膵臓
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特集 膵疾患の病理学的診断の現状と課題
  • 古川 徹, 佐藤 賢一
    2020 年 35 巻 4 号 p. 241
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
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  • 福嶋 敬宜
    2020 年 35 巻 4 号 p. 242-249
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル 認証あり

    WHOの消化器腫瘍分類第5版が2019年に改訂されたが,膵腫瘍の90%以上を占める膵管癌については,浸潤性微小乳頭状癌が亜型に加えられ,未分化癌が再整理された以外は大きな変更はない.しかし,病理学的役割は,当然その腫瘍分類の整理にとどまるものではなく,膵管癌にもいくつもの側面があり,病理学的研究も臨床~基礎まで多方向性に進め統合させていく必要がある.本稿では,膵管癌について病理学的視点から,その病理像,亜型,前駆病変,癌間質の特徴などについて概説し,また日常診療に直結するEUS-FNA,TNM分類そして術前治療後の評価などについても現状と今後の課題について述べる.

  • 山口 浩
    2020 年 35 巻 4 号 p. 250-257
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
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    膵管内腫瘍は,現行分類基準では粘液産生に富むintraductal papillary mucinous neoplasm(IPMN)と,粘液産生に乏しいintraductal tubulopapillary neoplasm(ITPN)の2腫瘍に大別される.IPMNは病理組織学的にlow grade(腺腫)~high grade(癌)の幅広い異型度を示す.さらには,gastric type,intestinal type,pancreatobiliary type,oncocytic typeの4者への亜型分類がなされる.ITPNは,病変全体が粘液産生に乏しい高度異型上皮によって構成される膵管内腫瘍で,low grade(腺腫)に相当する病変は存在しない.両者の鑑別に関しては,それぞれの肉眼的・組織学的特徴や免疫染色態度,分子病理学的特徴などの正確な理解が重要である.

  • 野呂瀬 朋子, 大池 信之, 佐々木 恵子, 杉野 隆
    2020 年 35 巻 4 号 p. 258-265
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
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    漿液性嚢胞腫瘍(serous cystic neoplasm:SCN),粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm:MCN),充実性偽乳頭状腫瘍(solid pseudopapillary neoplasm:SPN)の典型例の臨床病理像は確立しているが,実臨床の診断や治療に関わるいくつかの病理学的課題がある.SCNは大多数が良性の経過を示すが,切除材料を詳細に観察すると,局所進展所見がみられることに留意したい.MCNでは,卵巣様間質が不明瞭な場合の対応の仕方,また,経過観察の基準や手術適応の病態の検討が望まれる.SPNでは転移例や高度悪性転化例の検討が望まれる.

  • 笠島 敦子
    2020 年 35 巻 4 号 p. 266-271
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
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    膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine neoplasm:PanNEN)は,画像診断や生検診断進歩に伴い,過去30年で罹患数が5倍以上増加し,種々の側面における腫瘍の多様性が認識されるようになった.PanNENの病理診断は,組織学的分化度により,高分化型(neuroendocrine tumor:NET)と低分化型(neuroendocrine carcinoma:NEC)に分類され,両者は腫瘍の増殖速度,ホルモン分泌能,遺伝性腫瘍症候群との関連,薬剤感受性の相違から全く異なる治療法が選択される.近年の網羅的遺伝子学解析によりNETの分子病理学的特性が明らかとなった.一方で,細胞起源や内分泌学的活性の多様性について未だ十分な理解が得られていない.また頻度の低い遺伝性腫瘍症候群の臨床病理学的特性やNECの分子病理学的特性の理解は十分に進んでいない.

  • 能登原 憲司
    2020 年 35 巻 4 号 p. 272-279
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
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    1型自己免疫性膵炎(AIP)の生検診断においては,膵辺縁にみられる肥厚性病変と小葉病変の組織像を理解することが重要である.膵辺縁の肥厚性病変は脂肪組織の炎症と考えられる.花筵状線維化が好発するが全例で認められるわけではなく,単なる炎症細胞浸潤や線維化からなることもある.AIPでは小葉の輪郭が保たれるが,小葉内の腺房細胞は著減し,炎症細胞やacinar-ductal metaplasia(ADM)を含む組織で置換される.花筵状線維化を伴うこともあり,小葉は腫大しやすい.また一部に,萎縮し線維化した小葉も混在する.ADMと膵癌の鑑別は重要で,ADMの概念を認識しておく必要がある.閉塞性静脈炎,神経周囲炎,動脈周囲炎もAIPの特徴的な所見である.IgG4陽性形質細胞は多数(>10/高倍率視野)同定され,診断の際には病変内でのびまん性分布,IgG4/IgG陽性細胞比高値(>40%)も参考になる.

