物理探査
Online ISSN : 1881-4824
Print ISSN : 0912-7984
ISSN-L : 0912-7984
最新号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
特集「海底下浅層の探査技術と開発」
  • 池 俊宏
    2022 年 75 巻 p. sp1-sp2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    ジャーナル 認証あり

     地下の状況を把握する物理探査は,鉱山や資源探査のみならず,防災関連,洋上風力発電施設,土木・環境調査,CO2貯留適地の調査,そして海底ケーブル敷設など社会インフラ分野に波及しており,ターゲットの把握に必要なスケールに合わせた探査は,克服課題の設定および技術開発やデータ取得に多くの余地があり,研究開発を進める上で分野を跨いだ科学者の連携が欠かせない。

     これまで実施された物理探査として,海域で1980年代後半から本邦周辺の浅海域における探査技術の適用が始まり,陸域では1990年代に関東平野における反射法地震探査が精力的に実施された。これと時期を同じくして,会誌物理探査でも1982年の35巻3号や2004年の57巻4号ほかを通して,浅海域での調査における問題点や対策および調査機器の開発について,例えば主に土木建設用の浅海高分解能ディジタルマルチチャンネル音波探査装置の開発,浅海域の電磁法調査,エアボーン時間領域電磁探査を用いた浅海域の基盤深度計測などについて,会員の皆さまに当時の最新の開発動向を紹介した。さらに2008年7月に開催された主要8ヶ国首脳会議(G8)北海道洞爺湖サミット首脳宣言があり,低炭素社会実現のためCarbon dioxide Capture and Storage(二酸化炭素回収・貯留:CCS)に係る革新的技術開発が推進され貯留地に関する検討が進み,そして2020年10月26日の臨時国会において,菅義偉首相(当時)の所信表明演説から温室効果ガスの排出を2050年までに全体としてゼロにする方針が表明されたことを契機に,CCSの貯留適地を対象とした海底下浅層調査への関心が高まった。また海洋再生可能エネルギー発電設備に係る海域の利用の促進に関する法律案が2018年11月6日に閣議決定され,着底式洋上風力発電設備の設置に係る海底地盤調査の検討が進んだ。

     そこで物理探査学会会誌編集委員会では,近年において計算機の処理能力やノイズ軽減技術で大きく進展した浅層に関する物理探査技術を用いた探査事例や,地盤調査の開発を取り巻く状況を会員の皆さまにいち早くお届けするため,特集「海底浅層の探査技術と開発」を企画した。簡単に本特集の紹介をしたい。中核となる探査技術に関しては,水中スピーカーを用いた音波探査(鶴),海底浅層高分解能地震探査の開発(寺西ほか),海底微動アレイ探査システムの開発(井上ほか),海底堆積物浅層を対象とした音響探査技術の開発(水野)の4編,また海底地すべりについては,川村が沿岸開発において避けて通れないリスクや課題に加えて最新の研究動向を述べている。エンジニアリング関連は,自己昇降式作業台船(SEP船)を用いた新しい地盤調査法(松原ほか),海底ケーブルルート調査における物理探査の解説(北ほか)の2編が掲載されている。そのほか,大型の物理探査船を用いた浅海調査仕様の解説(池)は今後調査仕様を検討する際,本学会の会員に大いに参考になると思われる。

     本特集の著者の皆さまからは,日程調整が難しい中,探査やシステムの開発・研究の最新の成果についてご寄稿頂き,また査読などご協力下さった方々に,会誌編集委員会から厚くお礼申し上げる。今回の特集は,幅広い対象者に親しんでいただける内容として,論文やケーススタディ,そして解説を中心とした構成にしている。本特集が,浅層を対象とした物理探査技術の活躍する海域を大きく広げ,今後開拓すべき技術分野や研究の進め方などを考える一助となれば幸いである。

論説
  • 松原 由和, 川﨑 悠介, 野中 建太, 平出 亜
    2022 年 75 巻 p. sp30-sp41
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル 認証あり

     洋上風力事業では,地盤定数の測定法として仮設が容易で迅速な調査が可能な洋上CPTをSEP船等を用いて実施されるケースがある。ただし,日本近海の海底地盤では多くの場合CPTで必要深度まで押し込み続けることはできず,例えばパーカッションドリル掘削のように高速な掘削方法で所定深度まで掘り進めてはCPTを繰り返すという方法が一般的である。

