【目的】
本研究は, QOLの構成因子からは身体機能,生活機能,ライフスタイルを取り上げ,社会的要因からは家族構成,要介護度など総合的に調査し,転倒との関連を明らかにすることである.
【方法】
対象者は,平成17年6月から平成18年3月に鹿児島県
奄美市
笠利保健センターにおいて健康診断を受けた60歳以上の住民のうち,本研究の趣旨に同意した211人である. 過去1年間の転倒経験を「経験群」と「非経験群」の2群に分け,社会的属性要因(年代,性別,家族構成,要介護認定区分,身体的状況,骨折部位),運動能力得点,生活機能得点,ライフスタイル得点を比較するためにx2,t検定を用いて調べた.各測定項目の関連に関して,相関係数を算出した.転倒経験(1),非経験(0)を従属変数にし,年齢,形態,運動能力,生活機能を独立変数にして重回帰分析を用いた.統計的検定の有意水準はいずれも5%未満とした.
【結果】
転倒経験における「経験群」,「非経験群」と各測定項目間の比較では,年代,性別,家族構成,身体的状況,要介護認定区分,形態,生活機能,ライフスタイルにおいて両者の間に相違はなかったが,骨折部位(x2=74.9,p値<0.0001),最大歩行速度(p<0.001)においては「非経験群」が「経験群」より有意に高値を示した.各測定項目間の相関では,年齢と形態,全運動能力,生活機能,ライフスタイルの各測定項目と有意な負の相関(p<0.0001)が見られ,転倒とは最大歩行速度で有意な相関(p<0.05)が見られた.転倒の決定因は,最大歩行速度(p<0.01)であった.
【考察】
本研究では,地域高齢者211名を対象に運動能力,生活機能,ライフスタイル,社会的属性間を調査し,転倒との関連について検討した.その結果,骨折部位,最大歩行速度において「非経験群」が「経験群」より有意に高値を示し,転倒の決定因には最大歩行速度が抽出された.
転倒と生活機能,ライフスタイル,要介護度,家族構成などが関連しなかったのは,対象者自らが保健センターまで来て健診を受けることが可能であったことから比較的元気な高齢者集団だったことが考えられる.
【まとめ】
今後は,縦断的研究や介入研究により転倒と身体機能,生活機能,ライフスタイルとの関連を明らかにし,高齢者が転倒しないための指標基準の作成や転倒してもQOLを低下させないための健康増進活動に役立てていきたい.
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