チリでは、2019年に設立された新しい右派政党「
共和党
」が国政の場で台頭しつつある。本稿は、なぜ
共和党
が出現し、台頭したのか、その背景を考察することを目的とする。チリでは人々が経済社会的には格差を容認せず、また社会文化的にはリベラルな価値観をもつようになり、政治の側もそれに対応するように右派連合は中道左派連合へと接近する形で政策を変容させてきた。そうした変化に対する反動としてカストが設立したのが
共和党
である。一方で、
共和党
の台頭は、反動というよりも、治安というチリの近年の課題が関係している。
共和党
は旧来の右派と同様の主張を打ち出しつつも、治安維持という意味合いで法の支配を強調する。人々のあいだでも治安に対する問題意識は高まっており、
共和党
の台頭を促している。今後も治安という課題や従来から蔓延する政治不信が続くかぎり、チリの人々にとって
共和党
は選択肢となりうると考えられる。
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