     また,日本における海底地盤調査においては,工学的基盤層(Vs≧400 m/s)の把握が重要なポイントとなっている。一般的にS波速度の取得は,ボーリング孔を利用したサスペンションPS検層(以下susPS検層と称す)で行われることが多いが,掘削径や孔壁の仕上がり状況の影響を受けるなどの問題も指摘されている。本論文では,洋上ボーリングで標準貫入試験(SPT)実施時の振動,ならびに洋上CPTで用いるパーカッションドリル掘削時の振動を用いた新たなPS検層法の結果を示す。このPS検層は陸上で実施するダウンホールPS検層の逆(起振と受振が逆)であることから海底逆PS検層と名付けた。海底逆PS検層をsusPS検層と同一孔あるいは直近の孔で実施してS波速度を比較した結果,海底逆PS検層においてもsusPS検層と同様な結果が得られることが分かった。本手法は,孔中に測定用ゾンデを挿入する必要がなく,susPS検層で対応が難しい崩壊のある孔や大孔径(通常susPS検層の適応孔径はおおよそ200 mm以下とされている)において有効である。

  • 川村 喜一郎
    2022 年 75 巻 p. sp86-sp94
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    ジャーナル 認証あり

     この論文では,海底地すべりの定義,海底地すべりの形態として,一般的な地形的・地質的な特徴的な外観を紹介する。その後,火山島や沿岸堆積体での海底地すべりの事例紹介をし,海底地すべりにおける諸課題として,近年話題になっている発生年代,地盤安定性の問題として,力学バランスについて述べる。さらには地形などから判別される規模を評価する上での地すべりの発生回数と規模とについて紹介する。海底地すべりの発生メカニズムとして,滑り面や間隙水圧について述べ,最後に海底地すべりによる地質リスクと解決すべき課題として,近年話題になっている沿岸開発の一つでもある洋上風力発電開発事業における問題点について述べる。

解説
  • 池 俊宏
    2022 年 75 巻 p. sp11-sp17
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
    ジャーナル 認証あり

     大型の物理探査船を用いた浅海の反射法地震探査は,限られた水深に調査機器を曳航する際に危惧される調査の中断リスクを最小化するために,調査仕様の検討が重要である。本説では,経済産業省資源エネルギー庁の事業である国内石油・天然ガス基礎調査に用いられている三次元物理探査船「たんさ」を例にして,その運航および調査機器の安全面を考慮して設定された水深50 m以深の海域を調査対象としていることについて,調査仕様や調査機器の展開,そして調査の水深が決められた背景と課題を解説する。「たんさ」のような大型の物理探査船を浅海での調査に用いる際の運航上の留意点として,1)ケーブルを海底に触れさせないため精緻な海底地形図の入手,海底に設置されている障害物や大型構造物そして漁具の有無を確認,航海士や調査員への事前説明,2)調査機器の展開中は止まることができない物理探査船が緊急に退避を求められる場合を加味したケーブル長の設定,3)求められる水平分解能を達成しつつ短時間で効率の良い調査を実施するため,震源数とケーブル展開幅の設定が鍵となる。「たんさ」の様な大型の物理探査船を用いた調査を計画・実行する際に,調査の安全と共に調査中断のリスクを認識することが重要である。

  • 北 高穂, 橋本 健太郎, 大平 亮, 梅渓 健一郎, 岡村 健
    2022 年 75 巻 p. sp76-sp85
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    ジャーナル 認証あり

     通信および送電のための海底ケーブルを敷設する前には,最適ルートを探索するために机上調査および原位置調査が実施される。原位置調査では,設計ルート周辺の地形・地質・障害物分布などを詳細に把握し,即時にルートを最適化する。特に,陸揚げ地点から最大水深1,500 m程度までの沿岸海域では,漁業活動や投錨などによるケーブル損傷を防ぐために,海底下1.0~2.0 m程度の深さでケーブルを埋設できるかどうかを評価する。このような調査では,音響を使った物理探査手法が主に採られ,また,磁気探査や電気探査も部分的に用いられる。

     音響探査手法としては,詳細な海底地形を把握するマルチビーム測深機(以後,MBES(Multi-beam Echosounder)と記す),海底面の底質や異物の分布を可視化するサイドスキャンソナ(以後,SSS(Side-scan Sonar)と記す),そして,表層の堆積層厚を調べるサブボトムプロファイラ(以後,SBP(Sub-bottom Profiler)と記す)が主に用いられる。不発弾や既設ケーブルといったルート周辺の障害物を探索するためには,海中磁力計(以後,MAG(Marine Magnetometer)と記す)が用いられる。また,海底ケーブルルートに沿った表層堆積層の底質判別や防触設計のために,電気探査が稀に用いられることもある。

