糖尿病
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原著
診断・治療(食事・運動・薬物)
  • 平嶋 勇士, 青木 絵麻, 鈴木 奈津子, 平野 勉
    2023 年 66 巻 11 号 p. 765-772
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル 認証あり

    目的 small dense(sd)LDL-コレステロール(C)とLDL-トリグリセリド(TG)は動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の強力なリスクマーカーである.GLP-1受容体作動薬(RA)はASCVD発症を抑制することが報告されており,経口セマグルチドのLDL亜分画への影響を調べた.方法 経口セマグルチドを投与した2型糖尿病107名のうち87名はDPP-4阻害薬からの切り替え,20名は追加であった.セマグルチド3,7,14 mg内服者は各々28,71,8名であった.sdLDL-C,LDL-TGは直接定量法で測定した.結果 年齢50±13歳,BMI29±6 kg/m2で比較的若年で肥満者が多かった.セマグルチド投与によりHbA1cは7.9から7.5 %に,体重は76.4から74.9 kgに低下した.sdLDL-Cは32.4から28.6 mg/dLに,LDL-TGは15.6から14.7 mg/dLに低下した.LDL-C,TG,HbA1cも低下した.セマグルチドの投与法,量は脂質変化量(Δ)に影響を及ぼさなかった.ΔsdLDL-CはΔLDL-C,ΔTG,ΔHbA1cと正相関し,ΔLDL-TGはΔHbA1cとのみ相関した.結論 経口セマグルチドはLDL全体を低下させることによりその亜分画も低下させた.ASCVD抑制に寄与する可能性がある.

社会医学・医療経済学
  • 村瀬 明世, 上田 真意子, 大池 実衣子, 根本 浩一郎, 廣田 憲威, 結城 由恵, 中村 賢治
    2023 年 66 巻 11 号 p. 773-782
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル 認証あり

    COVID-19緊急事態宣言下の大阪府で,無料低額診療事業を実施している外来に通院中の糖尿病患者に不安・恐怖,睡眠,運動,食生活の変化と経済状況,社会的孤立の健康の社会的要因(SDH)に関するアンケート調査を実施し,HbA1c・体重への影響を検討した.第1回目(2020年6月~8月)705名,第2回目(2021年9月~10月)632名について解析した.不安や恐怖を感じることが増え(1回目75.3 %,2回目72.2 %),運動・外出頻度が減り(1回目76.9 %,2回目76.2 %),周囲の人との会話が減っていた(1回目41.3 %,2回目53.1 %).HbA1cは有意差なく,体重は有意に減少していた(p<0.01).また,60歳未満,無料低額診療者では経済的困窮を感じる割合が有意に多く(p<0.01),COVID-19禍において,社会経済状況に配慮し診療を行うことが必要であると考えられた.

症例報告
  • 渡邊 知美, 原井 望, 三枝 なつみ, 犬飼 峰彦, 細川 忠嗣, 安徳 愛梨, 室井 優子, 林田 亮佑, 土屋 恭一郎
    2023 年 66 巻 11 号 p. 783-789
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル 認証あり

    66歳男性.肺非扁平上皮癌に対して,X-1年5月からニボルマブとイピリムマブを使用していた.X-1年8月のHbA1c 5.2 %,X年10月Y-7日の随時血糖値147 mg/dL,血中C-ペプチド1.76 ng/mLであった.10月Y日に口渇感,多飲,嘔気などを主訴に緊急受診した.随時血糖値1,684 mg/dL,血中C-ペプチド0.09 ng/mL,ケトアシドーシスを認め,免疫チェックポイント阻害薬に関連した劇症1型糖尿病による糖尿病性ケトアシドーシスと診断した.本症例は投与後1年5カ月という長期経過後の発症であることが特徴的である.また1週間で急速にインスリン分泌能が低下したことが確かめられた.本症例の経験から院内で症例検討会を行い,院内免疫関連有害事象アルゴリズムの修正及び逆引きマニュアルの導入,患者への啓発活動と医師への情報共有を行った.当院での取り組みをふまえて報告する.

  • 湯口[高野] 善成, 木島 弘道, 川原田 陽, 三次 有奈, 海老原 裕磨
    2023 年 66 巻 11 号 p. 790-796
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル 認証あり

    症例は49歳男性.20歳時体重は85 kgだったが,40歳代までに最大160 kgまで増加した.X-4年に耐糖能異常を指摘された.X-3年にHbA1c 8.5 %で糖尿病と診断され,治療を開始された.HbA1c 6.0 %程度で安定していたが,高血圧などを合併しており減量・代謝改善手術を希望されX-1年に当院を紹介された.術前精査で抗GAD抗体143 IU/mLであり,これまでの臨床経過から緩徐進行1型糖尿病と診断した.減量目的に入院加療された後,腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を施行された.術後9か月の時点でもグルカゴン負荷試験で⊿CPR 4.72 ng/mL(前値2.06 ng/mL)とインスリン分泌能は保たれていた.調べ得た範囲で抗GAD抗体が比較的高力価で罹病期間が10年未満の緩徐進行1型糖尿病患者に対する腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の報告は本邦では初めてであり,貴重な症例と考えられた.

委員会報告
  • 糖尿病性腎症合同委員会・糖尿病性腎症病期分類改訂ワーキンググループ, 馬場園 哲也, 金崎 啓造, 宇都宮 一典, 古家 大祐, 綿田 裕孝 ...
    2023 年 66 巻 11 号 p. 797-805
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル 認証あり

    わが国では2014年に改訂された糖尿病性腎症病期分類が広く用いられてきた.最近では,高齢化や肥満者の増加,糖尿病や高血圧症に対する新規治療薬の開発などを背景に,糖尿病患者に合併した腎臓病が多様化していることが指摘されている.そこで糖尿病性腎症合同委員会では,腎症病期分類を再度改訂する必要性を検討した.現時点では,アルブミン尿や推算糸球体濾過量に基づく2014年分類を変更する必要性を示唆する新たなエビデンスが発出されていないことから,今回の改訂では2014年分類の基本的な枠組みは変更しないこととした.ただし,日本腎臓学会のCKD重症度分類や国際的な表記との整合性を重視し,病期名を「正常アルブミン尿期(第1期)」,「微量アルブミン尿期(第2期)」,「顕性アルブミン尿期(第3期)」,「GFR高度低下・末期腎不全期(第4期)」,「腎代替療法期(第5期)」へ変更した.

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