臨床血液
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Picture in Clinical Hematology
臨床研究
  • 永田 和美, 清水 義文, 山本 哲久, 田中 紀光, 今戸 健人, 森 亜子, 正置 耕一, 吉岡 睦展
    2026 年67 巻5 号 p. 371-378
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/03
    ジャーナル 認証あり

    多発性骨髄腫(multiple myeloma, MM)の治療薬lenalidomide(LEN)の皮疹は,治療継続の妨げとなる。本研究ではTh2ケモカイン(thymus and activation-regulated chemokine, TARC)がLENに起因する皮疹の指標となり得るかを検証した。2016年1月~2023年10月に宝塚市立病院でMMの治療中にLENを投与した症例のうち,「grade2」以上の皮疹を発症した症例に対しTARCを測定した。診療録から血液検査値や皮疹への対応とその後の経過を確認した。なおLEN開始前・皮疹発症(TARC測定)時・皮疹消失時を1事象とした。対象は11例の14事象で,全事象で皮疹発症時にTARC高値を示した。一方で皮疹の発症時に一般的な炎症の指標であるWBC,好酸球,CRPおよびアトピー性皮膚炎の指標であるLDHの上昇が見られたのはごく一部の事象のみであった。今回の検討からTARCがLEN起因性皮疹の指標となり得ることが示唆された。

症例報告
  • 前田 悠作, 原田 武志, 堀 太貴, 住谷 龍平, 大浦 雅博, 曽我部 公子, 八木 ひかる, 藤井 志朗, 中村 信元, 三木 浩和, ...
    2026 年67 巻5 号 p. 379-385
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/03
    ジャーナル 認証あり

    Epstein-Barr virus(EBV)陽性節性T/NK細胞リンパ腫(EBV-positive nodal T/NK-cell lymphoma, EBV+ nTNKL)は,WHO分類第5版で新たに定義された,細胞傷害性T細胞由来の予後不良な疾患である。我々は,濾胞性リンパ腫(FL)の治療経過中に発症したEBV+ nTNKLの表現型を呈する免疫不全関連リンパ腫の稀少例を経験した。症例は71歳の女性。FL,grade 3Aに対してrituximab併用化学療法を施行したが,再発の経過を辿った。経過中に発熱とリンパ節腫大を認め,腋窩リンパ節生検にてCD3+,CD4+,TIA-1+,granzyme B+,EBER-ISH+の異常リンパ球のびまん性増殖を認め,EBV+ nTNKLの免疫表現型を呈する免疫不全関連リンパ腫と診断した。CHOP療法を施行したが,病勢制御は困難で,診断から5週間で永眠された。本症例は,B細胞リンパ腫の治療経過中に発症した例であり,FLの臨床経過中に急激な病勢変化を認めた場合には,FLの形質転換のみならずEBV関連リンパ腫も鑑別疾患に含める必要があることを示唆する。今後,症例の集積と分子病態の解析により,診断精度の向上と治療戦略の確立が期待される。

  • 佐々木 優弥, 村上 肇, 原田 拓実, 野口 侑真, 押川 学
    2026 年67 巻5 号 p. 386-389
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/03
    ジャーナル 認証あり

    自己免疫性後天性凝固第V因子欠乏症は,第V因子に対する自己抗体により凝固因子活性が著減し出血傾向を呈する稀な疾患である。今回我々は,胸部大動脈瘤に対する外科手術後に発症した81歳男性の症例を経験した。出血傾向はなかったが術後よりPT・APTTの著明な延長を認め,第V因子活性は3%未満で,第V因子インヒビターを検出した。本例ではインヒビターの存在にもかかわらずクロスミキシング試験において凝固因子欠乏パターンを示し,中和抗体に加えてクリアランス促進型抗体の関与が示唆された。術後や輸血後に原因不明のPT・APTT延長を認めた際には本症を鑑別に挙げる必要がある。

  • 池田 俊紀, 徳永 正浩, 山田 優二, 前田 哲生
    2026 年67 巻5 号 p. 390-396
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/03
    ジャーナル 認証あり

