2011 年 26 巻 1 号 p. 99-107
症例は16歳,男性.食欲不振,体重減少(1年で約5kg)を主訴として当院を受診し,腹部エコーおよび腹部CT検査にて巨大な膵頭部の腫瘍を指摘された.画像診断では膵頭部から外側方に突出するように径約7.3cmの腫瘍が認められ,十二指腸下行脚および総胆管を圧迫していた.また腫瘍内に嚢胞性変化があり腫瘍内出血が示唆された.主膵管の拡張は認められなかった.以上の所見および患者の年齢,血清AFP値が高値であることなどから膵芽腫が疑われた.入院後14日目に膵頭十二指腸切除術を施行した.術後の病理組織学的検査では,腫瘍は被膜を有し,小型の円形な核を持つ腫瘍細胞が充実性あるいは小腺管を形成して増殖しており出血壊死を伴っていた.扁平上皮小体が認められ,膵芽腫と診断された.免疫組織学的検索でAFP,α -1 antitrypsin,chromogranin Aが陽性であった.術後8年5か月を経過し,再発の兆候なく経過観察を継続中である.