膵臓
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特集 急性膵炎診療ガイドライン2021
  • 高田 忠敬, 真弓 俊彦, 吉田 雅博, 伊佐地 秀司, 佐野 圭二
    2022 年 37 巻 5 号 p. 193-199
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル 認証あり

    1960年代半ばに医師となった主筆(高田)の時代での医療systemは,過去の経験則に基づいていた.1983年日本腹部救急医学会を創立し,1990年から膵炎診療の診療ガイドライン作成の模索を始めた.2003年にevidence -based medicineを基に,致命率が高く難治性疾患とされていた急性膵炎を焦点に第1版を出版した(日本で初めての診療ガイドライン).ひきつづいて,2007年,2010年,2015年と,その時代での工夫を凝らし出版を続け,2014年には難治性疾患からは外れることができた.しかし,2016年の全国調査結果から問題点が残っていることが分かった.対応として,ガイドラインのさらなる普及に力を入れる重要性を強く感じた.2021年版では,「やさしい解説」を取り入れ,参考資料とともにQRコード(QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です)で読み取れるように工夫した.さらに,モバイルアプリでQRコードから無料でダウンロードができる使い勝手がよい形を取り入れた.実臨床の場で,医師が患者ならびに家族に説明する時にこの資料を用いていただけることを望んでいる.

  • 真弓 俊彦, 高田 忠敬, 吉田 雅博
    2022 年 37 巻 5 号 p. 200-207
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル 認証あり

    本邦初のEBMの手法を用いて作成され,2003年に刊行された『急性膵炎診療ガイドライン』は,その後も常に最新の手法に則って作成されてきた.第5版は全国調査で明らかになった知見を基に2021年に改訂された.早期経腸栄養の促進,予防的抗菌薬の投与不要が強調され,ステップアップ・アプローチの内容がより具体的に記述された.ガイドラインの遵守を願いpancreatitis bundlesも改訂され,bundlesフローチャートも作成され,無料で入手でき診断,重症度判定が可能なモバイルアプリもup dateされた.参考資料は二次元バーコードで閲覧できるようにし,冊子を薄くした.特筆すべき点は,「やさしい解説」を新設し,コメディカルや患者・家族にも理解していただけるようにしたことである.

  • ―急性膵炎全国疫学調査の解析から―
    濱田 晋, 正宗 淳
    2022 年 37 巻 5 号 p. 208-214
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル 認証あり

    『急性膵炎診療ガイドライン2021 第5版』では,最新の全国調査に基づく急性膵炎の診療実態を受けて様々な改訂がなされた.診療の適正化による予後の改善は実現されているものの,いまだに死亡例が存在する急性膵炎診療においてはハイリスク症例を認識するとともに,遵守すべき治療方針をよく理解する必要がある.新たなガイドラインで改訂されたPancreatitis bundles 2021では,浸透率が十分とはいえない早期の経腸栄養開始や軽症例での予防的抗菌薬の不使用といった項目が取り入れられた.輸液管理に関する記載や急性期治療における使用薬剤,後期合併症に対する治療方針などのガイドライン改訂項目が実際の急性膵炎診療に与える影響や,予後改善に寄与するかは,今後の全国調査にて明らかにする必要がある.

  • 廣田 衛久
    2022 年 37 巻 5 号 p. 215-221
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル 認証あり

    急性膵炎は,上腹部痛,血中または尿中膵酵素の上昇,急性膵炎に伴う異常画像所見のうち,2つ以上が当てはまると診断される.尿中トリプシノーゲン2の簡易検査キットは,テステープを尿に浸すだけで短時間に結果を得ることが可能であり,採血などで膵酵素値を測定できない施設で代用となりうる.胆石性膵炎では緊急に内視鏡的処置を行う適応を判断する必要があるため,成因診断では胆石性の鑑別が特に重要である.重症度判定は入院時から継時的に複数回行う.『厚生労働省急性膵炎重症度判定基準2008』は,予後因子スコア(3点以上で重症)と造影CT Grade(Grade 2以上で重症)からなり,どちらを用いて判定しても良い.しかし,そのどちらを用いた場合でも入院時には真の重症者が軽症と判定される可能性がある.繰り返し判定を行うことが重要である.入院時の血中IL-6測定は,重症化予測に有用である.

