骨髄不全を特徴とし,感染症,妊娠,手術などが重篤な溶血発作や血栓症の誘因になる。そのためPNH患者の周術期管理では術前日に抗C5抗体製剤eculizumabを投与することが推奨されている。Ravulizumabは我が国で新規に承認された長時間作用型抗C5抗体製剤であるが,周術期管理での使用法については知られていない。我々はPNHに対してravulizumab投与下で安全に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し得た症例を経験した。症例は43歳,女性。術前日にravulizumabを投与し,静脈麻酔,術中の下肢間欠的空気圧迫,低気腹圧により管理した。また,術後早期のheparin開始と離床により合併症なく経過した。Eculizumabと同様にPNH患者の周術期管理にはravulizumabによる補体活性化抑制が有用であると考えられるが,外科医・麻酔医と密に連携し,臨床症状,溶血所見,血清補体価,D-dimer値等に基づく慎重な管理が不可欠である。

  • 岸 洋佑, 青田 泰雄, 堀江 義政, 須藤 ありさ, 森山 充, 岡部 雅弘, 井口 豊崇, 横内 幸, 後藤 明彦, 前谷 容
    2022 年 63 巻 4 号 p. 265-270
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル 認証あり

    症例は73歳女性,本態性血小板血症(ET)で外来通院加療中であった。突然の胸痛と吐血のため緊急入院。胸部CT撮影と上部消化管内視鏡検査により,頸部食道から食道胃粘膜接合部までの特発性粘膜下血腫と診断した。特発性食道粘膜下血腫は,出血傾向を有する基礎疾患の存在が報告されている。この症例はIPSET-thrombosis high riskのETでaspirinを服用していた。Aspirin中止と保存的な治療で特発性食道粘膜下血腫は順調に改善したが,入院9日目に病棟で心肺停止により死亡した。病理解剖の結果,死因は肺血栓塞栓症と判明した。本例は,特発性食道粘膜下血腫を合併した骨髄増殖性腫瘍(MPN)の本邦における初めての報告例と考えられた。ET自体とaspirinによる治療はいずれも出血の危険因子と考えられるため,ET患者が強い胸痛を訴える場合は食道粘膜下血腫の可能性も考慮する必要がある。さらに,MPN患者が出血リスクのために抗血栓療法を中断しなければならない場合は血栓症の合併に細心の注意を払う必要があると考えられる。

  • 森重 聡, 山崎 嘉孝, 大屋 周期, 中村 剛之, 山口 真紀, 青山 一利, 毛利 文彦, 水島 靖子, 中島 収, 長藤 宏司
    2022 年 63 巻 4 号 p. 271-276
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル 認証あり

    再発成人急性リンパ芽急性白血病3症例に対してinotuzumab ozogamicin(InO)を投与し,同種造血幹細胞移植(allogeneic hematopoietic stem cell transplantation, allo-SCT)を実施した。1例において最重症肝類洞閉塞症候群(sinusoidal obstruction syndrome, SOS)を発症したが,defibrotide治療により救命し得た。InO最終投与から移植日の期間は,SOS発症症例で63日,発症しなかった2例は133日と86日で,それ以外のSOSのリスクファクターは同等であった。Gemtuzumab ozogamicin(GO)と異なり,InOでは,投与日から移植までの期間がSOSのリスクとは報告されていないが,可能であれば,その期間は長めであることが好ましいことが,本症例から示唆される。

第82回日本血液学会学術集会
学会奨励賞受賞論文
  • 酒井 和哉
    2022 年 63 巻 4 号 p. 277-285
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル 認証あり

    免疫原性血栓性血小板減少性紫斑病(immune-mediated thrombotic thrombocytopenic purpura, iTTP)は,von Willebrand因子の特異的切断酵素であるADAMTS13に対する自己抗体産生によって発症する極めて稀な血栓症である。自己抗体産生を伴う多くの自己免疫性疾患においては,特有のHLAアレル(疾患感受性HLA)の保有が発症のリスク因子とされている。欧州では2010年代前半に,DRB1*11がヨーロッパ系集団におけるiTTPの疾患感受性HLAの一つであることが報告され,アレル拘束性T細胞エピトープ(ADAMTS13ペプチド)の探索が進められた。一方,我々は遺伝的背景がヨーロッパ系集団と異なる日本人集団においてDRB1*08:03がiTTP疾患感受性であることを同定するとともに,アレル拘束性T細胞エピトープの異同について検討した。

第83回日本血液学会学術集会
Symposium 6
  • 藤原 英晃
    2022 年 63 巻 4 号 p. 286-293
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル 認証あり

