物理探査
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特集「無人機と物理探査の融合」
  • 小森 省吾
    2021 年 74 巻 p. 92
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/29
    ジャーナル 認証あり

     無人機は,陸・海・空の別を問わず,人の立ち入りが困難な領域での行動・作業等を可能にする重要なツールです。無人機と各種センサー・機械装置の融合により,様々な産業が無人化による作業効率化,コスト・リスク低減の恩恵を受けつつあります。特に近年,ドローンをはじめとする無人航空機市場は成長著しく,農業・防災・社会インフラ保全・採鉱分野等での無人航空機の活用が拡がっています。当学会においても,「無人機と物理探査の融合」には非常に高い関心を持っており,これまでに下記の取り組みを通じ,国内外の研究動向についての情報を共有・発信してまいりました:

     ○地球惑星科学連合大会 空中地球計測セッション(2014年~)

     ○和文誌「物理探査」:小特集「無人航空機を用いた空中計測」(2014年)

     ○英文誌「Exploration Geophysics」:Airborne Surveys and Monitoring of the Earth - Application to the Mitigation of Natural and Anthropogenic Hazards (2014年)

     ○ドローン物理探査研究会(2017年~)

     本誌において小特集が組まれて以来,7年が過ぎようとしています。その間,無人機による物理探査技術は,継続的な技術革新の下,データ取得の効率性・精度を向上させるとともに,学術面・経済面で人類の知的好奇心をそそる成果が続々生み出されています。

     本特集では,物理探査技術の無人化に関する要素技術の開発やその実装,無人機による探査技術がもたらす成果の現状と課題等,無人物理探査技術の最前線を概観することを目的としております。今回は,無人航空機(UAV)関連で4件(上田ほか,浅井,小山ほか,結城ほか),無人地上車両(UGV)関連で1件(佐竹ほか),自律型無人潜水機(AUV)関連で2件(笠谷,多良ほか)と,様々な無人機と物理探査技術の融合に関する話題を幅広く展開しています。本特集にご寄稿頂いた著者の方々に会誌編集委員会より厚く御礼申し上げると共に,読者の皆様におかれましては,物理探査技術の無人化,及びフィールド適用の推進のための一助になれば幸いです。

解説
  • 上田 匠, 光畑 裕司, 大熊 茂雄
    2021 年 74 巻 p. 93-114
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/29
    ジャーナル 認証あり

     無人(自律)または有人遠隔操縦による航空機,地上車両,海上・海中用移動体(いわゆるドローン)の中で,本稿では小型の無人航空機(UAV)を利用した物理探査について,歴史,分類,弾性波・磁気・電磁・放射能・地中レーダの各探査での研究開発事例を紹介する。特に磁気・電磁探査は小型UAVの機動性・可搬性を活かしたUAV(ドローン)磁気/電磁探査とも言える新しい探査手法の研究開発が急速に進んでいる。まず,受動的探査である磁気探査はスカラー/ベクトル型の2種類の受信器(磁力計)に大別し,UAVの適用事例を紹介する。またUAV電磁探査は能動/受動的測定いずれも存在するため,送受信器の搭載方法別に4種類に分けて研究開発,適用事例を説明する。小型UAVによる物理探査では搭載測定装置の重量制限が測定データ精度や可探深度に影響する。また,バッテリー容量は飛行時間・距離,探査効率の制約となる。さらに,マルチコプター型では回転翼駆動時の電磁ノイズ,探査装置の搭載・吊り下げ飛行での揺動ノイズも考慮する必要がある。そして,安全かつ効率的な探査には熟練操縦士や地上要員が不可欠である。一方でUAVは有人飛行に比較して柔軟性のある飛行が可能であり,高い水平分解能や地形に沿った探査の可能性が高まる。また,自然災害,放射性物質・有害物質暴露などの危険に対する作業従事者の安全性で極めて有利である。加えて,有人探査が困難な急峻地形,湿地帯,環境保全地域などでの探査の可能性も広がる。そのためにも,物理探査技術の小型化・高精度化だけでなく省電力駆動などが今後より重要になる。また,大量データの取得が一般的となり,ソフトウェアの面でも迅速な処理やマッピングなどの可視化,そして最終的には深度情報を含む逆解析の確立が求められる。そのような中で,今後はUAV物理探査技術が新たな物理探査手法の一つとなっていくことが期待される。

