糖尿病
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グリコヘモグロビンの標準化に関する委員会報告 (V)
島 健二遠藤 治郎老籾 宗忠大森 安恵片山 善章金澤 康徳河合 忠河盛 隆造菅野 剛史清瀬 闊桑島 正道中島 弘二永峰 康孝馬場 茂明星野 忠夫
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1998 年 41 巻 4 号 p. 317-323

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抄録

4回グリコヘモグロビン (GHb) 精度管理調査 (1996年9月実施) の結果, Affinity法および免疫法の一部の測定値が他法の測定値と乖離し, 全体の施設間差拡大の原因になっていることが判明した. また, 各施設において用いている基準値が必ずしも統一されておらず, さらに上限値を6.1%以上に設定している施設が約20%存在し, 老健法の判定基準と矛盾するという事態が判明した. そこで各施設にこれらの事態を報告し, 改善を要請した. その結果を評価するため参加希望施設 (1901施設) に濃度の異なる赤血球M・A・P「日赤」血液検体2検体および凍結乾燥血液検体2検体を送付し精度管理調査を実施した (1997年9月). 施設間差調査の対象とした1901施設のうち, totalGHb値や極異常値を除き最終的評価を1798施設 (HPLC法1177, 免疫法520, Affinity法101) からの報告に基づいて行った. また, 現在使用中の日本糖尿病学会標準品に代わる新標準品を作製するため, 新標準品用の凍結乾燥血液試料 (候補試料) の性能についても, 特定の81施設において調査した. その結果は以下のようであった.
1. 全データをまとめての施設問差, CVは4.5%~5.7%であった.
2. 測定法別CVはHPLC法3.1%~4.9%, 免疫法5.2%~6.4%, Affinity法5.2%~6.0%であった. Affinity法による測定値は低濃度検体の場合に, 他の2法の測定値に比し, 明らかに高値であった.
3. 候補試料測定値で補正しても, Affinity法でのヒト新鮮血値の施設間差は改善されず, また補正平均測定値もHPLC法の測定値に近似しなかった.
4. 各施設が採用している基準範囲の上限値が5.8%以下, 5.9%から6.0%, 6.1%以上の施設の割合は, それぞれ77.6%, 14.7%, 7.7%であった.
今回の調査で施設間差は臨床的に許容可能な範囲になっていることが明らかになった. この成績を維持あるいはさらに改善するにはAffinity法の測定精度の一層の向上が必要となる. そのためにもAffinity法にも使用可能な凍結乾燥血液標準品の作製が待たれる.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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