【目的】妊娠糖尿病(GDM)のリスク因子に肥満があるが,日本では肥満を伴わない場合も多い.今回,GDM妊婦と正常耐糖能(NGT)妊婦のインスリン分泌・抵抗性と体組成について比較解析した.【方法】単施設前向きコホート研究.初期糖代謝異常スクリーニング陰性であった妊婦連続92例に対し妊娠中期75 gOGTT,インピーダンス法による体組成を評価した.【結果】92例中GDMは12例であった.妊娠前BMIはGDM群で有意に高く,肥満は42 %であった.妊娠中期において,GDM群ではNGT群と比較して,インスリン分泌能には差が見られなかったが,全身筋肉量/全身脂肪量(p<0.01),Matsuda Index(p<0.01)は低値であった.【総括】日本人のGDM群では体脂肪量が多く相対的に筋肉量の比率が低く,インスリン感受性が低いことが,肥満がなくともGDM発症に寄与すると考えられた.
57歳男性.急性心筋梗塞で入院し,その際随時血糖281 mg/dL,HbA1c 8.8 %で糖尿病と診断した.空腹時血清CPRは3.1 ng/mL(血糖164 mg/dL)であったが,尿中CPRは659 μg/日と異常高値で,再検査でも491 μg/日と同様であった.入院後にネプリライシン(NEP)阻害薬であるサクビトリルバルサルタン水和物(ARNI)を開始しており,尿中CPR異常高値の原因と考えられた.ARNIをオルメサルタンに変更すると,尿中CPRは86.9 μg/gCreと異常高値ではなくなったが,ARNI再開で304.5 μg/gCreと再び異常高値となった.NEPは腎近尿細管細胞刷子縁に多く存在し,先行研究ではCペプチドはNEPの基質になりうることが示されている.NEP阻害作用を持つARNIが尿中のCペプチド分解を抑制し,尿中CPRを増加させた可能性がある.