  • 成澤 裕子, 松田 陽子
    2020 年 35 巻 4 号 p. 280-292
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
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    術前放射線化学療法(ネオアジュバント療法)は,膵癌の原発巣の縮小や遠隔転移巣の抑制によって,術後の予後を改善することが報告され,近年,ネオアジュバント療法の対象となる膵癌症例が増加している.ネオアジュバント療法後の膵切除検体の病理標本は,術前治療後の癌細胞の残存の程度や,癌細胞の状態(壊死や生存した癌細胞の割合),線維化等の病理組織学的な変化に関する正確な情報を有しているため,術前治療効果の評価や,術後の治療方針決定,術後の予後予測における有効活用に期待が集まっている.さらに,遺伝子,タンパク質レベルの分子病理学的研究への活用も進んでいる.しかし現状では,複数の病理組織学的な治療効果判定方法が使用されており,客観性,再現性,予後予測能において優れた方法が確立されていないことが大きな課題となっている.

  • 平林 健一, 才荷 翼, 加戸 伸明, 伊藤 仁, 中村 直哉
    2020 年 35 巻 4 号 p. 293-301
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
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    超音波内視鏡下穿刺吸引法(endoscopic ultrasound guided fine needle aspiration:EUS-FNA)の普及と発展により膵腫瘍の生検・細胞診を取り巻く状況は大きく変化している.膵管病変が主な対象疾患であった膵液・膵管擦過細胞診と比較し,EUS-FNA検体では膵管とは関連のない充実性疾患も対象となり診断の幅は広がった.しかしながら早期膵癌の診断や膵管病変の診断には膵液・膵管擦過細胞診がいまだ有用である.また,連続膵液細胞診等により診断精度の向上が試みられている.EUS-FNA検体では,膵液・膵管擦過細胞診では困難であった免疫組織化学や遺伝子検索がより簡便になり,良悪や組織型の鑑別の補助として有用である.しかしながら,その診断精度は採取量に大きく依存し,迅速細胞診等により検体不適正率の減少や採取量を向上させる工夫が必要であろう.

  • 岡田 哲弘, 水上 裕輔, 林 明宏, 河端 秀賢, 佐藤 裕基, 河本 徹, 後藤 拓磨, 谷上 賢瑞, 小野 裕介, 唐崎 秀則, 奥村 ...
    2020 年 35 巻 4 号 p. 302-312
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
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    膵癌のゲノム解析では,4つの遺伝子異常(KRASCDKN2ATP53SMAD4変異)を高率に認める.最近の研究により,ゲノム,遺伝子発現,タンパク,代謝などの様々なレベルでの異常が明らかとなり,これらのプロファイリングによる個々の患者の発癌や進行パターン,治療効果予測に応用されることが期待される.2019年に適切な薬物治療の提供を目的とした遺伝子パネル検査が保険収載され,本格的なゲノム医療の時代を迎えた.このような新しい診断技術を早期膵癌の発見や遺伝素因など高い発癌リスクを有する人々の発病予防を目指した医療へと拡大するには,多様な分子異常の検出方法の確立が求められる.これら膵癌の分子診断には,膵内の多発病変の存在と腫瘍内の不均一性,癌のクローン進化の理解が重要となる.本稿では,膵癌の発生過程でみられる分子異常を概説し,診療への活用が期待される最新の技術革新について紹介する.

