抄録
本研究では,表面波の位相速度からS波速度分布を推定するために遺伝的アルゴリズムと焼きなまし法を組み合わせたハイブリッド逆解析手法を提案している。この方法の計算フローは遺伝的アルゴリズムを基本としているが,交叉における親モデルと子モデルの選択の際に更新世代数に応じた受理確率を導入した。この受理確率を焼きなまし法と同様に世代数に依存した温度の関数として定義した。これにより,世代更新数が少ない場合には,誤差の大きいモデルも次世代に残り,大局的探索が可能となり,一方,世代更新により温度が低下すると,誤差の小さいモデルが多く次世代に残ることになり,局所的探索が主体となる。さらに,モデルパラメータのコード化では,実数を用いることにした。このアルゴリズムの適用性を深部地盤構造モデルに対するレイリー波の理論位相速度を擬似的な観測データとして用いた数値実験で検討した。その結果,ハイブリッド手法では収束性と安定性が高く,遺伝的アルゴリズムや焼きなまし法に比べてより少ない計算量で最適解近傍のモデルを探索することが可能であることがわかった。さらに,関東平野での既往の微動探査により得られたレイリー波の位相速度にも適用し,数値実験と同様の結果を確認することができた。