物理探査
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解説
  • 津野 靖士, 小西 千里, 先名 重樹, 山中 浩明
    2023 年 76 巻 p. 22-29
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/02
    ジャーナル 認証あり

     近年,表層地盤のS波速度構造を推定するために,物理探査法の一つである微動アレイ探査が国内外において広く利用されている。また,測定者や分析者に依存するデータの品質を向上させること及び結果のばらつきを抑えることを目的として,微動アレイ測定の機器仕様や調査手順,データ解析等を定めたガイドラインが日本およびヨーロッパ,米国の機関・研究グループにより個別に策定されている。同時に,微動アレイ探査によるS波速度構造の推定精度や結果のばらつきを検証することを目的として,微動アレイ探査の国際ブラインド・プリディクションが日本およびヨーロッパの研究グループにより実施されている。このように微動アレイ探査の利用が国内外で拡大する一方で,微動アレイ探査に関する国際的に共通したガイドラインは存在しておらず,微動アレイ測定の機器仕様や調査手順,データ解析等を定めたガイドラインを策定することは重要である。本解説では,最初に,ISO/TC 182(Geotechnics: 地盤工学分野)での微動アレイ探査の国際規格策定に係る国際および国内審議活動を報告した後,ISO 24057:2022 “Geotechnics-Array measurement of microtremors to estimate shear wave velocity profile(地盤工学 -せん断波速度プロファイルを推定するための微動のアレイ測定)”の適用範囲や主な基本要求事項について概説する。開発された国際規格ISO 24057:2022は国際的に共通された規格であり,微動アレイ測定やそのデータ解析等について規定した基本要求事項を遵守することにより,データの品質を向上させること及び結果のばらつきを抑えることが期待される。

  • 西澤 修
    2023 年 76 巻 p. 42-57
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/30
    ジャーナル 認証あり

     多孔質岩石弾性論の目的の一つは排水条件(drained)と非排水条件(undrained)の体積弾性率KdKuの関係を導出することである。非排水条件での体積弾性率KuはGassmannの式と呼ばれKdと他のパラメータを含む複雑な式で表現される。いっぽう,Gassmannの式はBiot modulus Mを使うと単純な式に置き換わる。Mは圧力が上昇したときの孔隙内流体の実効的体積弾性率を意味し,孔隙内流体が圧力勾配によって流れる前の弾性応答を示すのでstorage modulusとも呼ばれるが,わかりにくいパラメータである。孔隙ネットワークの孔隙壁をペットボトルに例えれば,Mはペットボトルの中の飲料水の実効的体積弾性率に相当する。ガスを含まない飲料水のペットボトルは薄く,水の圧力が上がればペットボトルが膨らむため,全体の実効的体積弾性率は小さい。炭酸飲料のペットボトルは炭酸水の圧力上昇に耐えるだけの厚さを持ち,高い圧力の水を保持できるので実効的体積弾性率は大きい。drained条件とは容器の硬さが影響しない場合で,undrained条件は容器の硬さを考慮した場合に相当する。本稿ではMの意味と役割を解明し,多孔質弾性論に現れる各種パラメータの基礎概念を図解を交えて詳細に議論する。

  • 西澤 修
    2023 年 76 巻 p. 58-74
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/30
    ジャーナル 認証あり

     Biotの第2種P波が多孔質岩石中の流体を伝播する音波であることはよく知られているが,日本ではこのことへの関心が低い。本稿では第2種P波に関する背景的知識の解説と主要な数式とパラメータの導出過程を紹介する。第2種P波を導く式はエネルギー散逸項を含む固有値問題で,二つの解のうちの一方が第2種P波と呼ばれるものである。固有値問題の計算例によって第2種P波の特徴を明らかにする。また,第2種P波は多孔質岩石中の流体の拡散とも関係するので多孔質岩石中の流体の拡散係数導出の過程を解説する。拡散係数は前稿で示したdrained,undrarined条件での体積弾性率やBiot modulusを含むものとなる。最後に第2種P波に関する観測実験の例を紹介し理解を深める。

ラピッドレター
  • 大田 優介, 笠谷 貴史, 川田 佳史, 椎木(戸塚) 修平, 熊谷 英憲, 岩本 久則, 町山 栄章, 飯島 耕一, 金子 純二
    2023 年 76 巻 p. 14-21
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル 認証あり