     ケーブル埋設性評価のために,柱状採泥や海底着座式mini-CPT(Cone Penetration Test)などのジオテクニカルな手法で地盤物性を調べ,これを基にSSSとSBPによる探査結果の解釈が求められる。しかし,日本ではmini-CPTは未だ普及していないことと,柱状採泥試料は乱されている場合が多いため,埋設性評価の精度向上には,S波速度などの物理量を効率的に得る探査手法の開発・普及が期待される。

     最近の洋上風力発電施設の調査・建設においては,欧州の仕様に基づいて,機器の校正や精度確認が厳格化される傾向にあるので,海底表層地盤に関する探査技術もこの傾向に対応する必要があろう。

論文
  • 井上 雄介, 今井 幹浩, 松原 由和, 平出 亜
    2022 年 75 巻 p. sp50-sp59
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/09
    ジャーナル 認証あり

     2019年4月より再エネ海域利用法が施行されたことにより,洋上風力発電施設に係る地盤調査市場は大幅に拡大している。洋上における地盤の支持層分布あるいは工学的基盤深度の把握に必要なS波速度の測定は,ボーリング孔を利用したサスペンションPS検層が一般的に行われてきた。しかしながら,洋上風力発電事業(着床式)は年間平均風速7 m/s以上,水深10~40 m程度の海域を対象としており,厳しい環境下でのボーリング作業は容易ではない。著者らはこのような厳しい環境下でもボーリング調査を必要とせず,短期間でS波速度構造を把握することができる海底微動アレイ探査システムを開発した。本稿では,当手法の開発について概説した後,適用事例及び海底微動の特徴について示した。これらの結果より,得られたS波速度構造はPS検層および音波探査と整合的な結果が得られたことから海底微動アレイ探査の有用性が示された。

  • 寺西 陽祐, 齊藤 秀太郎, 塚原 均, 村上 文俊, 川崎 慎治, 小澤 岳史, 東中 基倫
    2022 年 75 巻 p. sp60-sp69
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル 認証あり

     高分解能三次元地震探査(3D-HRS)の実証試験を,大分県別府湾の浅海域において実施した。GIガン(150立方インチ)と6本のショートストリーマーケーブルを曳航し,高密度観測システムとリアルタイム測位システムを用いて空間分解能の高い地震探査記録を取得した。構成された観測システムは軽量で,小型船舶からのケーブルの展開と揚収が容易であり,浅海域における効率的なデータ取得を実現した。3D-HRSデータ処理では,ノイズ抑制やフットプリント抑制など入念な反射法データ処理により高精細なイメージングが行われた。中でも,重合前のノイズ除去,ゴースト除去,多重反射波除去,およびフットプリントの除去が反射断面の品質を向上させるために重要な役割を果たした。既存の二次元地震探査断面と比較して,小規模な断層群をより詳細に可視化できており,既往成果の解像度をはるかに上回った。さらに,3D-HRSマイグレーションボリュームから,SimilarityおよびThinned Fault Likelihoodなどのサイスミックアトリビュートを算出し,断裂・断層などの地下構造の空間不連続性を効果的に抽出することができた。別府湾の実証試験結果から,3D-HRSシステムは海底面形状および海底下に潜在する小規模な断層や旧河道などを高解像度で可視化し,活断層系の断層ネットワークを詳細に把握できる能力を示した。

ラピッドレター
  • 笠谷 貴史, 川田 佳史, 岩本 久則
    2022 年 75 巻 p. sp42-sp49
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/07
    ジャーナル 認証あり

     開発した鉛直電極アレイを用いた電気探査装置の有効性を検証するため,伊是名海穴のHakurei fieldにおいて電気探査装置を無人探査機に搭載した潜航調査を行い,取得したデータを用いて比抵抗構造の推定を行った。測線の北側では複数の低比抵抗域を検出することができ,その低比抵抗域は自然電位の負の異常域と鉛直電場の負の異常域によく一致している。これらの低比抵抗域は,硫化物に伴う低比抵抗異常に相当すると考えられる。一方,南側はほぼ一様構造を示し,目立った異常域は見られなかった。北側の低比抵抗域の間に見られる相対的に高い比抵抗を示す領域は,掘削コアで軽石を含む堆積層が得られている領域であり,両者は整合的である。本装置では,電気探査と同時に複雑な処理なしに鉛直電場として自然電位異常を検出することができる。鉛直電極アレイによる電気探査と自然電位探査を組み合わせることで,より効率的な海底熱水鉱床探査を実施できるようになる。この電気探査装置は海底近傍のフットプリントが小さいため,起伏の激しい地域でも海底近傍を曳航しやすい。鉛直電場を用いた電気探査法は,海底熱水鉱床域での探査に有効な手法となり得る。

