物理探査
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論文
  • 山本 英和, 金崎 慶次, 齊藤 剛
    2019 年 72 巻 p. 25-33
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/09
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    微動アレイ探査に,Rayleigh波だけでなくLove波も利用するために,斎藤(2007)の水平動へ拡張された周波数波数解析(FK)法の有効性を検証する。FK法は観測点の配置が任意の形状でよいため実務的に有効であると考えられる。また,このFK法は東西,南北座標からradial, transverse座標への回転が必要がない利点も持つ。本研究では,半径を3倍ごとに変化させた10点三重三角形アレイを用いて岩手大学理工学部グラウンドで微動観測を実施し,FK法と,空間自己相関(SPAC)法を用い,Love波の位相速度推定を試みた。両手法を比較した結果,FK法ではSPAC法から得られた位相速度とほぼ同程度の位相速度が得られ,transverse成分とradial成分をそれぞれ識別できた。FK法によるradial成分の解析結果で,高周波数帯において,基本モードの理論Rayleigh波よりも速い高次モードの可能性が高い位相速度が検出された。空間自己相関法により算出されたLove波パワー比は,岩手大学理工学部グラウンドにおいて40 %から60 %を示した。Love波,Rayleigh波が3 Hzから13 Hzの周波数範囲で,同程度の割合で存在しているため,Love波,Rayleigh波の両方の推定に成功したと考えられる。

  • 本多 亮, 柳澤 孝一, 田中 俊行, 浅井 康広
    2019 年 72 巻 p. 34-48
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/15
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    地下水のモニタリングは基本的には水圧観測孔で観測される様々な情報に基づくが,観測孔で得られた水圧の情報からは実際に地下水がどのように分布しているかを知ることは難しい。岐阜県東濃地域においては10年以上の長期的なタイムスケールで80m以上の地下水位の低下が観測されており,ほぼ同時期に3観測点での絶対重力観測が行われている。我々は重力観測点近傍で発生した観測重力値に影響を与えそうないくつかの事象についてモデリングによる補正を行った。そして東濃地域の多数の水圧観測孔で観測された水圧変化を参照しつつ既知の水理地質構造中での地下水流動を仮定し,それから推定できる重力変化予測値を算出した。その結果、予測値が約3μGal(1μGal = 1x10-8 m/s2)程度の範囲内で観測値と一致することを示した。研究対象地域内全体での長期的な水位低下時の地下水流動は重力データを利用することで説明できたと考えられる。重力ポテンシャル量を断続的に観測し時間変化をモニタリングすることは地下水流動を直接捉えることになり,地下水分布の変化を把握する上で極めて有用であると考えられる。

  • 鈴木 恭平, 佐藤 浩章
    2019 年 72 巻 p. 49-67
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/07
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    本研究では、地震波干渉法による共通仮想震源によるグリーン関数を用いた位相速度推定法の適用性を検討するために,若狭湾地域の16 地点で連続観測を実施し,相互相関関数のシグナルが大きい正側およびシグナルが小さい負側のそれぞれを用いた場合について,位相速度を推定しその結果を比較した。共通仮想震源から観測点への伝播に対応する側の相互相関関数のシグナルが明瞭な場合,共通仮想震源によるグリーン関数から安定して位相速度を推定することが可能であり,自然地震を用いた場合の位相速度とも調和的であった。一方,共通仮想震源からの伝播に対応する側の相互相関関数のシグナルが不明瞭な場合,位相速度の推定ができなかった。そこで,遅れ時間の正負を反転させた相互相関関数を共通仮想震源によるグリーン関数として用いた結果,良好に位相速度を推定できることがわかった。さらに,本研究のように相互相関関数が正負非対称となる場合には,シグナルが強くなる方向に観測点を配置することでも,位相速度推定が可能となることを示した。