  • 小山 崇夫, 金子 隆之, 大湊 隆雄, 渡邉 篤志, 柳澤 孝寿, 本多 嘉明
    2021 年 74 巻 p. 115-122
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/29
    ジャーナル 認証あり

     無人飛翔体は被災するおそれのある危険地域へ人が入域することなく各種測定を実施することを可能とするため,今世紀に入ってから特に着目され,現在までに多様な火山観測項目に利用されている。その中で自律型無人ヘリコプターは,高い位置精度で事前にプログラミングした航路に沿ってフライトすることが可能になるため,たとえば対地高度や測線間隔を一定に保つなど理想的な測線を組むことが可能になることに加えて,時間間隔をおいて同一の測線に沿って繰り返し観測を実施することで同一地点での観測量の時間変化を捉えることが可能となる。そのため,火山体での空中磁気測量を自律型無人ヘリコプターを用いて実施することにより,複雑な地形上でも均質な空間解像度の磁場測定を可能にし,また,複数回繰り返し行うことで噴火準備過程などの火山活動に伴う磁場の長期的な時間変化を検出することができる。伊豆大島三原山では対地高度および測線間隔を平均50 mとした稠密な空中磁気測量を実施し,過去に噴出せず地下で固化したと考えられる高磁化の領域が中央火口丘周辺に確認された。霧島新燃岳では2011年噴火活動以降繰り返し空中磁気測量を実施することにより,火口内に滞留した溶岩が冷却帯磁により時間を追って磁化を獲得していく様子を明瞭に検出することができた。ここ数年は電動式マルチコプターの開発およびその利用がめざましく,今後も無人飛翔体による火山観測のさらなる発展が期待される。

  • 浅井 広美
    2021 年 74 巻 p. 123-130
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/29
    ジャーナル 認証あり

     産業用ドローン市場が急速に成長する中,国内外のドローンメーカーの開発競争は進み,実証実験レベルから実運用レベルへと飛行性能や補助的機能等の進化は止まることがない。ドローンの技術的課題は各分野での飛行仕様に合わせ違ってくるため,様々な研究開発と実証実験の積み重ねが重要である。物理探査分野における実証実験での技術開発および機体実装では,土砂災害発生時に地中に埋没した車両の早期発見を目指すための無人空中探査システムの開発に参画した。ドローンに吊り下げた電磁探査センサが自動飛行中に指定ルート上で安定的かつ高精度に探査を遂行するためには,同センサの重量のみならず,センサそのものの揺動や風による負荷を十分に許容可能なペイロードを有するドローンを使用すべきであること,高度の高精度把握に必要なレンジファインダーの角度の微調整が重要であること等が分かった。

     2022年度を目途に実現が期待される有人地帯における補助者なし目視外飛行に絡み,ドローンの技術的要素課題は,ハードウェア開発から飛行制御に関するソフトウェア開発へと競争が推移しつつある。特に自律飛行は,ドローン自身が状況を把握・学習し,独自にルートを生成し飛行に関して最適な選択や判断を行う事を可能にする点で最も重要な要素技術の1つである。自律制御では,GPS・ジャイロ,加速度計,コンパス,気圧および超音波等の各センサ情報を拡張型カルマンフィルタにより処理し,ドローンの位置,速度および角度の方向等の情報を正確に出力することで,安定した自律飛行プログラムが生成される。

     こうした機体制御に関する要素技術の開発と併せ,ドローンを取り巻く社会環境や航空法・電波法といった法制度の整備・改正,データ管理強化等が一体となり,今後もドローンの産業分野への利活用が一層進むものと期待される。