ケーススタディ
  • 鶴 哲郎
    2022 年 75 巻 p. sp3-sp10
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル 認証あり

     近年,海洋生態系への環境負荷に対する懸念からエアガンの使用が制限されつつあり,東京湾奥部のような浅海域においては地震探査の実施が困難になり,地震探査の空白域化が進んでいる。その一つの技術面でのブレイクスルーとして,我々は魚類への影響がほとんどない程度の音を出す水中スピーカーを利用している。その環境配慮型振源を用いて,2017年以降,東京湾奥部で地震探査を実施した結果,海底下7~8 mの深度にガス層が分布していることが明らかになった。そのガス層は,東京湾奥部の西側では広く一様に分布し,東側では局部的に分布している。採取したガスの組成分析結果によれば,96.8%がメタンであった。メタンの強い可燃性と温室効果を考慮すれば,災害のリスクや地球温暖化への影響はゼロではないと考えられる。したがって,首都圏におけるこれらの潜在リスク軽減のため,東京湾奥部のガス層に関する更なる調査が必要である。

  • 浅田 美穂, 横田 俊之, 佐藤 幹夫, 棚橋 学
    2022 年 75 巻 p. sp18-sp29
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/24
    ジャーナル 認証あり

     異なる観測プラットフォームにより異なる周波数を利用して,音響マッピングを表層型メタンハイドレートが賦存する海域で実施したところ,地形的特徴では両者の結果に類似が見られたが,後方散乱強度分布では異なるパターンを示した。音響マッピングで求められる地形の場合には,用いる周波数の違いによって生じる深度情報の差異は,高々分解能程度となることが考えられる。一方で音波の振幅値から求められる後方散乱強度は,海底面を覆う堆積物を透過する深さが音波の周波数によって異なるため,音波が透過する深度内に顕著な物質境界がある場合には,用いる音波の周波数によって取得する値が大きく異なる可能性がある。この性質を利用すると,音波の周波数の違いによる後方散乱強度分布のパターンの差異を検出することで,海底を覆う堆積物により目視観察が困難な,海底下ごく浅部の物質境界を認識することが出来る。表層型メタンハイドレート賦存域の海底面付近の環境を考えた場合に,複数の周波数を用いる音響マッピングによって海底下ごく浅部に物質境界が認識された場合には,「堆積物に薄く被覆された」メタンハイドレートそのものか,あるいは自生炭酸塩岩など冷湧水活動を示唆する音響的特徴をもつ物質の分布を示すことが出来る。

  • 水野 勝紀
    2022 年 75 巻 p. sp70-sp75
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル 認証あり

     海洋開発や気候変動に伴う環境改変が,海洋環境,特に海底下の堆積物中の生物や環境に与える影響については,堆積物中を効率的にモニタリングするための手法が確立されていないという事情もあり,未だ不明な点が多い。本研究では,堆積物中の底生生物相や環境動態を時空間的に計測・評価するための技術基盤の構築を目指しており,それら海底下環境の可視化に向けた新しい音響計測システムの開発を進めている。本稿では,海底下浅層内の埋没物を高い分解能で検出することを目的として開発を進めている国産の音響計測システム(3次元音響コアリングシステム(設置型,中心周波数100 kHzの音波を利用)と音響モグラ(クローラー型,中心周波数500 kHzの音波を利用))について触れるとともに,それらを用いたフィールド実験(宮城県伊豆沼における水底下のレンコンの調査や静岡県筑波大学下田臨海実験センターなどにおける埋没物探査試験)の結果について紹介する。

論説
  • 高橋 明久
    2022 年 75 巻 p. 79-88
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/26
    ジャーナル 認証あり