  • 磯 真一郎, 石塚 師也, 尾西 恭亮, 松岡 俊文
    2019 年 72 巻 p. 68-77
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/07
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    地中レーダの解析は,地下構造の比誘電率の違いによる生じる特徴的な反射波の形状に対して,熟練技術者が目視により走時断面画像上で解釈することで行われている。データ取得システムの技術の発達により,近年,大量の地中レーダデータが取得されるようになり,解釈すべきデータが著しく増大している。このため,解釈の自動化,省力化が期待されている。機械学習の一つである深層学習(ディープラーニング)による物体認識能力は近年大幅に向上し,多くの学習モデル・アーキテクチャが提唱され研究が進んでいる。とくに,AlexNetは生体の視覚野を模した畳み込みニューラルネットワーク(CNN: Convolution Neural Network)などの手法を用い,深層学習精度向上の端緒を開いた標準的な学習モデルであり,多くの物体認識に適用が行われている。GPRに関する機械学習ではグレースケール画像を用いるのが一般的ではあるが,人間の目視による場合と同様にカラー画像を用いることで情報の欠落が少なく,より効果的な解釈結果を求められると考えられる。本論文では,AlexNetにカラー画像GPRデータを適応した結果を検証しカラー表示化した画像を学習した場合F値で0.9819,精度で0.9875と濃淡のみのグレースケール画像よりも,良い結果を得た。さらに,地中レーダのデータ解釈に最適な学習モデルを作成するための考察を行った。また,学習におけるモデル内部の出力などを検討し,今後詳細な判別をするための学習モデルの設計について考察を行った。

  • 長嶋 史明, 川瀬 博
    2019 年 72 巻 p. 78-100
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/11
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    微動や地震動を用いて地盤構造を同定する際,P波速度(Vp)はS波速度(Vs)と比べその拘束力は弱いものの重要なパラメータとなる。そこで日本での地盤探査情報を反映したP波速度構造を得ることを目的に,日本全国のK-NETおよびKiK-netにおけるPS検層データを用いてVpとVsの相関や深さ方向分布を調べた。Vs = 1000 m/s以下のときVpは500 m/sと1500 m/sの2つの領域に集中して存在しており,それぞれ不飽和土と飽和土の特性が表れたものと思われる。またVpは平均的に深さ4 m以浅の地盤浅部では500 m/s程度の不飽和土,それ以深では1500 m/s程度の飽和土に相当する傾向が見られた。K-NETでは土質分類別での検討も行ったが,土質ごとに存在する深さに傾向がありその影響が見えるものの,土質間でVs-Vp分布や深さ方向分布に大きな違いは見られなかった。最後にVpの分布の傾向から深さ4 mを境として分割した2つのデータセットを考え,それぞれに対しVs = 200 m/sごとの幾何平均と標準偏差を求め,それらの直線近似による回帰式を求めることで幅広い速度域で適用可能なS波速度からP波速度への換算式を求めた。その結果,深さによるVpの分布傾向の違いを反映した換算式が得られ,観測記録のばらつきをよく説明する標準偏差の回帰式が得られた。また,土の飽和・不飽和の影響は地層のVpが水のVp以下となるか否かに表れると考え,実測データに基づきVp = 1200 m/sをその境界と考え,Vpの大小でデータセットを分割しそれらの回帰式を求めた。Vp>1200 m/sのVp換算式は深さ4 m以深のVp換算式とほぼ同じものが得られ,地層のVpが水のVpより低速の不飽和土に関して評価可能なものとしてVp≦1200 m/sのVp換算式が得られた。

  • 原 敏昭, 磯 真一郎, 斎藤 章
    2019 年 72 巻 p. 111-121
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
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    トンネル工事に伴う物理探査では屈折法弾性波探査が通常実施されている。その探査深度は深部探査が期待できるダイナマイトを震源に用いる場合でも200 m程度である。一方,資源探査に利用される時間領域電磁探査法(TDEM法)は数100 m以上の探査深度を有するとされている。そこで,土被りの大きなトンネル調査へのTDEM法の適用性を検討するために,土被りが200 mを超える2本のトンネルに対して工事前に実施された屈折法弾性波探査とTDEM法の結果を,実際のトンネル掘削結果と比較した。また,膨潤性地山ではCEC値が上昇することにより比抵抗値が小さくなると考えられることから,TDEM法の低比抵抗層に対する解析の信頼性について,実際のトンネル調査及び数値シミュレーションで検証した。その結果,屈折法弾性波探査では探査困難な土被り200 mを超えるトンネルに対して,TDEM法は地層境界の抽出に有効であり,かつ低比抵抗層の下にある,さらに低比抵抗を示す高い膨潤性の地層を識別できることが判明した。

