抄録
症例は68歳,男性.1986年,腎細胞癌で右腎摘出術,術後12年目に肺転移に対し右上葉切除術が施行されている.その後,インターフェロン治療を行っていたが,2004年頃より膵体部に嚢胞性腫瘤を認め,徐々に増大したため2009年2月,精査入院となった.CTでは膵体部に造影効果を伴う充実成分と嚢胞成分が混在する腫瘤を認めた.嚢胞変性を生じた膵内分泌腫瘍もしくは腎癌膵転移を疑い,脾温存膵体尾部切除術を行った.病理組織検査ではclear cell typeの腎癌の所見であった.転移性膵腫瘍は腎癌原発の切除報告例が最も多く比較的良好な成績を得ている.自験例においても腎癌の既往から膵転移は鑑別に挙がったが,嚢胞成分があったことから術前に確定診断に至らなかった.自験例は腎癌膵転移の画像的自然経過が観察されており,興味深い症例であったため報告する.