膵臓
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特集 超高齢社会(高齢化率21%以上)の膵疾患診療
  • 阪上 順一, 丹藤 雄介
    2024 年 39 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/15
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  • ―画像診断を中心に―
    山宮 知, 入澤 篤志, 阿部 洋子, 永島 一憲, 嘉島 賢, 久野木 康仁, 佐久間 文, 福士 耕, 稲葉 康記
    2024 年 39 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

    我が国の総人口に対する65歳以上人口割合(高齢化率)は29.0%であり「超高齢社会」を迎えている.高齢者の膵疾患に携わる機会も必然的に増加している.高齢者においても,急性膵炎,慢性膵炎,膵癌,自己免疫性膵炎といった膵疾患の発症を認めるが,高齢者と非高齢者では自覚症状の現れ方が異なること,高齢者では基礎疾患や服用薬剤等により検査に制限が加わる可能性が高いことから,各種スクリーニング検査の難しさが指摘されている.その一方,近年の医療技術の進歩により,膵疾患に対する外科的手術や化学療法を含めた治療対象年齢も上昇しており,高齢者に対して安全かつ確実に診断する意義が高まってきている.加齢に伴う膵臓の生理的変化を理解し,各種画像検査の適応を判断した上で,高齢者に対する低侵襲で安全なスクリーニング検査・方法を選択することが,今後の「超高齢化社会」における膵疾患診療において重要であると考える.

  • 岩崎 栄典
    2024 年 39 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

    日本は平均寿命,高齢者数,高齢化のスピードにおいて世界一の超高齢社会といわれている.総務省統計局による2023年度9月時点での推計人口においても65歳以上人口が3,623万人(総人口の29.1%)となり,未曾有の超高齢社会となっている.その一方で海外の多数の臨床研究や,本邦の全国調査研究においても,急性膵炎の発症年齢は経年的に上昇している.臨床現場でも高齢者の急性膵炎診療を経験する機会が増えている.高齢者に発症する急性膵炎は胆石性膵炎が多く,重症化しやすく,死亡率が高いことが示されている.胆石性膵炎に対する早期のERCPの適応や,胆石・胆管結石に対する根治処置であるERCP/ESTや胆嚢摘出のタイミングを中心に,高齢者膵炎の特徴や治療成績に関するエビデンスをまとめたい.

  • 滝川 哲也, 菊田 和宏, 松本 諒太郎, 佐々木 滉, 坂野 美紗子, 佐野 貴紀, 濱田 晋, 粂 潔, 正宗 淳
    2024 年 39 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/15
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    超高齢社会を迎え,慢性膵炎診療においても高齢者医療の需要はますます高まってきている.最新の全国調査の解析から,本邦の慢性膵炎患者の17.6%が75歳以上の高齢者であり,高齢者慢性膵炎の成因はアルコール性が少なく,特発性の頻度が多いことが明らかとなった.高齢者慢性膵炎は無痛性が多く,膵外分泌機能障害の合併に注意する必要がある.高齢者ではフレイル,サルコペニアやオステオパシーなど合併症の観点から,非代償期の症例に対しては十分な膵消化酵素補充療法と脂肪を制限しない食事指導が重要となる.また,高齢者慢性膵炎では,膵癌を含めた悪性腫瘍の合併にも留意する必要がある.これらの高齢者慢性膵炎の特徴に加え,加齢に伴う生理的な変化,複数の併存疾患の存在,薬物療法による有害事象,社会的要素といった高齢者特有の問題を考慮しながら,個々の患者に合った丁寧な診療が求められる.

  • 小林 智, 上野 誠, 古瀬 純司
    2024 年 39 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/15
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    膵癌は高齢者ほど罹患しやすい疾患であるため,超高齢社会を迎えた本邦では増加傾向にある.高齢者では,腫瘍学的に切除可能な膵癌であっても,外科的切除の適応外となることがある.一方で,腹腔鏡下膵体尾部切除術など,治療の低侵襲化も進んできた.放射線治療はその安全性から,高齢であっても適応になりうる.多方向から照射することで正常組織への線量を低減しつつ腫瘍への線量を上げる技術や,陽子線や重粒子線治療も期待される.薬物療法はゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法,ゲムシタビン単剤,S-1単剤が選択肢である.いずれの治療モダリティも,年齢のみならず,主要臓器機能や併存症などを含めた包括的な評価を基に適応を判断することが望まれる.

  • 藤森 尚, 村上 正俊, 松本 一秀, 大野 彰久, 寺松 克人, 植田 圭二郎, 伊藤 鉄英, 小川 佳宏
    2024 年 39 巻 1 号 p. 33-42
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/15
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    膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine neoplasm:PanNEN)は希少疾患であるが,近年増加傾向である.超高齢社会に伴い今後はPanNEN患者の高齢化も予想される.PanNENの唯一の根治治療は外科切除であり,適応を選んで外科切除を施行した場合,高齢者においても安全な外科切除が可能である.一方で,年齢や併存疾患,腫瘍径などから,経過観察の選択肢も考慮する.高分化型の膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumor:PanNET)に対する全身療法として,ソマトスタチンアナログ,分子標的薬,細胞障害性抗がん剤,放射性核種標識ペプチド治療,などが挙げられる.各種治療法の特徴・有害事象を理解した上で,高齢者PanNETに適用することになるが,外科手術と同様に,併存疾患や認知機能などの事前評価が重要となる.