  • 石須 慶一, Chatchai Vachiratienchai, Weerachai Siripunvaraporn, 後藤 忠徳, 笠谷 ...
    2019 年 72 巻 p. 122-138
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
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    熱水活動に伴って形成される海底熱水鉱床は,新たな金属資源として注目されている。熱水鉱床は低比抵抗を示すため,海底熱水活動及び海底熱水鉱床の分布調査に海底電気・電磁探査が用いられてきた。しかしながら,これまでに熱水地域で行われた海底電気・電磁探査は簡易的なものに限られており,海底下の広域比抵抗断面の可視化方法は確立されていない。そこで本研究では,深海曳航式電気探査に注目し,熱水地域における深海曳航式電気探査の有効性を評価した。具体的には,有限差分法とOccam's逆解析法を用いた2次元逆解析コードを作成し,数値シミュレーションに基づいて有効性の検討を行った。

    深海曳航式電気探査法の有効性の評価のため,低比抵抗異常体を含む仮想的な地下構造モデルを用意し,曳航高度や,異常体の深度や厚さを変化させて本逆解析法を適用した。その結果,曳航ケーブル長が180 m程度,曳航高度が0~15 m程度であり,また海底下40 m以内に厚さ20 m以上の異常体がある場合に,本逆解析により異常体を検出・再現できることが明らかとなった。このとき,曳航高度やケーブルの傾き,海水の比抵抗にはそれぞれ観測誤差が含まれるため,それらの誤差が逆解析結果にあたえる影響も調査した。その結果,逆解析結果に偽像が現れる場合の条件や,推定された異常体が真のモデルに比べてどの程度歪むのかが明らかとなった。更に,海底地形を含んだモデルに対して本手法を適用した結果,海底下近く存在する異常体は,真のモデルに近い分布形態で再現できるが,海底面下深くに埋没している異常体の再現は難しいことも明らかとなった。以上の数値計算から,本深海曳航式電気探査(曳航ケーブル長180 m)の2次元逆解析法は,海底下40 m程度より浅い部分に存在する低比抵抗異常体を探査する際に有効であることが示された。従って,本手法は,海底熱水鉱床などの海底下浅部に分布する資源の広域探査に適した手法と言える。

  • 清水 智明, 小田 義也
    2019 年 72 巻 p. 139-154
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/10
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    薬液注入の浸透過程を監視できれば,注入圧,注入量を適宜に変更でき,地盤改良の品質向上を期待できる。比抵抗トモグラフィはこれを実現するための有力な手法である。しかし,同法における従来の解析法は時間ステップでの計測データを個別に解いて比抵抗分布を推定するものであり,注入途中すなわち測定中の比抵抗分布の変化を考慮できないために常時の監視は困難であった。そこで本研究では,これを考慮できるような新しい解析法を検討した。具体的には,①注入中の全時間ステップを一体の観測方程式で解き,②求めるパラメータを比抵抗の時間変化量とし,③1つの時間ステップの中での測定時刻の違いを考慮して計算するという,3つの点を考慮した。

    上記3点より構成される提案解析法の性能を検証するために,塩水の注入を模擬した数値実験を行い,濃度分布の経時変化および比抵抗トモグラフィのための入力データを順解析により取得した。さらに,別途実施した室内要素実験から定めた塩水濃度と比抵抗の関係を用いて,数値実験における比抵抗分布の経時変化を求めた。この分布を正解とし,上記入力データについて,従来解析法と提案解析法の両方で逆解析を行ったところ,提案解析法は従来解析法よりも正解に近い結果となり,高い精度を期待できることが明らかになった。次に,提案解析法の上記3つの特徴について3つ全てが揃って初めて有効に機能することを確認した。さらに,従来解析法だけでなく,カルマンフィルタ等の時系列問題に特化した既往の解析法とも性能比較を行った結果,提案解析法は最も高精度となる可能性の高い解析法であることが分かった。最後にそれまでの議論を踏まえたリアルタイムモニタリングの実用上の手順を示した。本研究により,薬液注入途中における薬液浸透範囲の把握が可能となり,補足注入の必要な位置を施工中に明確化できるとともに,次ステップの注入仕様を合理化でき,改良性能の向上とコストダウンを期待できることが示された。

