抄録
スロッシングに関して,数値流体計算による研究の多くは砕波やそれによる衝撃圧,それらの波面に関心が注がれ,内部の流れ場やここで扱うような基礎的な現象について理論解析のように力が注がれる例は少ない.本研究はスロッシングの基礎的な現象について,砕波などの生じない比較的小振幅の2次元矩形スロッシングを数値粘性流体解析により扱い,本数値解析コードの予測精度の検証および種々の可視化方法による詳細で分かりやすい現象把握を行っている.本研究の特徴として,収束解が得られる400~2000周期に至るまで徹底した長時間の計算を実施していることである.また,乱流モデルの有無による影響やレイノルズ数影響を調べるとともに,加振速度と加振力や加振エネルギー,水面変位振幅の関係についても位相の観点から考察を行っている.この数値計算により解析された結果は実験結果とも良く一致することを確認している.これらを踏まえて,現象の可視化を行うことにより,小さな水深比h/L=0.05では孤立波が誘起され,緩やかな波形変化にもかかわらず複雑な流れが生じることが,LIC法による流線の描画により示された.このように,数値流体計算は実験で得られない,詳細な流れ場を表現することが可能であり,可視化とともに有効な解析方法であるといえる.