    同種造血幹細胞移植後のGVHD発症・重篤化には,従来のT細胞と抗原提示細胞に加えて腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)が大きく関わっている。腸管は生理的に低酸素状態である特殊な臓器であり,この低酸素が正常腸内細菌叢を維持し,正常腸内細菌由来代謝物は腸上皮細胞のエネルギー代謝を促進し酸素利用による生理的低酸素状態の維持に寄与する。抗生物質の使用,特定の細菌の増殖および多様性の減少がdysbiosisの危険因子とされるが,GVHDにおけるdysbiosis発症と腸管環境との関連性は未だ解明されていない。腸管組織のhomeostasisの維持により傷害を低減することでGVHDによる組織障害を軽減する「組織寛容」が提言されており,本稿では,「組織寛容」を維持するにあたり,GVHDにおける標的細胞である腸上皮細胞の代謝生理と腸内細菌叢および関連する代謝物のクロストークの観点から解説する。

Symposium 7
  • —診断・予後予測—
    谷川 智彦, 片岡 圭亮
    2022 年 63 巻 4 号 p. 294-301
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル 認証あり

    形態学を発端とする造血器腫瘍の診断・病型分類は免疫学的検査法の導入を経て,近年は次世代シークエンシング(NGS)の登場により,ゲノム異常の重要性が高まっている。2017年に改訂されたWHO分類では積極的に遺伝子異常の記載が盛り込まれた。しかし,NGSを利用したがん遺伝子パネル検査が実臨床で実用化されており,がんゲノム医療の提供が開始されている固形腫瘍に対して,造血器腫瘍に対するがん遺伝子パネル検査は現時点では国内・国外問わず未だに保険収載されていない。治療法選択が固形腫瘍のがん遺伝子パネル検査の主な目的である一方で,造血器腫瘍においてはゲノム情報の有用性は診断・病型分類,予後予測や治療法選択と多岐にわたり,がん遺伝子パネル検査の導入は必須であるといえる。本稿では近い将来実臨床への導入が期待される造血器腫瘍におけるがん遺伝子パネル検査の有用性に関して,診断・予後予測を中心に概説する。

  • —治療法選択—
    前田 高宏
    2022 年 63 巻 4 号 p. 302-307
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル 認証あり

    固形がん分野ではおもに標準治療が終了した患者を対象に,2つの遺伝子パネル検査が保険償還されている。一方で,造血器腫瘍に特化した遺伝子パネル検査は未だ存在せず,早期の臨床実装が期待されている。固形がんと造血器腫瘍では,変異をきたす遺伝子の種類が異なるだけでなく,検査の使用用途が異なる。具体的には,固形がん分野では遺伝子パネル検査が分子標的薬の適応を決める目的でのみ使用されるのに対し,造血器分野では検査から得られるゲノム情報が「治療法選択」に加えて,「診断」「予後予測」において有用である。本稿では2021年の日本血液学会年次総会「血液内科におけるゲノム医療の現状と課題」シンポジウムにおいて,議論された遺伝子パネル検査の「治療法選択」における臨床的有用性に関して概説する。

  • —生殖細胞系列バリアントと関連する問題—
    南谷 泰仁
    2022 年 63 巻 4 号 p. 308-312
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル 認証あり

    固形がん領域で先行している遺伝子パネル検査が造血器腫瘍の領域にも近い将来導入される見込みである。遺伝子パネル検査は網羅的な変異検索を行う検査の性格上,本来の検査目的とは異なる変異を検出することがありこれを二次的所見という。さらに,疾患の発症素因を先天的に保有していることが判明することもある。これらの生殖細胞系列バリアントについて,検出方法,同意取得,開示の範囲,遺伝カウンセリング方法など,今後解決していかなければいけない問題は多岐にわたる。造血器腫瘍領域では同種造血幹細胞移植を行うため,ドナーの生殖細胞系列バリアントを検出する可能性があり問題はさらに複雑となる。本稿では2021年の日本血液学会年次総会「血液内科におけるゲノム医療の現状と課題」シンポジウムにおいて,議論された遺伝子パネル検査の「生殖細胞系列バリアントと関連する問題」に関して概説する。

JSH-EHA Joint Symposium (Symposium 8)
  • 錦織 桃子, 髙折 晃史
    2022 年 63 巻 4 号 p. 313-321
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル 認証あり

    B細胞の胚中心反応では免疫機能を担う遺伝子群の発現がエピゲノム修飾により一時的に抑制されるが,濾胞性リンパ腫ではエピゲノム修飾遺伝子の変異が高頻度に存在し,胚中心の脱出に必要な遺伝子発現が抑制されたままとなる。EZH2阻害薬のtazemetostatはEZH2変異陽性の濾胞性リンパ腫に対し本邦で承認された薬剤であるが,主要組織適合性複合体(MHC)やCD58の発現を回復させることでリンパ腫が免疫細胞に認識されやすくする作用と持つと考えられる。またCCL17/TARCの発現上昇およびT細胞動員作用も有する。本薬剤はこれらの遺伝子を含め,ホジキンリンパ腫のHodgkin/Reed-Sternberg細胞で高発現する遺伝子の一群を上昇させる作用を持つことが示唆された。新規分子標的薬の作用機序を明らかにすることにより,リンパ腫の病態や病型決定のメカニズムをさらに詳しく知ることができる可能性がある。

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