膵臓
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特集 慢性膵炎診療の現状と課題
  • 菊田 和宏, 岡野 圭一
    2026 年41 巻1 号 p. 1
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/17
    ジャーナル 認証あり
  • 松本 諒太郎, 菊田 和宏, 関野 泰幹, 滝川 哲也, 正宗 淳
    2026 年41 巻1 号 p. 2-8
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/17
    ジャーナル 認証あり

    慢性膵炎は非可逆性に進行する疾患であり,その病期進展には飲酒・喫煙といった生活習慣因子や膵炎関連遺伝子異常が主要な役割を果たす.病期が進行すると膵外分泌機能不全を来し,これはサルコペニアの独立した危険因子としてQOL低下や予後不良と密接に関連する.また,近年の多機関共同研究では,慢性膵炎患者は膵癌を含む飲酒・喫煙関連悪性腫瘍の罹患率・死亡率が一般人口より高く,とくにアルコール性慢性膵炎でその傾向が顕著であった.本邦では超高齢社会の進展に伴い膵疾患患者の高齢化が進んでおり,慢性膵炎診療においてもQOLおよび長期予後を見据えた全人的な生活習慣介入と総合的マネジメントの重要性が改めて示唆される.

  • 山宮 知, 入澤 篤志
    2026 年41 巻1 号 p. 9-17
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/17
    ジャーナル 認証あり

    早期慢性膵炎(ECP)は可逆性であり,進展阻止や膵癌予防の観点から早期診断の重要性が高まっている.Mechanistic definitionによりECPの位置づけが明確化された.これを踏まえて,診断特異度と再現性向上を目的として2019年にECP診断基準が改訂された.この改訂では,EUS所見の集約により観察者間一致率の改善が示された.一方で,EUS所見の主観性,加齢性変化との鑑別,正常膵との連続性評価など,依然として未解決点は多い.近年はEUS-elastographyや最適超音波速度測定により膵硬度を定量評価でき,ApoA2-iやPGE2といったバイオマーカーも病期判定指標として期待される.今後は,画像所見,機能評価,バイオマーカーなどを統合した客観的診断体系を構築することで,ECPに対し,より効果的な医療介入につなげることが求められる.

  • 鈴木 光幸, 清水 俊明
    2026 年41 巻1 号 p. 18-24
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/17
    ジャーナル 認証あり

    小児期発症の慢性疾患患者は,成長に伴い成人診療科へ移行する過程で,医療体制の断絶や自己管理能力の不足,さらには学業・就労などライフイベントによる困難に直面し,治療中断や予後悪化をきたすことがある.このため移行期医療は単なる転科ではなく,計画的かつ多職種連携に基づく包括的支援として位置づけられる.日本でも各学会や行政によって提言やモデル事業が進められているが,小児膵疾患領域には標準プログラムが存在せず,各施設の独自対応に依存している.特に遺伝性膵炎では,小児期から急性膵炎を反復し,慢性膵炎へ進展する症例が少なくない.さらに成人期には膵外分泌機能不全や膵性糖尿病,膵癌のリスクが高まるため,計画的モニタリングと成人診療科への円滑な移行が不可欠である.本稿では,小児慢性膵炎の移行期医療における課題と対応策を整理し,患者・家族への教育,心理社会的支援,制度的支援,そして診療科間連携の重要性を論じる.

  • 池浦 司, 折野 綾香, 伊藤 嵩志, 中丸 洸, 桝田 昌隆, 中山 新士, 長沼 誠
    2026 年41 巻1 号 p. 25-33
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/17
    ジャーナル 認証あり

    慢性膵炎では,膵石や膵管狭窄をはじめとする様々な合併症が生じる.疼痛などの症状を伴う合併症は患者のquality of life低下につながるため,低侵襲アプローチである内視鏡治療が適応となる.慢性膵炎に対する内視鏡的手技には,内視鏡的膵管口切開術,内視鏡的膵管ステント留置術,内視鏡的膵石除去術,経口膵管鏡下膵石破砕術,超音波内視鏡下膵管ドレナージ術,超音波内視鏡下経消化管的ドレナージ術などがあるが,一般的に胆道疾患に対する内視鏡処置に比べ手技的難度は高く,膵疾患へのインターベンションに特化したデバイスはほぼ存在しないため,処置には難渋することも少なくない.したがって,慢性膵炎に対する内視鏡治療を行う際には,適応・有効性・合併症・手技内容を十分に理解しておくことが重要である.本稿では,慢性膵炎に対する内視鏡治療について概説する.

