物理探査
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最新号
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解説
  • 天野 博
    2024 年 77 巻 p. 1-14
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル 認証あり

     Madagascarで提供されている各種の重合前深度マイグレーション(PreSDM)に係るソフトウェアを,岩塩が発達する複雑な地下構造を数値モデル化したSigsbee2aモデルについて,汎用パソコンを用いて適用し,同ソフトウェアの使用上の留意点をまとめると供に,各手法の比較検討を行った。現時点のMadagascarでは,ray theoryをベースとしたPreSDM及びone-way approachのwave theoryをベースとしたPreSDMを稼働させるスクリプトが公開されていることから,これらを使用した。また,今般,JOGMECが参加している「米国コロラド鉱山大学が主催するCWPコンソーシアム」に依頼して作成した「two-way approachのwave theoryをベースとしたReverse Time Migration(RTM)法に基づくSigsbee2aモデル用のスクリプト」を用いて同様の比較検討を行った。近年の傾向として,複雑な地下構造に対するイメージングについて,RTM法が最適とされるケースが多くなっているが,昨今のray theoryやone-way approachのwave theoryをベースとしたPreSDMの技術革新により,RTM法と比較して大きな遜色の無い結果が得られる場合があることを確認した。また,RTM法については,顕著な低周波数ノイズが発生することから,そうしたノイズの抑制に加えて,多大な計算時間の削減が望まれることも併せて確認した。なお,本稿に示した各PreSDMでは,真の速度を平滑化して作成された速度モデルを使用した。

ラピッドレター
  • 小川 大輝, 平塚 晋也, 浅森 浩一, 島田 耕史, 丹羽 正和
    2024 年 77 巻 p. 15-23
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル 認証あり

     高レベル放射性廃棄物の地層処分において,火山性熱水や非火山性のスラブ起源水の移動経路を地表からの調査を通じて把握することは,処分システムの閉じ込め機能喪失の回避に資する。九州地方の前弧域に位置する宮崎平野及びその周辺には長大な活断層等がほとんど分布せず地下水の顕著な湧出も知られていない。一方で,地震波速度構造や比抵抗構造から,フィリピン海スラブの脱水に起因する流体が上昇することで形成された流体賦存域の存在が地殻内において示唆される。また一部の地下水には,地下深部から上昇するスラブ起源水との関連性が報告されている。こうした九州前弧域の地殻内流体の流入経路となり得る地殻内のクラックの存在や性状について検討するため,当該地域の観測点で取得された震源の深さが20 km以浅の地震の波形に対し,S波スプリッティング解析を適用した。九州前孤域のうち内陸部においては,速いS波の振動方向(φ)が震源メカニズム解に基づく最大水平圧縮応力軸の方向と整合的であることから,S波偏向異方性が地殻応力場にしたがって配向したクラックの存在に主に起因していることが示唆される。一方で日向灘沿岸域では,地殻応力の方向とは異なる北北東-南南西~北東-南西方向または北北西-南南東~北西-南東方向のφの分布が明瞭に認められた。また,各震源と観測点間の平均的な異方性強度も算出した。その結果,霧島火山東方の観測点TAKAZAで取得された地震データからは5.6~7.0%の大きな異方性強度を示す地震波線が少数認められ,それらが火山性熱水の流入経路を反映している可能性が挙げられる。しかし日向灘沿岸域については,各観測点により取得された異方性強度は全て5%を下回ることから,震源から観測点まで連続した流体移動経路を示唆する波線は得られていないと判断される。

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