     反射法地震探査記録を用いた地下構造解釈においては,その推定の限界等を考察するのに,垂直分解能の理解が重要である。垂直分解能を考えるにあたっては2つの波を分離して認識できる分離能力(separability)と,振幅等から薄層の厚さを認識できる検知能力(visibility)を考慮する必要がある。前者の分離能力は汎用的にはRayleighの1/4波長則を適用するのが良い。すなわち,2つの基本ウェーブレットはその卓越波長の1/4以上のずれがあれば独立して認識できる。また,検知能力は信号/雑音比(S/N比)に依存し,S/N比が極めて高ければ1/30波長程度の厚さの薄層の認識が可能である。分離能力の理論はRickerウェーブレットやsincウェーブレットといった基本ウェーブレットに対して定式化できるが,現実の反射法記録はそれらのような理想的な周波数成分(振幅スペクトル)を持つわけではない。従って実用的には実際の反射法断面図から卓越周波数を読み取って卓越波長に変換し分離能力を認識する。また,実際の反射法記録の卓越周波数は周波数に依存した減衰の効果によって深部では低くなる。また,震源規模の大小による違いも顕著である。震源規模が小さくなれば一般に卓越周波数は高くなるが,対応して透過能力は低下する。そのため対象深度に対して適切な震源を設定する必要がある。反射法断面図の解釈を行う際には,例えば堆積環境の違いによる反射法記録上の振幅異常と実際の堆積物の広がりの関係を認識しておく。また,有限な周波数成分を持つ基本ウェーブレットを用いた場合の薄層の見え方の違いや薄層におけるAVO現象の識別にも気を配る必要がある。加えて,坑井データ等との統合の際にはその垂直分解能を整合させることが重要となる。そして,より複雑な現実の反射法記録の解釈においては,本論で述べる基本事項を認識したうえで,実際の地下の特性やデータ取得およびデータ処理の特性を考慮して取り組んでいくことが必要である。

論文
  • 吉田 邦一, 上林 宏敏, 大堀 道広
    2022 年 75 巻 p. 70-78
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
    ジャーナル 認証あり

     強震動予測に用いる地下構造モデルの作成には,微動アレイ探査の結果がよく用いられる。これまでは鉛直成分をもとにしたレイリー波の位相速度が用いられてきたが,水平成分を用いたラブ波の位相速度の推定ができれば,地下構造モデルをより精度よく構築できることが期待される。ラブ波の位相速度の推定法として,回転成分を用いたものが最近提案されている。本研究では,この手法の妥当性を評価するため,和歌山平野で観測された微動アレイ記録の水平成分を用いてラブ波の位相速度を推定した。回転成分を求める手法をゆがんだ三角形アレイにも対応できるように改良し,水平成分の記録を解析した。この解析で得られた回転成分波形から,空間自己相関法により位相速度を求めた。得られた位相速度は,ほとんどの観測サイトで正の分散性を示した。回転成分の空間自己相関法により推定したラブ波の位相速度と,既往研究による同じアレイ記録を用いた水平成分のf-k法により求めたラブ波の分散曲線を比較すると,重複する周波数帯域でほぼ同じ値が得られた。また,空間自己相関法の方がf-k法よりも低周波数側の位相速度を求めることができた。ラブ波位相速度を求めたサイトのうちIMFサイトについて,微動記録から推定した位相速度と既往のPS検層および3次元地下構造モデルを組み合わせて作成した地下構造モデルから計算した理論位相速度を比較した。その結果,観測と理論の位相速度はごくわずかなずれがあるものの,ほぼ対応した。次にアレイ記録から回転成分および発散成分を計算して,それぞれのパワーを比較した。さらに,IMFサイトについて回転および発散成分をラブ波とレイリー波のパワーに変換した。その結果,本研究のアレイ記録では,回転成分が発散成分よりも卓越しており,水平成分にはレイリー波よりもラブ波が卓越していることが示唆された。