  • 笠谷 貴史
    2021 年 74 巻 p. 131-141
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/29
    ジャーナル 認証あり

     AUVは,あらかじめプログラムされた情報に基づいて自律制御による航走を行う無人ロボットで,近年著しい発展がある。AUVは無索であるため,機体の運動の自由度が極めて高い。そのため,ROVの様に母船の動揺の影響を全く受けず,母船と共に動く必要が無いので,海底近傍で広範囲のデータ取得を迅速に行う事が可能である。巡航型のAUVは,一般的に測深機などの音響機器が搭載され,海底の微地形や詳細な底質情報を得るのに用いられてきたが,これに物理探査機器を搭載して物理探査を行う事例が増えつつある。例えば,磁力計や電位計を搭載し,海底熱水鉱床域において鉱体に伴うと考えられる異常を検出した事例が報告されている。また,複数のAUVを連携させた新しい試みとして,電流送信と電位計測を行う2機のAUVを用いて,電気探査と自然電位探査データを同時に取得し,熱水賦存域と一致する負の自然電位異常域と低比抵抗域の検出に成功している。また,同じ自律制御であるが,水面上を航行するASVも様々な開発が行われており,AUVとASVを用いて海域における物理探査の無人化・省力化が進むことが期待される。本解説記事では、これらのロボットに関する概説と、国内外の適応事例について紹介する。

ケーススタディ
  • 結城 洋一, 新清 晃, 富森 さとし, 齋藤 全史郎, 城森 明, 城森 敦善
    2021 年 74 巻 p. 142-150
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/29
    ジャーナル 認証あり

     空中電磁探査法には,地上に送信源を設置して空中で測定する空中電磁探査法と,空中から電磁波を発信して空中で受診する探査法がある。マルチコプター(以下ドローン)を使った探査法は,地上に送信源を設置して探査する地表ソース型空中電磁探査法(D-GREATEM)が開発され実用化されている。空中から電磁波を発信する探査法も送信装置が小型軽量化され,送信装置と受信装置を曳航したドローンを2機同時に飛ばして測定するD-TEMが実用化された。D-TEMは1機のドローンで送信装置を曳航し,もう1機のドローンで受信装置を曳航して測定する。

     大規模地震等の災害時に地下水を利用するための地下水利用システムの開発を目的として,濃尾平野をモデルとした地下水の涵養源である扇状地砂礫,沖積粘性土,断層について構造と水理特性を把握するために,西濃地区でD-GREATEMとD-TEMを実施した。D-GREATAEMは山地から扇状地にいたる連続した2測線,D-TEMは扇状地で1測線を,多雨期(9~10月)と小雨期(12月)にそれぞれ実施した。飛行測線は,同じ位置をプログラム飛行により再現した。既往資料との比較から地質構造,地下水位等を推定した。各探査法には運用する上での課題や限界があるが,多雨期と少雨期という2時期の探査を行うことにより,地質モデル,断層,地下水位などの地盤構造を把握できることが確認された。

     ドローン空中電磁探査法は他の探査法に比べてデータ量が飛躍的に多く,地下の詳細な擬似3次元情報を簡便に取得できる探査法であり,ドローンの自動飛行によって同じ測定条件を再現できるため,時間変化を加えた4次元探査が可能である。今後,さまざまな分野の地質調査でドローン空中電磁探査技術が寄与することが期待できる。

  • 佐竹 海, 井手 健斗, 万沢 かりん, 上田 匠, 神宮司 元治, 横田 俊之, 小森 省吾
    2021 年 74 巻 p. 151-161
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/29
    ジャーナル 認証あり