    Epcoritamabは再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫に対して高い有効性を示すが,長期の寛解が得られない患者に対するその後の治療選択肢は限られている。今回,難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の87歳女性に対して三次治療としてepcoritamabを導入した。Epcoritamab 5サイクルの間に施行したpositron emission tomography/computed tomography検査にて指摘された脾臓および縦隔の残存病変に対し,それぞれ6および13~14サイクルの間に36 Gy/18分割の強度変調回転照射を併用した。特記すべき有害事象はなくcomplete metabolic responseを達成し,27サイクルを超えてepcoritamabを継続中である。本例ではepcoritamabの投与のみでは残存した局所病変に対して放射線治療を追加した結果,長期の寛解を得た。放射線治療は免疫療法と交差耐性がなく,高齢者にも施行可能であり,残存病変が限局する場合に有望な治療選択肢と考えられる。

  • 持田 実幸, 梶 大介, 髙木 伸介, 山田 智彦, 宇留賀 公紀, 大田 泰徳, 大久保 悟志, 久能 美香, 渡部 音哉, 田矢 祐規, ...
    2026 年67 巻5 号 p. 397-402
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/03
    ジャーナル 認証あり

    症例は71歳女性。健診で汎血球減少を指摘され,前医を受診した。骨髄検査では診断に至らず,約2年間経過観察されたが血球減少が進行し,移植検討目的で当院紹介となった。18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography(18F-FDG PET/CT)では巨大脾腫を認めたが,異常集積は認めなかった。真菌性肺炎を疑う感染症の併発もあり,診断的治療目的に脾臓摘出術を施行し,摘出脾の組織像およびT細胞受容体(T-cell receptor, TCR)遺伝子再構成解析により肝脾T細胞リンパ腫(hepatosplenic T-cell lymphoma, HSTCL)と診断した。脾摘後に速やかな血球回復を認め,その後CHOP療法を施行し,約1年間再発なく経過している。HSTCLは予後不良の疾患であるが,脾摘により診断に至り,汎血球減少も改善した貴重な症例として報告する。

Symposium 6
  • 長尾 梓
    2026 年67 巻5 号 p. 403-412
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/03
    ジャーナル 認証あり

    血友病治療の進歩により出血制御が改善し,患者の高齢化に伴って虚血性心疾患を含む血栓性疾患への対応が課題となっている。海外では血栓関連イベントは概ね5~8%と報告されてきた一方,日本では2016年の既往歴調査で0.3%と低頻度であった。しかし前向きコホートADVANCE Japanでは短期追跡でも5.5%と一定の虚血性イベントが確認され,さらにリスク予測モデル(QRISK3, Suita)と実測値の乖離も示された。本稿では実際のイベント発生時に慌てないために具体的な止血管理についても概説した。例えば,経皮的冠動脈インターベンション施行時は因子活性確保とアクセス選択を含む止血管理が要であり,抗血小板療法は短DAPT(抗血小板薬2剤)戦略の外挿可能性を踏まえつつ個別化が必要である。抗凝固薬は因子トラフや併用療法を考慮し慎重に適応判断すべきであり,多職種連携とshared decision-makingが今後の中核となる。

特集:多発性骨髄腫・類縁疾患診療の最前線
  • 堺田 惠美子
    2026 年67 巻5 号 p. 413
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/03
    ジャーナル 認証あり
  • 伊藤 薫樹
    2026 年67 巻5 号 p. 414-422
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/03
    ジャーナル 認証あり

    くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)に対する現在の標準治療は無治療経過観察である。本邦では,daratumumabが高リスクSMM患者に投与可能となった。高リスクSMM患者には早期治療介入により臓器障害の出現を抑制できる一方,リスクの低い患者には過剰な毒性を与える可能性もあるため,治療により利益が得られる患者を同定することが重要である。これまで臨床バイオマーカーによるリスクモデルが開発されてきた。最近では腫瘍細胞や免疫微小環境の網羅的な遺伝子解析によってSMMの病態の理解が進んでおり,これらを組み合わせた新たなリスクモデルも開発されている。一方,リスクモデルに基づいた高リスクSMM患者を対象にした臨床試験が実施されている。早期治療介入の推奨にはMMへの進展遅延のみならずQOLやOSの改善といったエビデンスの集積が必要と考えられる。

  • 鈴木 一史
    2026 年67 巻5 号 p. 423-434
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/03
    ジャーナル 認証あり