ラピッドレター
  • 津野 靖士, 山中 浩明, 川尻 峻三, 小笠原 明信, 高井 伸雄, 中川 尚郁, 重藤 迪子, 野本 真吾, 岸川 鉄啓, 堀田 淳
    2022 年 75 巻 p. 56-63
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/27
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,凍結による表層地盤の物性変化が地震動へ及ぼす影響を評価することを目的に,寒冷地である北海道北見市おいて,1年を通した重錘落下測定と表層を対象としたボアホール地震観測のデータ分析から地盤震動特性に係る季節変動の特徴を抽出することを試みた。重錘落下測定データによる基本モードレイリー波位相速度は,0 ℃線(凍結線)から明らかになった2020年12月初旬~2021年3月終旬の凍結期において,最も速い位相速度を示し,1年を通じて周波数50Hz程度で変動係数が最も大きくなることがわかった。地震動の水平動に対する地表/地中スペクトル比は,凍結期において1倍以下の減衰を示し,それ以外は1倍以上の増幅を示した。このことは,凍結により表層と基盤のS波速度コントラストが小さくなったあるいは表層と基盤のS波速度が逆転したことが要因であると考えれる。さらに,微動のH/Vスペクトルは,凍結期において1~100 Hzの周波数帯域で0.5以下の小さな値を示した。このことは,上記要因に加えて,凍結により表層地盤のポアソン比が変化したことが要因であると考えられる。凍結期における地震動の地表/地中スペクトル比の減少や微動のH/Vスペクトルの低下を実証的に明らかにし,重錘落下測定の繰り返しと表層を対象としたボアホール地震観測からレイリー波の位相速度や地表/地中地震動のスペクトル比,微動のH/Vスペクトルの季節変動を定量的に評価した。

  • 木村 健太, 後藤 忠徳, 前田 智輝, 山田 尊生, 萩谷 健治
    2022 年 75 巻 p. 64-69
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル 認証あり

     地下比抵抗構造は地下流体の分布や移動を議論する際に有益な情報であるが,流体の粘性の違いが地層の比抵抗に与える影響については,十分には議論されていない。本研究では実験室において,高粘性の泥水を堆積物試料に浸透させ,泥水飽和度と試料比抵抗の関係を調査した。試料として,砂礫混じりの川砂および細粒の砂を用いた。室内実験の結果,泥水使用時の比抵抗は,水道水を用いた時と比べて,低飽和域で高い値を示し,飽和係数も大きくなった。その要因について定性的な議論を行ったところ,泥水の非ニュートン流体(ビンガム流体)的性質により,泥水の毛管現象がほとんど起きなかった事が主な要因であると推測された。高粘性流体が探査対象の場合は,室内実験を通じて,流体の特性や飽和度と比抵抗の関係を調査しておく必要性が示唆された。

  • 堀田 淳, 野本真吾 , 岸川 鉄啓, 山中 浩明, 川尻 峻三, 津野 靖士, 高井 伸雄, 中川 尚郁, 重藤 迪子
    2022 年 75 巻 p. 89-97
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル 認証あり

     本研究は凍結による表層地盤の物性変化が地震動へ及ぼす影響を評価することを目的に,寒冷地に位置する北海道北見市において電気探査を実施し,地表付近の地下水や地盤の凍結・融解などの地盤状況の季節変動を捉えることを試みた。1年間の調査期間において未凍結期~凍結期への遷移期~凍結期~未凍結期への遷移期(融解期)~未凍結期と遷移する地盤の凍結プロセスに対応した見掛比抵抗曲線の形状の変化が捉えられ,見掛比抵抗曲線の形状から地盤の凍結状況を推定できることが示唆された。比抵抗構造では凍結期に浅部の比抵抗が大きくなり,その層厚も凍結の進行とともに大きくなることが確認された。また,地盤の物性値の一つである土の体積含水率は電気探査結果と同様に地盤の凍結状況を反映しており,凍結による両者の変化が良い対応を示すことが確認された。比抵抗は地盤の物性値の一つなので,電気探査結果は寒冷地において地震動評価を目的とした地盤モデルを構築する際に有意な情報になり得ると考えられる。また,凍結深度より深部において地下水位の変動に対応すると考えられる比抵抗構造の変化も捉えられており,電気探査によりP波速度,密度といった地盤物性値を考慮する際の有意な情報も得られると考えられる。

  • 高井 伸雄, 中川 尚郁, 重藤 迪子, 野本 真吾, 岸川 鉄啓, 堀田 淳, 川尻 峻三, 津野 靖士, 山中 浩明
    2022 年 75 巻 p. 98-104
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,冬期間に表層地盤に凍結が生じる地域における表面波探査結果および微動アレイ探査結果の季節変動を把握するため,寒冷地である北海道北見市に位置する北見工業大学構内の同一測線において表面波探査と同一アレイ配置において微動アレイ探査を通年で実施した。はじめに,非凍結期である10月の両者の位相速度を用いてS波速度構造を推定した。推定された構造は地表から1 mまでに100 m/s以下の軟弱な層が存在する。非凍結期の10月から厳冬期を経て翌10月までの約1,2月間隔で実施した探査の結果から,レイリー波の位相速度の変化が把握でき,10~50 Hzの周波数範囲において,凍結期の位相速度が,非凍結期の位相速度に比べて大きく,特に15 Hz以上で違いは明瞭であった。現地で連続観測している土中温度と体積含水率の結果から推定される表層の凍結時に,位相速度が上昇することが確認できた。実施した小半径の微動アレイ探査の結果においても,10 Hz以上でその変化は見られた。一方の10 Hz以下は季節による大きな変化は見られないが,得られた位相速度の標準偏差は凍結期で大きくなった。この微動アレイ探査による位相速度は,表面波探査結果と良く整合する。周波数毎の位相速度の季節変動は他の観測結果と対応している。