  • 林 秀幸, 西原 広史
    2020 年 35 巻 4 号 p. 313-321
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
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    本邦においてもがん遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング検査)が保険診療下で実施可能となり,がんゲノム医療の臨床実装が進んでいる.個々の患者にとって最適な治療方針を探るための参考情報として,包括的なゲノムプロファイルを取得することが検査の本来の目的である.しかし,現状では保険適用での対象患者は標準治療がない固形がん患者,または標準治療が終了となった固形がん患者(終了が見込まれる者を含む)で,全身状態・臓器機能等から検査後に化学療法の適応となる可能性が高い患者に限定されており,十分に活用できてない.検査の結果に関しては,エキスパートパネルにおいて検出された各遺伝子異常に対し,臨床的意義付けが行われ,個々の患者の治療方針が議論される.しかし,検査後の治療実施率は約10%と不十分な結果であり,最適な検査実施時期の検討,治療機会の向上を目指した治療実施体制を構築することが今後の課題である.

原著
  • ―日本膵臓学会家族性膵癌レジストリ委員会・家族性膵癌に関する小班会議―
    北野 雅之, 森実 千種, 肱岡 範, 松林 宏行, 蘆田 玲子, 池浦 司, 伊藤 鉄英, 神澤 輝実, 川口 喬久, 河邉 顕, 小杉 ...
    2020 年 35 巻 4 号 p. 322-330
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
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    家族性膵癌家系(一対以上の第一度近親者に膵癌患者のいる家系)の人々は,膵癌発症リスクが有意に高い.日本膵臓学会では,2014年から全国規模の家族性膵癌レジストリを運用しているが,家族性膵癌レジストリにより自らが膵癌高危険群と知った方へ説明するサーベイランス法のコンセンサスを得ることを目的とした.膵癌の画像診断・遺伝子診断に関するエキスパートのワーキング・グループを形成し,①膵癌高危険群の定義,②膵癌高危険群の初回検査法,③膵癌高危険群の経過観察法,に関する22のステートメントを作成した.それぞれのステートメントについて,日本膵臓学会評議員による賛否の投票を行ったところ,21のステートメントについて,75%以上の合意を得たため,エキスパート・コンセンサスとした.本エキスパート・コンセンサスを用いることにより,家族性膵癌の早期診断・予後改善に寄与することを期待する.

症例報告
  • 田島 秀浩, 牧野 勇, 蒲田 亮介, 真橋 宏幸, 岡崎 充善, 大畠 慶直, 中沼 伸一, 宮下 知治, 太田 哲生
    2020 年 35 巻 4 号 p. 331-335
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
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    術後再発をきたした膵癌は一般的には予後不良だが,肺転移単独再発は比較的予後が良好な場合がある.2006~2017年に当科で原発巣切除を行った浸潤性膵管癌112例のうち,術後初回に肺転移単独再発を認めたのは5例で全例男性であった.5例のうち3例に肺転移に対する切除が行われ,切除を行わなかった2例の内訳は1例が切除不能多発肺転移症例,もう1例は呼吸機能低下による切除不能症例であった.5例とも術前補助化学療法が施行されており,術後補助化学療法は4例に行われていた.病理学的には4例がリンパ節転移陽性であり,R0手術は4例に行われていた.肺転移切除の有無に関わらず5例とも4年以上の全生存期間が得られており,死亡した3例のうち2例は他部位の再発で死亡し,肺転移が死因となった1例は切除不能多発肺転移症例であった.肺転移切除は予後向上に寄与すると考えられるが,今後更なる症例の蓄積と検討が必要である.

  • 佐野 裕亮, 上野 誠, 長島 周平, 河野 邦幸, 田中 聡, 福島 泰斗, 浅間 宏之, 小林 智, 森本 学
    2020 年 35 巻 4 号 p. 336-343
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は66歳女性,上腹部痛を主訴に近医受診.腹部CTで多発肝腫瘤,膵体部腫瘤を認め,膵腫瘤の超音波内視鏡下穿刺吸引術による組織診で,通常型膵管癌と診断した.化学療法目的で当院紹介となり,gemcitabine+nab-paclitaxel(GnP)療法を開始したが,治療開始後8日目に右不全麻痺,構音障害が出現し,頭部MRIで脳梗塞を認めた.その後,症状は自然に改善し,GnP療法再開後も,脳梗塞の再燃は認めなかった.GnP療法開始4ヶ月後,腫瘍マーカーの再上昇,脊椎転移が出現し,二次治療としてmodified FOLFIRINOX(mFOLFIRINOX)療法を施行した.同療法開始3ヶ月後,嘔気,食欲低下,膀胱直腸障害が出現した.脳脊髄液検査より腺癌細胞を認め,癌性髄膜炎と診断した.その後,徐々に意識レベルが低下し,治療開始約7ヶ月後に永眠された.