    多発性骨髄腫は治癒が期待できない造血器腫瘍であるが,プロテアソーム阻害薬,免疫調整薬,抗CD38モノクローナル抗体薬により生存予後は改善した。自家移植は標準治療であり,初発骨髄腫治療は移植適応の有無により大別されるが,2025年に3クラスを含む4剤併用初期治療が移植適応の有無によらず標準治療となり,さらに治療成績が向上することが期待される。微小残存病変(minimal residual disease, MRD)は生存期間のサロゲートマーカーであることが報告され,MRD陰性を主要評価項目とした臨床試験も増加している。自家移植はMRD陰性割合向上に貢献するが,MRD陰性を達成した患者に対する自家移植の必要性について議論が再燃する可能性がある。さらに自家移植とCART細胞療法の比較,二重特異性抗体薬を含む移植後維持療法などBCMA標的免疫治療がより早期の治療ラインに含まれる研究も進行している。本稿では,4剤併用療法時代の未治療多発性骨髄腫に対する治療戦略について概説する。

  • —治療シークエンスへの提言—
    一井 倫子
    2026 年67 巻5 号 p. 435-444
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/03
    ジャーナル 認証あり

    多発性骨髄腫の治療は近年飛躍的に進歩している。本邦でも2006年以降,トリプルクラスと総称される抗骨髄腫薬を用いた治療が次々に導入される事で治療成績は大幅に改善した。さらに2021年からは,新たな標的抗原を用いた新規免疫療法(T細胞リダイレクト療法)であるCAR-T細胞療法,二重特異性抗体が承認され,長期の無治療生存期間を得る事を目標にした骨髄腫診療が可能となる日が間近となっている。初回治療で完治を期待できる治療法はまだ開発されていないが,様々な薬剤や併用治療の良好な治療成績が報告される中で,適切な治療シークエンスを選択し,長期の治療奏効を獲得する手法が模索されている。本稿では,再発難治症例,特にトリプルクラス治療後症例に対する治療に焦点を当て,最近の治療を概説し,現在の課題と今後の展望についても議論する。

  • 内藤 亜夕子, 河野 和
    2026 年67 巻5 号 p. 445-452
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/03
    ジャーナル 認証あり

    全身性ALアミロイドーシスは,多臓器に免疫グロブリン軽鎖由来のアミロイド蛋白が沈着し,多彩な臨床症状を呈する進行性の疾患である。未治療症例に対する標準治療は従来のCyBorD(cyclophosphamide, bortezomib, dexamethasone)療法にdaratumumabを上乗せしたD-CyBorD療法であり,高い血液学的奏効率と臓器改善効果を示す。自家造血幹細胞移植は深い血液学的奏効をもたらすが,多発性骨髄腫の場合と比較して移植関連死亡のリスクが高く,適応には慎重な判断が必要である。再発・難治例ではlenalidomide,pomalidomide,ixazomibといった従来の抗骨髄腫治療薬に加えて,venetoclaxやBCMA標的療法などの有効性が期待されている。アミロイド線維を標的とした治療研究が進められているが,有効性に関して依然として課題が多い。

  • 塚本 祥吉
    2026 年67 巻5 号 p. 453-461
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/03
    ジャーナル 認証あり

    POEMS症候群は,モノクローナル形質細胞増殖を基盤とし,多発神経炎,臓器腫大,M蛋白,皮膚症状などを特徴とする稀少な全身性疾患である。本症候群では血管内皮増殖因子(VEGF)が著明に上昇し,病態に深く関与している。診断には多発神経障害,単クローン性形質細胞増殖,血清VEGF上昇を必須項目とする本邦の診断基準が実用的かつ高精度である。治療は自家造血幹細胞移植(ASCT)の適応の有無により決定され,適応例では大量melphalanを前処置とするASCTが標準治療であり,神経症状の改善と長期生存が期待できる。移植非適応例や移植前の導入療法としては,thalidomide,lenalidomide,bortezomibなどの薬剤が有効である。血清VEGF値は疾患活動性や治療反応性を鋭敏に反映するバイオマーカーであり,経過観察時のモニタリングに不可欠である。本稿では,最新の知見に基づいた本疾患の病態,診断,治療戦略を概説する。

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