  • 丹藤 雄介
    2024 年 39 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/15
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    老年症候群(geriatric syndrome)は,加齢による身体的精神的機能の低下により,高齢者特有の症状・障害に陥ること,もしくは高齢者によくみられる非常に多岐にわたる心身の諸症状・徴候の総称とされる.近年では老年症候群と言わず,「高齢者に特有な病的状態(geriatric condition)」とも表現されている.2007年に我が国はいわゆる超高齢社会(super aging society)となった.膵疾患の診療においても,20年前に比べて高齢者を診療する機会が増えたと感じられる.高齢者はさまざまな併存症や既往症を持ち,加齢による徴候もあるために,高齢者としての特性を考慮した診療が必要となる.本稿では老年症候群にかかわる膵疾患の診療に関する最近の知見について概説した.

  • 下山 理史
    2024 年 39 巻 1 号 p. 48-57
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

    日本においては高齢者人口がますます増加している.様々な困難さを抱えた高齢者も増えている.高齢者に対する緩和ケアを考える際,フレイル(frailty),進行性疾患の多疾患併存(advanced multimorbidity),不確実性(uncertainty),老年症候群,ポリファーマシーは特に問題となる.高齢膵疾患の患者の緩和ケアを考える時には,高齢者の特徴と問題点を念頭に置いて,その機能を評価する必要がある.膵疾患における特殊性に注意を払いながら多職種チームで協働して支援にあたる必要がある.

  • ―高齢者医療のパラダイムシフト―
    白鳥 敬子
    2024 年 39 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

    日本は世界に先駆けて2007年に超高齢社会に突入し,医療制度や福祉政策の変革は喫緊の課題である.老年症候群や多数の慢性疾患を有する高齢者では,その病態は容易に重症化・複雑化しやすい.一般的に医療提供は1疾患に対し「治す医療」が中心であるが,高齢者では生活の質を重視した「治し支える医療」へのパラダイムシフトが求められる.また,「予防医療」に加えて,疾患や障害が発生する以前の段階から介入する「先制医療」の構築も必要であろう.そのためには,新規バイオマーカー,ゲノム,プロテオーム,メタボロームの解析情報,臨床情報などを集約した新しい予測因子や診断法の開発が待たれる.近年,加齢研究は飛躍的に進歩しているが膵臓学領域では十分とはいえず,今後,多方面からのアプローチにより新しい知見を重ね,膵疾患を有する高齢患者にエビデンスのある医療提供ができることを期待する.

症例報告
  • 若林 時夫, 代田 幸博, 吉江 雄一, 富田 剛治, 上田 善道
    2024 年 39 巻 1 号 p. 63-71
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/15
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    症例は73歳,女性.単純腹部CTで,膵尾部に増大傾向を有する18mm径の嚢胞性病変を指摘された.造影MRIおよび超音波内視鏡検査では,嚢胞内面は平滑で結節成分を指摘しえなかったが,隔壁構造と早期相から濃染される厚さ2mmの明瞭な被膜を認めた.小型で充実成分がないことより経過観察の方針となったが,その後も増大傾向が続き1年6か月後には30mm×35mm大となったため,膵粘液嚢胞性腫瘍(MCN)を疑って膵尾側切除術を施行した.術後病理検査では,ほとんどが単層粘液性上皮に被覆され,異型に乏しく,膵管との交通や卵巣様間質を認めなかったことから,simple mucinous cyst(SMC)と診断された.SMCはMCNとは異なる新しく提唱された粘液性膵嚢胞の概念で,その疾患特性は十分に解明されていないが,悪性リスクは低いと考えられており,MCNの鑑別疾患の一つとして認識する必要がある.

  • 加藤 宏之, 浅野 之夫, 伊東 昌広, 荒川 敏, 志村 正博, 小池 大助, 越智 隆之, 河合 永季, 安岡 宏展, 東口 貴彦, 国 ...
    2024 年 39 巻 1 号 p. 72-78
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/15
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    55歳の女性.検診で膵尾部の腫瘍を指摘され,腹腔鏡下膵体尾部切除術が施行された.病理検査の結果,PanNET G3(Ki-67指数>20%)と診断された.術後7ヶ月で胆管拡張と肝機能異常(AST:171U/l,ALT:86U/l)を認めた.腹部造影CTで主膵管内から十二指腸乳頭に充満する腫瘍を認め,上部消化管内視鏡検査では,Vater乳頭から赤色で白苔を有する乳頭状腫瘍の露出を認めたため,残膵全摘出術を施行した.免疫染色ではsynaptophysin,chromogranin Aが陽性で,Ki-67指数は30~40%であり,PanNET G3の再発と診断された.患者は2回目手術から24ヶ月無再発生存中である.

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