  • 岡本 好司
    2022 年 37 巻 5 号 p. 222-228
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
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    本邦では,診療ガイドラインが普及するにつれ,急性膵炎の診療成績は向上してきた.しかし,死亡に至る重症例も一定数存在する.臨床の現場では,慣習に囚われて,ガイドラインで実践すべきとされたことを行わなかったり,逆に行ってはいけないことを漫然と行ったりする事例が未だに多い.急性膵炎の基本的診療方針を診療フローチャートとして作成した.また,診療で行うべき検査や治療を,Pancreatitis Bundles 2021として作成した.Pancreatitis Bundles 2010や2015の項目を遵守するほど予後が改善されるとのエビデンスがある.今後の急性膵炎診療にPancreatitis Bundles 2021を是非臨床指標として用いて欲しい.

  • ―早期経腸栄養,予防的抗菌薬投与,局所動注療法―
    土谷 飛鳥
    2022 年 37 巻 5 号 p. 229-238
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル 認証あり

    急性膵炎の初期治療法は,この10~15年間でパラダイムシフトを迎えた.経腸栄養に関して,長い絶食期間が推奨されていたが,近年,世界のガイドラインは早期経腸栄養開始を推奨するようになった.早期に腸管を使用することが予後改善に貢献するというエビデンスが蓄積されてきたためである.また,予防的抗菌薬投与に関して,重症膵炎においては長年投与が推奨されてきたが,世界および日本の最新版ガイドラインでも投与は非推奨となった.さらに蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬膵局所動注療法に関しても,ガイドラインでは臨床研究の位置づけであり推奨していない.このように世界・日本においても大きく潮流が変化している.従って,急性膵炎の初期治療に臨むすべての職種には,まずは日本のガイドライン推奨を遵守することが求められ,その上で,ガイドラインや関係学会に求められることは,推奨内容の啓蒙と疫学的横断研究調査を繰り返すことである.

  • 向井 俊太郎, 糸井 隆夫
    2022 年 37 巻 5 号 p. 239-250
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
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    急性膵炎全体の致命率は改善しているが,後期の局所合併症である感染性膵壊死を合併した症例の致命率はいまだに高く,課題の1つである.感染例や有症状例は侵襲的治療の適応となる.超音波内視鏡下ドレナージと内視鏡的ネクロセクトミーによる経消化管的治療を主軸とした内視鏡的ステップアップ・アプローチが開発され,良好な治療成績が報告されている.『急性膵炎診療ガイドライン2021 第5版』でも経消化管的にアプローチできる症例では第一選択として推奨されている.しかし,内視鏡的ネクロセクトミーは重篤な偶発症が起こりうるため,その適応を含め慎重な対応が求められる.近年,専用の大口径ステントが本邦でも保険収載され,ドレナージ効果が高く,効率よくネクロセクトミーを行うこともできるため治療成績の向上が期待されている.しかし,骨盤腔に及ぶような症例に関しては内視鏡治療単独では難渋するため,経皮的治療や外科的治療の併用を検討すべきである.

  • 飯澤 祐介, 伊佐地 秀司
    2022 年 37 巻 5 号 p. 251-256
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
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    2016年の急性膵炎全国調査では,発症2週間以降の重症急性膵炎の致命率は,2011年と比較して改善を認めず,発症後期に問題となるwalled-off necrosisなど局所合併症の治療には改善の余地があると考えられた.これらを背景として,『急性膵炎診療ガイドライン2021』では,膵局所合併症に対するインターベンション治療についての記載が大幅に改訂された.改訂のポイントとして,感染性膵壊死に対してインターベンション治療を行う場合は,発症4週以降に内視鏡的ステップアップ・アプローチを行い,それが困難な場合には外科的ステップアップ・アプローチを選択し,外科的ネクロセクトミーを行う場合には後腹膜ネクロセクトミーを選択することが提案された.主膵管破綻症候群の治療では,超音波内視鏡下ドレナージなど内視鏡的治療が奏効しない場合に,膵切除術,膵管空腸側々吻合術,嚢胞空腸吻合術などの外科治療が行われる.

