Skin Cancer
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内科医師に生じた手の職業性放射線癌の1例
田中 英一郎高塚 純子竹之内 辰也
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2004 年 19 巻 3 号 p. 336-339

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抄録

放射線を扱う医療従事者に生じた有棘細胞癌の1例を経験した。87歳男。砒素暴露歴なし。元内科医師。現役時代X線を用いた検査の際, 無防備に両手を放射線に暴露していた。初診の10年前より両手指に角化性病変と潰瘍を形成し, その後右中指の潰瘍が急速に隆起して腫瘤を形成。慢性放射線皮膚炎から発生した有棘細胞癌と診断し, 局麻下にPIP関節離断術を施行した。角化を伴う異型性の強い腫瘍細胞の骨まで達する浸潤性増殖が認められた。6カ月後に左中指に再び腫瘍が発生したため, 前回と同様に切断を行った。現在, 残存する角化性丘疹に対してブレオマイシン, 5-FUの外用を行い経過観察中である。
過去に使用されたX線は低エネルギーのため皮膚吸収率が高く, 加えて医療従事者の放射線障害への関心度は極めて低かったため, 高齢の医療従事者に対しては, 慢性放射線皮膚炎およびそこから続発する悪性腫瘍に対して十分な注意が必要であると考えた。

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© 日本皮膚悪性腫瘍学会
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