  • 藤森 尚, 松本 一秀, 村上 正俊, 植田 圭二郎, 小川 佳宏
    2026 年41 巻1 号 p. 34-39
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/17
    ジャーナル 認証あり

    膵外分泌機能不全は,膵臓の外分泌機能低下により,膵臓から十二指腸に分泌される膵酵素が欠乏することによって起こる消化吸収障害を特徴とする病態の総称である.膵外分泌機能不全の原因となる最多の疾患は慢性膵炎であり,慢性膵炎の罹病期間が長く,病期が進行するほど膵外分泌機能不全の合併頻度が高くなる.膵外分泌機能不全の治療は,十分なエネルギー摂取と膵消化酵素補充療法が中心となり,断酒・禁煙などの生活習慣改善も重要となる.併せて,高率に合併する膵性糖尿病に対する評価・治療も必要である.一方で,膵外分泌機能不全を正確に診断することが難しいという大きな臨床課題が残されている.膵外分泌機能不全を適切に診断し,多角的に治療介入することで,慢性膵炎患者のQOL向上並びに長期予後改善に繋がることが期待される.

  • 竹中 完, 工藤 正俊
    2026 年41 巻1 号 p. 40-48
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/17
    ジャーナル 認証あり

    膵癌は本邦の主要ながん死因であり,慢性膵炎はその重要な危険因子である.しかし慢性炎症や線維化を背景とする膵では画像診断が困難であり,mass-forming pancreatitisや自己免疫性膵炎との鑑別など,多くの課題が存在するが,現状では慢性膵炎における膵癌サーベイランスに確立したものは存在しない.

    本稿では,慢性膵炎における膵癌リスクの疫学と発癌メカニズム,各種ガイドラインにおける膵癌サーベイランスの位置付けに触れ,各種画像モダリティの役割について概説する.さらに,新規糖尿病の出現や急激な代謝悪化,遺伝性膵炎や生殖細胞系列変異などによるハイリスク群の抽出と,AI画像診断,リキッドバイオプシー,膵液分子診断といった次世代技術の可能性を論じ,慢性膵炎診療における個別化された膵癌サーベイランスのあり方について概説する.

  • 阿見 勝也, 中野 大哉, 登 千穂子, 吉田 雄太, 田井 謙太郎, 村瀬 貴昭, 武部 敦志, 亀井 敬子, 松本 逸平
    2026 年41 巻1 号 p. 49-57
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/17
    ジャーナル 認証あり

    Frey手術をはじめとする慢性膵炎に対する外科治療は,優れた除痛効果と生活の質の改善が示されている.『慢性膵炎診療ガイドライン2021』では,有痛例に対してまず保存的治療や内視鏡的治療を行い,無効・再発例に外科治療を行うことが推奨されている.海外で行われた内視鏡的治療と外科治療の3編のRCTの結果では,いずれも外科治療の有効性が報告されている.また,外科治療例の検討では早期手術は後期手術より除痛効果に優れることが示されている.これらの知見より,2024年に発表されたアメリカ消化器内視鏡学会の「慢性膵炎に対する内視鏡的治療のガイドライン」では,主膵管閉塞と疼痛を伴う慢性膵炎に対して,内視鏡的治療に先立ち外科治療の評価を行うことが提案されている.慢性膵炎治療は従来の段階的治療から外科治療先行へと変革が進みつつある.今後は内科医と外科医が緊密に連携し,症例に応じた適切な治療選択を行うことが重要である.

  • 穴澤 貴行, 山根 佳
    2026 年41 巻1 号 p. 58-64
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/17
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    慢性膵炎は,遺伝的・環境的要因やその他の危険因子により膵臓に持続的な病的反応を生じ,病的な線維性炎症が持続する難治性疾患であり,持続する腹痛は生活の質(QOL)を著しく低下させる.薬物療法や内視鏡治療,外科的膵管ドレナージ術で疼痛が制御できない場合,膵全摘術が選択肢となりえるが,術後の膵内分泌機能の喪失が大きな問題である.これに対し,膵全摘術時に膵島を分離し自家移植するTPIAT(total pancreatectomy with islet autotransplantation)は,疼痛制御とQOL改善に加え,膵内分泌機能の維持を可能にする治療として注目されている.適応は薬物・内視鏡治療無効例や遺伝性膵炎などが中心であり,膵島分離・移植技術の進歩により長期的なインスリン離脱率も向上している.国内ではまだ症例数が少ないが,多施設共同研究の進展とともに標準治療としての普及が期待される.

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