原著
  • 渡辺 真郁, 奥脇 興介, 岩井 知久, 金子 亨, 長谷川 力也, 松本 高明, 上原 一帆, 升谷 寛以, 安達 快, 蓼原 将良, 中 ...
    2022 年 37 巻 5 号 p. 257-264
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
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    【背景】高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)を有する固形癌に対するペムブロリズマブの有効性が報告された.膵癌診療ではMSI検査を念頭に置いた適正検体の採取が重要であるが,MSI検査の解析不能に影響する因子は明らかにされていない.【方法】Endoscopic ultrasound-guided fine-needle aspiration(EUS-FNA)で膵癌と診断した症例のMSI検査結果を前向きに集積した.【結果】MSI検査は73例中72例(98.6%)で解析可能でMSI-Hは1例だった.解析不能の1例はEUS-FNAからMSI検査まで584日を要し,検体のDNA分解が解析不能の原因であった.【考察】EUS-FNA検体を用いたMSI検査は高い解析成功率を有し,解析不能に影響する因子は同定できなかったが,検体の長期保存例はDNA分解による解析不能が生じる可能性が示唆された.

症例報告
  • 若林 時夫, 竹田 康人, 方堂 祐治, 代田 幸博, 吉江 雄一, 富田 剛治, 上田 善道
    2022 年 37 巻 5 号 p. 265-273
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
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    78歳,男性.膵嚢胞性病変の精査目的に受診.MRCPで膵体部に20mm大ブドウ房状の拡張分枝と,近傍の主膵管に限局性狭窄像,造影CT遅延相で病変周囲に淡い濃染域を認めた.ERP(内視鏡的逆行性膵管造影)で主膵管は拡張分枝と交通し,内部に粘液透亮像を認めた.膵液細胞診で腺癌を示唆する異型細胞が検出されたため,IPMN由来あるいは隣接併存浸潤癌を疑い膵体尾部切除術を施行した.病理検査では狭窄部を中心とする主膵管や近傍分枝に高度異型上皮を認めたが浸潤所見はなく,混合型IPMC非浸潤性と診断された.術前CTの濃染像は腫瘍周囲の線維化が描出されたものと推測された.近年,膵上皮内癌周囲の線維化をEUSにて淡い低エコー域として捉えたとする報告が増加し,非浸潤癌の間接的な画像所見として注目されているが,CT画像についての報告は少ない.本例は浸潤前IPMC周囲の線維化領域が造影CTにて遅延性濃染として同定された貴重な症例と考えられた.

  • 田畑 咲, 伊藤 貴明, 林 大樹朗
    2022 年 37 巻 5 号 p. 274-280
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
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    症例は79歳女性.突然の上腹部痛と嘔吐を主訴に当院受診.造影CT検査で脾臓の造影不良域と,下行大動脈の不整形な低吸収域を認め,大動脈内血栓症,脾梗塞と診断し,ヘパリン,アスピリン投与を開始した.翌日,急激に腹痛増悪し,血液生化学所見で膵酵素と炎症反応の上昇を認めた.造影CT検査では大動脈の低吸収域は消失し,胃十二指腸動脈の造影欠損像と膵臓の造影不良域が出現した.胃十二指腸動脈塞栓症による虚血性膵炎と診断し,膵炎治療を追加した.その後壊死性膵炎に至ったが保存的治療により軽快退院した.

    虚血性膵炎とは,膵への血流低下により発症する急性膵炎であり,他の成因による急性膵炎と比較しても重篤化しやすく予後不良な病態である.今回,下行大動脈内血栓症による胃十二指腸動脈塞栓症が原因と考えられる虚血性膵炎に対して,抗血栓療法と急性膵炎治療により良い経過が得られた1例を経験したので報告する.

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