ケーススタディ
  • 坂下 晋, 岡田 真介, 今井 幹浩, 今泉 俊文, 岡田 篤正, 中村 教博, 福地 龍郎, 楮原 京子, 城森 明, 戸田 茂, 松多 ...
    2022 年 75 巻 p. 1-20
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/16
    ジャーナル 認証あり

     横ずれ活断層に対して深度100m以浅を対象としたS波極浅層反射法探査および比抵抗2次元探査を適用した。調査対象とした断層は1927年の北丹後地震の際に地震断層が生じた郷村断層帯と山田断層帯である。比抵抗2次元探査の解釈に利用するために,調査地周辺の露頭で比抵抗を測定した。その結果花崗岩の新鮮部,風化部と破砕部や粘土化した箇所との間には,10倍程度の比抵抗値の違いがあることを確認した。郷村断層帯の調査地では,S波極浅層反射法探査を適用した結果,反射断面による反射面群の不連続と傾斜がボーリング調査とトレンチ調査から推定した活断層の位置と変位センスに対応することが確認できた。また,比抵抗2次元探査を適用した結果,地表の活断層トレース付近に地下深部から浅部に連続する低比抵抗帯が認められた。この低比抵抗帯は断層運動に伴う岩盤の破砕帯に地下水が入り込んだ状態を示唆するものと考えた。山田断層帯における調査地でも,郷村断層帯の調査地と同様に,S波極浅層反射法探査による反射断面において,活断層位置と変位センスに対応する反射面群の傾斜と不連続が認められ,さらに比抵抗2次元探査による比抵抗断面において,地表の活断層トレース付近に地下深部から浅部に連続する低比抵抗帯が認められた。その低比抵抗帯はCSAMT探査結果との対比により,深度300m以深まで連続することが確認できた。また,断層露頭の走向と山田断層帯の走向から活断層の地表トレースがステップしている状況が推定される地点で,比抵抗2次元探査を複数の測線で実施した。その結果,地下の低比抵抗帯がほぼ直線状に分布することを確認し,地表と地下で活断層の分布が異なる可能性を示すことができた。

  • 小西 千里, 鈴木 晴彦, 濱田 俊介, 林 宏一
    2022 年 75 巻 p. 21-37
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/22
    ジャーナル 認証あり

     受振器を調査範囲内で格子状に配置し,利用可能な受振器のペア数と受振方位を十分に確保する3次元微動探査の適用が進んでいる。しかし,市街地や住宅地では受振器を設置する場所が制限されるため,格子状に密に受振器を配置することは難しい。そこで,アクセス可能な道路のみを利用し,直線,L字,T字,十字状に受振器を密に配置した小アレイと,格子状に受振器を配置した大アレイを組み合わせた不規則配置の3次元微動アレイ探査の適用を試みた。現場測定を実施した場所は,東日本大震災の際に液状化被害を受けた茨城県神栖市深芝地区の520m×640mの範囲である。小アレイの受振器間隔は5m,大アレイの受振器間隔は40mを基本とし,1展開につき45~50台の受振器を利用して測定した。両アレイによって得られた合計57展開の記録を用い,CMP-SPAC法により3次元S波速度構造を推定した。単独のアレイと両者を組み合わせたアレイの記録から求められたそれぞれの分散曲線を比較したところ,小アレイのみ,あるいは大アレイのみでは不足する解析可能な周波数範囲を,両者を組み合わせることで相互補完できていることがわかった。これより,広い周波数帯域で表面波の位相速度を決定でき,浅部から深部までのS波速度構造を推定することができることがわかった。得られた結果は,既存調査による道路被害分布や配水管被害点,噴砂の発生箇所,採掘跡地の分布と非常によく対応しており,その有用性が示された。今後,市街地や住宅地のように受振器を設置する場所が制限される場合でも,不規則配置での微動探査を行うことで,比較的に簡便に広域の地盤のS波速度構造を推定できると考えられる。また,得られた結果は,たとえば液状化評価に用いる地盤モデル作成に利用でき,防災ハザードマップの作成に寄与できると思われる。