     近年,電動マルチコプターを中心とした小型無人航空機など,いわゆる無人機・ドローン技術は,様々な分野において利用や研究開発が進められ,社会的に期待が高まっている。一方,地下空間の利用においては,地表から深度数メートルから数十メートルまでの浅層領域を対象とした問題が顕在化し,広範囲なエリアを非破壊で調査できる地下浅部探査の必要性が高まっている。このような背景を踏まえ,単一周波数・マルチコイル型電磁探査装置と無人地上車両(UGV)を組み合わせた新しい浅部探査用の電磁探査法システムの開発を進めている。本論文では,まず,本システムを用いたシステム構築の実現可能性を検証実験で確認し,実用を見据える品質のデータ取得を目指した。また,本システムの実行性と有効性を確認するために,茨城県古河市の宮戸川の堤防の一部を対象とした野外実験を実施し,測定結果から地下の見掛比抵抗断面図の作成を試みた。同一測線で往復2回の測定を実施し,再現性の高い見掛比抵抗断面図が得られたことで,本システムによる測定結果の信頼性を確認することが出来た。

技術報告
  • 多良 賢二, 塚原 均, 篠野 雅彦, 村上 文俊, 淺川 栄一
    2021 年 74 巻 p. 162-169
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/29
    ジャーナル 認証あり

     海底熱水鉱床やレアアース泥といった有用金属濃集帯は海洋鉱物資源としての利用が期待されている。反射法地震探査によって海底下の構造を把握することは,海洋鉱物資源の空間的な分布を把握するために重要な役割を果たす。海底下構造のイメージング分解能は振源周波数とデータ密度に左右される。従って,高周波振源を用い,海底近傍で稠密にデータ取得を行うことで対象物のスケールに見合った高分解能データの取得が可能となる。

     本研究では,深海において効率的なデータ取得を可能とする自律型無人潜水機(AUV)を用いた反射法地震探査システムの開発に向けた調査手法の検討を実施した。AUVによる運用を想定して開発された可搬式独立型ハイドロフォンケーブルの実海域における運用試験の結果,水中でのケーブル姿勢の補正を行うことで一般的な反射法データ処理手法による高分解能断面を得ることが可能であることを示した。また,可搬式独立型ハイドロフォンケーブルのAUV実装試験の結果,AUVのスラスターおよびハイドロフォンケーブルを起因とするシステムノイズが観測され,振源の選定に必要な情報を取得することができた。今後は実海域での運用試験によってAUVを用いた反射法地震探査システムの発展が期待される。

解説
  • 大熊 茂雄
    2021 年 74 巻 p. 65-78
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル 認証あり

     我が国における無人航空機を使用した磁気探査は,1970年代東北地方の地殻構造を明らかにするために実施された大気球を使用した磁気探査から始まった。気球を水平方向に人為的に移動するのは難しいことから,1990年代に入って飛行船を用いた磁気探査が考案され試験飛行に成功した。2000年代前半に入ると極地研究所によって南極での磁気探査のため,安価な模型飛行機や磁力計を使用した磁気探査装置(Ant-Plane)が開発された。2000年代中頃に入ると東大地震研究所によって自律型無人ヘリコプターに携帯型セシウム磁力計を組み合わせた探査装置が開発され,急峻な火山の調査に利用されてきた。2010年代に入るとマルチコプターの出現によりドローン磁気探査が急速に発展した。ドローンに搭載する磁力計として国内では全磁力を測定する光ポンピング磁力計の採用が多い。光ポンピング磁力計も重量がかさむ携帯型から最近では軽量なドローン用の磁力計が開発され,特に火山の調査で大きな進展を見せている。ドローン磁気探査により機動的,経済的調査が可能となったことから,以前よりも容易に繰り返し調査が可能となり,磁気異常の時間変化の抽出による火山活動の推定も行われるようになった。

     海外に目を向けると,日本以上にドローン磁気探査の適用範囲が広く,不発弾や廃抗井調査,資源探査,遺跡調査および埋め立て地や廃棄物処分場での環境調査にも利用されている。

     ドローン磁気探査で取得されたデータの処理には,産業技術総合研究所から,有人ヘリコプター磁気探査により取得されたデータの処理用に開発されたソフトウエアAMSS3を搭載したエキスパートシステムが公開され,Webブラウザを使用して処理・解析できるようになっている。