  • 間室 奈々, 増岡 義人, 益子 太郎, 中野 明, 平林 健一, 中郡 聡夫
    2020 年 35 巻 4 号 p. 344-353
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は59歳女性.上腹部痛を主訴に受診した.CTで膵頭部に30mm大の多房性嚢胞性腫瘍を指摘された.ERCPでは主膵管拡張があり,膵液細胞診ではclass Vの診断であった.intraductal papillary mucinous carcinoma(IPMC)の診断で亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行した.最終病理診断はIPMCであった.術後12ヶ月にCA19-9の上昇を認め,CTで膵腸吻合部に再発を指摘されたため切除の方針となった.病理組織学所見でIPMCの残膵再発と診断された.再切除より51ヶ月でCA19-9の再上昇を認め,腹部CTでは腹壁に造影される20mm大の腫瘤があった.腹壁転移を疑い切除とし,病理組織学所見でIPMCの腹壁転移と診断された.初回切除後88ヶ月現在,生存中である.残膵再発と腹壁転移に対して切除を行い,長期生存が得られたIPMCの症例を経験したので報告する.

  • 木下 慶亮, 福地 聡士, 村上 和成
    2020 年 35 巻 4 号 p. 354-360
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル 認証あり

    輪状膵は,膵実質が十二指腸下行脚を囲む稀な膵先天性異常であり,その頻度は0.015%とされる.輪状膵を有する患者に膵癌を合併することはさらに極めて稀である.今回我々は,輪状膵に膵頭部癌を合併した症例を経験したので報告する.症例は76歳の女性,以前より膵体部分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(branch duct intraductal papillary mucinous neoplasm:BD-IPMN)と輪状膵と診断されていた.全身倦怠感,食欲不振で受診し,血液検査で黄疸・肝胆道系酵素上昇を認めた.造影CTで肝内胆管~総胆管拡張あり,膵頭部に2cm大の乏血性腫瘍を認めた.膵管造影で膵頭部主膵管の途絶,尾側主膵管の拡張を認めた.胆管造影では中下部胆管に狭窄を認め,膵頭部癌による閉塞性黄疸と診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術施行した.病理ではinvasive ductal adenocarcinoma of pancreas.Ph,TS2(33mm),pT3 pN1 M0 pStage IIBであった.

  • 小橋 優子, 松井 淳一, 瀧川 穣, 鈴木 隆之, 増田 耕一, 山添 真治, 最上 拓児, 佐々木 文
    2020 年 35 巻 4 号 p. 361-369
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
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    症例は43歳女性.4年前に左腋窩の滑膜肉腫が発生し他院で切除されている.膵頭部に腫瘍性病変が発見され精査目的で来院した.血液生化学検査や腫瘍マーカーは陰性であった.CT上,膵頭部に直径4.5cmの境界明瞭な嚢胞変性を伴う腫瘍性病変を認め膵実質より高い増強効果を示した.主膵管の拡張や膵実質の萎縮は認めなかった.MRIでは強い拡散制限を認め細胞密度の高い腫瘍であった.上部内視鏡では十二指腸下行脚の内側から腹側にかけて粘膜下隆起様の所見を認めた.ERPでは乳頭に近い主膵管での二次分岐の描出は不良で同部位の主膵管は腫瘍による左下方への圧排を伴っていた.滑膜肉腫の膵転移を疑い,幽門輪温存膵頭十二指腸切除,D1リンパ節廓清を施行した.術中迅速病理で滑膜肉腫の転移と診断された.術後補助化学療法を施行し83ヶ月の無再発生存中である.滑膜肉腫の膵転移はまれで他に転移がなければ,膵切除は良い適応である.画像所見は多彩で嚢胞変性や石灰化,出血を呈する場合が多い.

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