技術報告
  • 小川 大輝, 濱 友紀, 浅森 浩一, 上田 匠
    2022 年 75 巻 p. 38-55
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/27
    ジャーナル 認証あり

     MT法では,時系列を周波数スペクトルに変換することで得られる見掛比抵抗・位相曲線から,地下の比抵抗構造を把握する。短時間フーリエ変換に代わる新しいスペクトル変換手法として,窓関数に相当するウェーブレットを周波数に応じて拡縮し,広帯域の非定常信号の処理に適する連続ウェーブレット変換(CWT)がよく知られている。しかし,ウェーブレットの形状を決定する基底関数やパラメータには任意性がある。そのため,不適切なCWTの計算設定により自然電磁場の真の応答から乖離したスペクトルの値が算出されてしまう可能性があるが,時系列から周波数スペクトルに変換する際の数値誤差がMT法データ処理結果に与える影響が詳細に検証された例は無い。本研究では,0.001 Hz-1 Hz程度の帯域を対象とし,スペクトル変換に伴う数値誤差を抑制する観点から,MT法データ処理におけるCWTの最適な計算設定を検討した。まず,ウェーブレットの時間・周波数分解能の変化が,見掛比抵抗・位相曲線に与える影響を検討した。そして,連続性が高く地下の情報を良く反映する見掛比抵抗・位相曲線を与えうる,ウェーブレットの基底関数とパラメータの範囲を検証した。その結果,基底に正弦波成分を含み6以上10未満の次数を持つ複素Morlet関数の使用をCWTの最適な計算設定として提案した。さらに,異なる種類の実データを用いた場合でも,提案する計算設定によるCWTを適用することで自然電磁場の真値を良く反映した見掛比抵抗・位相曲線が得られやすくなり,特に観測データのS/N比が低い場合にその優位性が示唆された。以上により,提案する計算設定は自然電磁場に対する時間・周波数両領域での分解能を良く両立でき,信頼性の高いMT応答を得るのに有効であることを確認した。

  • 白石 和也, 藤江 剛, 小平 秀一, 田中 聡, 川真田 桂, 内山 敬介
    2022 年 75 巻 p. 105-118
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル 認証あり

     沿岸域の海底火山の活動性を評価するために,海底火山下の構造や物性を効果的に調査する地震探査法の確立を目的に,数値シミュレーションによる合成地震探査データを用いたフィージビリティスタディを行った。本研究では,海域と陸域を横断する測線長30 kmの調査を想定し,沿岸域にある海底火山の過去の活動痕跡あるいは現在の活動可能性を示唆する仮想的な構造を持つ深度10 kmまでの地質モデルを対象とした。このモデルでは,地殻内にマグマ溜りを模した3つの低速度体を異なる深度に設定し,その他には側方に連続的な明瞭な反射面が存在せず,一般的な反射法速度解析で地殻内の速度分布を決定するのは難しい構造とした。まず,作成した地質モデルに対して走時および弾性波伝播の数値モデリングを行い,地震探査で得られる初動走時と波形記録を合成した。そして,これらの合成地震探査データを用いて,初動走時トモグラフィと波形インバージョンによる段階的な解析により,低速度体を含む速度構造を推定した。その後,推定された速度モデルを用いてリバースタイムマイグレーションを適用し,反射波による構造イメージングを行った。また,発振点と受振点のレイアウトおよび低速度体の形状の違いについて比較実験を行った。数値データを用いた解析の結果,段階的なインバージョン解析により深度約6 kmまでの2つの低速度体を示唆する変化を含む全体的な速度構造を適切に捉え,深度領域の反射波イメージングによって3つの低速度体の形状を良好に描像することができた。速度構造の推定には探査深度と分解能について今後に改善の余地があるものの,一般的な反射法速度解析が難しい地質構造の場合には,波形インバージョンによる速度推定とリバースタイムマイグレーションによる反射波イメージングを組み合わせることで,地下構造を可視化するアプローチが効果的であることを示した。併せて,効果的な調査を計画するために,想定される地質モデルにおける最適な観測レイアウトや解析手法の適用性などについて,数値シミュレーションを用いたフィージビリティスタディにより事前検討する事の重要性も示された。

feedback
Top