環境科学会誌
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実走行時の自動車からのベンゼン排出係数の推定と道路近傍建物形状の簡略化による濃度推定の可能性
石 世昆近藤 明加賀 昭和井上 義雄大西 潤治
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2006 年 19 巻 2 号 p. 81-88

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抄録
ベンゼンは1997年に環境基準が設定されたが,一部地域では未だその基準を達成できていない。自動車からの排気ガスがベンゼンの主要発生源と考えられているが,実際に走行している自動車からの排出係数については正確に評価されていない。そこで,窒素酸化物濃度とベンゼン濃度が通年にわたって測定されている国設四条畷自動車排出ガス測定局データを用いて,道路近傍ではこれらの汚染物質の排出量比が,その排出量に起因する濃度比と等しくなると仮定し,現実的な走行条件の自動車からのベンゼン排出係数を推定した。その結果,ガソリン車とディーゼル車のベンゼン排出係数として,それぞれ12.3mg/km/台と13.0mg/km/台の値を得た。また,道路沿道の建物形状を、道路沿道両側の平均建物高さと道路沿道に隣接しない平均建物高さ,および建物隙間長さで近似し,熱・流体解析ソフトウェアSTREAMを用いて四条畷自動車排出ガス測定局周辺のベンゼン濃度を推定した。その結果,比較的良好に道路近傍のベンゼン濃度を再現できることが示された。同様の手法で,道路上に阪神高速道路の高架がある打出自動車排出ガス測定局周辺のベンゼン濃度も推定した。この結果も観測値を概ね再現しており,ここで提案した簡易建物形状モデルを用いる拡散計算で道路近傍のベンゼン濃度を推定できることが示唆された。
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