     深海底の鉱物資源の空間規模把握と成因評価のためには試料の採取および物性計測・化学組成分析が必須である。特に掘削調査により得られる深度方向に連続した試料は,物理探査の有効性評価の観点からも極めて重要である。本研究では海底熱水鉱床の試料情報拡充と潜頭性鉱床に対する自然電位探査の有効性評価を目的とし,潜頭型海底熱水鉱床の胚胎有望地点に対し海底着座型深海用ボーリングシステムによる海底下掘削を実施した。掘削は,熱水兆候と自然電位異常の双方が見られる地域で1点,熱水兆候はあるが自然電位異常のない領域で1点,計2地点で実施された。自然電位異常域で採取されたコアには硫化鉱物の沈殿が確認された一方,自然電位異常の見られない領域で採取されたコアは火山性砕屑物で構成されており,硫化鉱物はほとんど見られなかった。自然電位異常域のコアには詳細な物性計測および化学組成分析が実施された。まず,コア全体に比抵抗測定を実施し,さらにセクションごとに精密なスペクトル誘導分極計測を実施した。また,蛍光X線分析法による元素濃度分析とX線回折分析による鉱物同定も実施し,掘削記載と併せて鉱物分類を行った。その結果,約20 mの範囲に渡る方鉛鉱や黄鉄鉱など導電性硫化鉱物の断続的な産出が明らかとなった。これらの導電性硫化鉱物の濃集地点の分布は,誘導分極効果の強度が高い地点の分布と良く対応することがわかった。一方で高い誘導分極効果の地点と低比抵抗の地点の分布は一致しなかった。以上より,本研究は熱水兆候が必ずしも海底熱水鉱床の胚胎を意味しないこと,自然電位探査が潜頭性鉱床を検出し得ることを示した。また,誘導分極効果が硫化鉱物の検出に役立つことが改めて示され,一方で物理探査による海底熱水鉱床の規模推定には比抵抗だけでは不十分である可能性が示唆された。

ケーススタディ
  • 白石 英孝, 浅沼 宏
    2023 年 76 巻 p. 1-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル 認証あり

     2点アレイによる微動位相速度計測を対象として,アレイへの入射特性に依存する複素コヒーレンス関数高次項の挙動について,理論的および実観測記録をもとにした検討を行った。入射特性については,白石ほか(2005)において入射波の方位角および方位別寄与率によって理論的に定義された振源係数を用いた。また実観測記録については,微動の入射条件が異なると考えられる3カ所の調査地点,すなわち主要振源と考えられる幹線道路が周りを囲む都市部1カ所,および特定の幹線道路が近傍(約300 m)または遠方(約800 m)に位置する田園地帯2カ所で,SPAC法による位相速度計測結果を基準として比較検討を行った。その結果,以下の3点が明らかとなった。1)最大誤差を与える2次の項に乗じられた振源係数の周波数特性は,調査地点およびアレイごとに異なり,時間変動がきわめて大きい(変動係数は数10~100%を超える)。2)2点アレイの相対誤差は-20~30%の範囲にあって振源係数の周波数特性と連動し,その符号と絶対値が誤差の過大・過小を決定している。3)都市部の観測記録で求めたF-Kパワースペクトルから入射波の方位別寄与率を推計し振源係数の生成プロセスをトレースしたところ,係数の符号と大小は卓越する寄与率成分の方位分布と密接に関係し,非等方的な分布であっても正しい位相速度を与えうる微小値となる場合があった。導出した振源係数はSPAC法による値とも整合した。

     これらの結果から,振源係数はアレイへの微動入射特性や誤差の挙動と密接に関連することが明らかであり,2点アレイによる高精度位相速度計測の実現に向けた有用な指標になるものと考えられた。

  • 鈴木 浩一, 尾留川 剛, 萬寶 徹郎
    2023 年 76 巻 p. 30-41
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル 認証あり

     ロックフィルダムの堤体部では,基礎岩盤の深度が急激に変化する箇所で不同沈下が生じやすく,大規模地震時にせん断変形が発生することがある。さらに,このせん断変形域に貯水が浸透することにより堤体の浸食が懸念される。この過程において堤体内の土質細粒分が徐々に流出し,高透水域が形成されると考えられる。このような背景の中,電気探査法により堤体中の高透水域の位置を特定することが期待される。本報では,まず,ロックフィルダムの定期点検に伴う貯水位の低下時に電気探査による繰り返し測定を行い,差トモグラフィ解析により比抵抗変化率断面を求めた。その結果,浸食の発生が予想される右岸地中擁壁の近傍に比抵抗変化が顕著な領域を検出した。次に,高透水域は細粒分が流出して形成されると仮定して,砂と粘土よりなる粒状媒質に対するKozeny-Carmanの式とGloverの式から,高透水域の透水係数,比抵抗,流路断面積を推定した。さらに,これらの推定値に基づき,高透水域内の間隙水比抵抗がダム水位の低下により変化する比抵抗モデルを構築し数値シミュレーションを行った。その結果,貯水位変動に伴って比抵抗変化が予想される領域は,繰り返し電気探査の解析で得られた比抵抗変化域とほぼ整合した。以上より,地中擁壁近傍の岩盤傾斜急変部の上部に,せん断変形に伴い細粒分が流出した高透水域が存在すると推定した。また,本報で提案した透水モデルに基づく数値シミュレーションを行うことにより,電気探査法の有用性を事前に評価することが可能と思われる。今後,調査対象ダムの補修工事が行われた際は,電気探査結果の妥当性を検証する予定である。

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