ラピッドレター
  • 楠本 成寿
    2019 年 72 巻 p. 1-7
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/12
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    本論文では,地下に特定のモデルを仮定せず,地表の鉛直変位データから地下の力源構造を推定するインバージョン手法を提案した。これは,設定したターゲット荷重の分布面積を最小化することにより,地表の鉛直変位場を説明する力源構造を推定する方法であり,荷重分布を明示することが出来る。弥陀ヶ原火山地獄谷内で観測された鉛直変位に本手法を適用したところ,推定された変動源の深度は,AMT(Audio-frequency Magneto Telluric)探査により見出されたキャップ・ロック構造上面深度,さらに過去の地殻変動から推定された力源の深度と矛盾しないことが分かった。

  • 山本 英和, 石川 拓弥, 齊藤 剛
    2019 年 72 巻 p. 8-16
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/12
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    岩手県久慈市の海岸平野部において極小微動アレイ観測を実施し,微動のH/Vおよび位相速度を用いて,地下地盤浅部S波速度構造の推定を試みた。地震動増幅特性を評価するために,30m平均S波速度を用いて工学的基盤からの最大速度地盤増幅率を算出し,S波速度構造モデルを用いてSH波の周波数毎の増幅率を算出した。その結果を以下に示す。地下構造モデルを推定した結果,表層S波速度が約100m/sと非常に遅い堆積層が分布していることが明らかになった。南北に延びる3つの測線AA’,測線BB’,測線CC’に沿って探査した結果,北部と南部では基盤深度が浅く,中央部では基盤深度が深く,かつ,西から東にかけて基盤が次第に深くなるお椀型の構造であることがわかった。推定したS波速度構造モデルから平均S波速度を算定し,経験式から地盤増幅率を算定してJ-SHISの地盤増幅率と比較した結果,一部地域で観測から得られる値が高いことが明らかとなった。SH波の鉛直入射の増幅特性を求めた結果,1Hzの周波数では最大6倍の増幅率を示す。

  • 山本 英和, 佐々木 恭輔, 齊藤 剛
    2019 年 72 巻 p. 17-24
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/12
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    短周期微動を利用しての浅部2次元S波速度構造探査の新たな手法開発を目的とし,岩手大学理工学部グラウンドにおいて11点三成分リニアアレイ微動観測を実施し,上下(UD),radial(NS),transverse(EW)方向の相互相関関数を重合する地震波干渉法による解析を行った。リニアアレイで微動計を等間隔に配置した結果,重合相互相関関数は,NS,EW,UD全ての方向で波動の伝播を確認することができた。マルチプルフィルタ解析により推定した群速度は,特にNS方向でSN比が低く,妥当な推定が困難であった。それに対して,EW,UD方向では,SN比が10より高い周波数範囲が広いことが示された。また,既存モデルから計算したものと比較しても近い値をとっていたことから,妥当な群速度の推定ができたと考えられる。全組み合わせで得られた群速度を2次元表示した結果,高周波数では場所によって群速度が若干変化していることが明らかになった。

ケーススタディ
  • 山本 英和, 朝田 航, 齊藤 剛
    2019 年 72 巻 p. 101-110
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/11
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    東北地方太平洋沖地震津波で甚大な被害が発生した岩手県陸前高田市において地震時の揺れやすさを把握するためのS波速度構造探査を目的として微動観測を実施した。78地点の単点微動観測によって微動のH/Vのピーク周期から基盤の深さ分布を面的に把握し,14地点の極小アレイ微動観測によって表層地盤のS波速度分布を把握した。その結果,平野部の北から南にかけてH/Vピーク周期が長くなり,東から西にかけてH/Vピーク周期が長くなり,気仙川を越えると急に短くなっていた。よって,北から南にかけては岩盤が次第に深くなり,西から東にかけては中央付近の基盤が深く両端が浅い,お椀型の構造をしていると推測される。この結果は千田ほか(1984)の地質断面図と類似していた。約40 m程度の基盤深度を示す場所では,大きなサイズの微動アレイと極小微動アレイの観測結果を併用すれば,千田ほか(1984)の地質断面図と整合した結果を示す。近傍の極小アレイ観測から求めた構造を参照して単点観測のH/Vに基づいてS波速度構造を補完した。単点観測とアレイ観測を併用した微動探査から得られる2次元浅部S波速度構造も千田ほか(1984)の地質断面図を比較しても類似する結果となった。

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