     ドローン磁気探査は,センサの取り付けに伴う機体の飛行安定性確保やモーターからの磁気ノイズの軽減など解決すべき問題もあるが,周辺技術の急速な発展もあり今後は地下浅部の有力な調査法としての発展が期待される。

論文
  • 宮腰 研, 西村 利光, 山田 浩二, 津野 靖士, 是永 将宏, 凌 甦群
    2021 年 74 巻 p. 17-29
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル 認証あり

     大阪平野北部と北摂山地の境界に位置する北摂地域は,北側に地溝帯である芋川低地,南側に丘陵地形の千里丘陵を有しており,複雑な地質構造を形成している。このような北摂地域において,芋川低地と千里丘陵の2地点で最大アレイ半径の異なる2種類(Rmax=約500m,1000m)の微動アレイ探査を実施し,得られた観測位相速度に基づいて各観測点の1次元S波速度構造モデルを推定した。ただし,微動アレイ探査で得られた観測位相速度が最大で2000m/s程度であったため,地震基盤相当(Vs=3000m/s前後)の上面深度の推定は困難であった。そこで,深部の地下構造のモデル化では微動アレイ探査地点付近で実施された探査仕様が異なる2つの反射法地震探査データを組み合わせて再解析した結果を用いた。すなわち,(1)微動アレイ探査による観測位相速度と再解析した反射法地震探査によるP波反射断面の両方を説明できるように,深さ約500m以浅の浅部地下構造は微動アレイ探査結果,それ以深の深部地下構造は再解析した反射法地震探査結果を用いて,両者を統合して地下速度構造をモデル化した(以下,「統合地下速度構造モデル」)。その結果,統合地下速度構造モデルの地震基盤相当の上面深度は芋川低地では約1000m,一方,千里丘陵では約600mであり,北摂地域において地震基盤相当の上面深度が急変することがわかった。また,(2)同じ北摂地域では(公財)鉄道総合技術研究所によって臨時地震観測が実施されており,各地点の地盤増幅特性の検討が進められているが,この検討に資する浅部の初期地下速度構造のモデル化を目的に,前述の微動アレイ探査と同時期に臨時地震観測点付近で極小微動アレイ探査(Rmax=約30m)を実施した。極小微動アレイ探査から,S波速度約500m/s以下の堆積層の層厚が芋川低地では200m程度であるのに対して,千里丘陵では約100m以下で,芋川低地と千里丘陵で表層の堆積層の厚さが大きく異なっていることがわかった。

  • 折田 まりな, 池田 達紀, 辻 健
    2021 年 74 巻 p. 79-91
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/22
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     現在,月の地下にあると考えられている水氷は将来の地球外での活動を行なう上で,資源として重要とされている。また,将来的には月面に基地を建設する計画もある。こうした中,月の地下のS波速度構造を求めることは,水資源の発見や地盤支持力の推定などに繋がり,重要である。また月探査では,ロケットに搭載できる物資の量や金銭的な問題から,探査機の重量や大きさに限度がある。そのため,探査システムの軽量化や小型化が求められている。本研究では,この課題を解決しつつ,月のS波速度構造を調べるシステムを検討した。具体的には,小型の地震計アレイを使用して微動を観測し,Centerless Circular Array(CCA)法で解析した場合のアレイ配置毎の可探深度を評価した。CCA法で求められる可探深度は,微動の「NS比(SN比の逆数)」,「アレイ半径」,「地震計の数」により影響を受ける。そこで,実際に月面で取得されたアポロ14号から17号の微動データを用いて,月の微動のNS比を推定し,月の環境下で小型アレイを使った場合を想定した評価を行なった。月面を伝播する表面波の周波数ごとの波数kobsが,NS比,アレイ半径,地震計の数を用いて求められる最小波数解析限界kminを上回る最小波数から長波長限界を求め,その波長の三分の一から可探深度を求めた。まず,地球の微動データにおいてこの方法の有効性を確認した後,CCA法を月探査で用いる際に考慮すべき点や課題を整理し,月での可探深度を推定することで,求めたい深度に対してどのようなアレイ配置や地震計の精度が必要かを考察した。例えば,求めたい深度が3 mの場合,精度の良い地震計を用いてノイズを抑える,もしくはノイズの小さい時間帯のデータを選んで解析すれば,五角形アレイでは0.3 m半径,三角形アレイでは0.5 m半径の小型アレイでも探査できることが分かった。このように,本研究で提案する評価方法は,将来の月探査プロジェクトで地震計アレイを設計する際に有効であると考えられる。

ラピッドレター
  • 楠本 成寿, 高橋 秀徳, 東中 基倫, 早川 裕弌
    2021 年 74 巻 p. 30-35
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/22
    ジャーナル 認証あり

     密度構造を間隙率と母岩-間隙流体の密度差に置き換えることで,ブーゲー異常を用いて間隙率を推定する手法を提案した。本手法を弥陀ヶ原火山地獄谷で観測されたブーゲー異常に適用し,火山性ガスや水に起因する低密度域は,周辺の母岩より0.06-0.35程度大きな間隙率になることが示された。地熱地帯での既存の坑井データに基づく有効間隙率分布や密度-間隙率の関係と比較を行ったところ,本手法で推定された間隙率は現実的な範囲にあることが示された。

  • 山中 浩明, 地元 孝輔, 津野 靖士, 是永 将宏, 三宅 弘恵, 吉見 雅行, 杉山 長志, 先名 重樹
    2021 年 74 巻 p. 49-56
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/27
    ジャーナル 認証あり

     静岡県東部に位置する富士川河口断層帯周辺地域での強震動特性を明らかにすることを目的として,同地域において臨時強震観測を実施し,強震記録を取得した。観測された記録から,周辺の硬質な地盤とのS波のスペクトル比を求め,その特徴を明らかにした。富士川河口部では,すべての周波数帯域でスペクトル比が大きい。とくに,0.2~0.8 Hzの周波数帯域の比は,富士川河口部の海岸沿いにある観測点で大きい。0.8~3 Hzの周波数帯域の比も河口部で大きな値を示すが,河口部の扇状地北端では小さい値の観測点もあり,空間的な変動が大きくなっている。一方,伊豆半島や駿河湾の西側の硬質な地盤上の強震観測点や山梨県の南側の観測点では,すべての周波数帯域でスペクトル比が小さい。各強震観測点において微動探査を実施し,表層地盤のS波速度モデルを推定した。深さ30 mまでの平均S波速度は,周波数0.8~3 Hzのスペクトル比と相関が高いことがわかった。

  • 笠谷 貴史, 岩本 久則, 川田 佳史
    2021 年 74 巻 p. 57-64
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/16
    ジャーナル 認証あり

     海底熱水鉱床のような海底地形の起伏が激しい地域において海底下浅部の比抵抗構造を簡便に把握するために,鉛直方向に電極を配置した電気探査装置の開発を行った。本装置の鉛直電極アレイを用いることで鉛直電場の計測による自然電位探査を行うことができる。鉱体の直上において鉛直電場の異常は自然電位の異常と同位相となるため,鉛直電場は海底熱水鉱床と関連する負の自然電位異常域を捉えやすいと考えられる。実海域での観測として,中部沖縄トラフに位置する伊是名海穴の熱水鉱床域で過去に取得された自然電位観測測線上で実施した例を紹介する。観測では複数の鉛直電場の異常域を検出することができた。これらの異常域の空間分布は,これまでの観測で得られている異常域の分布と極めて良い一致を示す。鉛直電極アレイに沿った海底からの距離が異なる6つの電極組み合わせで得られた電場を比較したところ,海底に近い組み合わせほど負の異常の振幅が大きく短波長の空間変動に富み,海底から離れた組み合わせほど振幅が小さく短波長の空間変動が減衰する傾向がみられた。鉛直電場の直接計測は,複雑なデータ処理を必要とせず,鉱体に伴う異常域の検出を簡便に行える方法である。

ケーススタディ
  • 西山 成哲, 鈴木 浩一, 田中 和広
    2021 年 74 巻 p. 1-16
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル 認証あり

     山口県山口市の湯田温泉は平野部に湧出するアルカリ性単純温泉であり,1日2,000tの豊富な湯量であるが,その温泉水の流動経路は明らかにされていない。本研究では,温泉水の水質分析とともに,湯田温泉周辺の地質試料の比抵抗測定,電磁探査法による比抵抗構造の把握,泉源ボーリングのコア観察,および数値シミュレーションを実施し,温泉水の流動経路を検討した。電磁探査の結果,基盤岩とそれを覆う堆積層との比抵抗のコントラストが確認でき,湯田温泉地域を横断する複数の断層に挟まれた領域において基盤岩上面が陥没している様子が認められた。しかし,温泉水の流動経路を示す比抵抗構造を得ることはできなかった。温泉水の電気伝導度(EC)を測定したところ,100mS/m程度と周囲の岩盤地下水と比較して一桁程度高い値を示した。岩石試料の比抵抗測定試験より,温泉水と岩盤地下水が,それぞれ基盤岩を構成する岩石の間隙水として存在した場合,温泉水を間隙水とした岩石試料の比抵抗が岩盤地下水を間隙水とした岩石試料の比抵抗と比較して1/2程度になることが分かった。泉源ボーリングのコア観察の結果,コアの大部分を硬質な砂質片岩および泥質片岩が占めており,割れ目の頻度は1.25本/mと極めて低い。一方,幅約0.6mの石英斑岩が高角度で貫入する部分では割れ目が発達していることから,石英斑岩などの貫入岩中の割れ目が温泉水の流動経路として機能している可能性がある。これらの結果を踏まえ,湯田温泉の地質モデルを構築し数値シミュレーションを行ったところ,流動経路と考えられる貫入岩の割れ目卓越部の幅が100m以下の場合,比抵抗探査による検出は困難と考えられた。以上より,湯田温泉の温泉水の流動経路の幅は100m以下であると考えられる。

  • 田中 勇希, 岡本 京祐, 浅沼 宏, 岡部 高志, 阿部 泰行, 一戸 孝之
    2021 年 74 巻 p. 36-46
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/18
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     国内の地熱発電所において,蒸気の採取法の最適化・安定化を実現する技術の開発が検討されている。この手段の一つとして,EGS(Enhanced/Engineered Geothermal System)技術の一種である涵養注水が考えられる。これは地熱発電で用いる生産井と還元井に加えて,河川水等を人為的に地熱貯留層へ注水する涵養井を利用して蒸気量の回復を試みる技術である。奥会津地熱地域(福島県柳津町)では,2015年から,独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の「地熱貯留層評価・管理技術」プロジェクトの一環として,蒸気生産量安定化手法の検討のため,涵養注水試験が行われている。国立研究開発法人産業技術総合研究所では観測地域で発生する微小地震の観測・解析を行っており,この結果から地下状況や,貯留層に対する涵養注水の効果の的確かつ速やかな把握を行った。本研究では,地表面および坑井内に設置した地震計で取得される波形データをもとに微小地震の発生数や震源分布の速報解析を実施し,その結果から注水の挙動監視を行った。

     2018年に1回,2019年から2020年にかけて2回の涵養注水試験が行われ,それぞれで微小地震モニタリングを行った。2018年の注水試験では注水前と比較して注水期間中の微小地震の発生数の増加は見られず,坑井近傍の微小地震も注水前に比べほとんど増加しなかった。2019年1回目の注水試験では注水前と比較して注水期間中に微小地震の増加が見られ,2018年注水試験時より深部での微小地震の発生も見られた。2019年2回目の注水試験では微小地震の発生数は注水前と比較して増加しなかったが,2019年1回目と同様に深部での微小地震の発生が見られた。これら微小地震モニタリングの結果から,2018年の注水試験では注水と微小地震の関連性は判然とせず,2019年の2回の注水試験では注水がより地下深くに行き渡っていることが示唆された。

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