理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-211
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生活環境支援系理学療法
地域高齢者の自立とライフスタイルとの関連
宮原 洋八
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抄録

【目的】
この研究の目的は, 地域高齢者の2年間の追跡調査にもとづき自立に影響するライフスタイル,生活機能,社会的属性との関連を明らかにすることである.
【方法】
初回調査は,2005年6月にA市保健センターにおいて健康診断を受けた60歳以上の高齢者のうち,本研究の趣旨を説明し同意した223人である.性,年齢,家族構成,転倒状況を聴取し,ライフスタイル22項目,生活機能13項目に関して質問紙を用いた面接調査を行った. IADLおよび転帰に関する追跡調査は,2年後の2007年6月に電話により行った.IADLがすべて自立159名,IADLが1つ以上不可の者または入院・入所,死亡者を非自立52名とし,計211名を本研究における分析対象とした.なお,連絡が取れなかった12名は分析より除外した.
【結果】
IADLの「自立群」,「非自立群」と年代の比較では, 「自立群」は, 「60歳~74歳群」では「75歳以上群」より有意に多かった(χ2=16.85,p<0.01).各測定項目間の相関では, 自立と老研式指標(知的,社会的),ライフスタイル(社会的,心理的,身体的)と有意な相関(p<0.01)が見られた. 自立に対するロジスティック回帰分析では, 社会的な生活機能とライフスタイルが要因であった.
【考察】
本研究では,自立と家族や転倒との有無との関連も試みたがどちらも有意に作用しなかった.その理由として,奄美では20~50歳代の働き手がほとんど本土に出て行くために,高齢者の独居あるいは二人暮らしが多い.サポートや転倒により介助が必要になれば本土の子供が引き取るケースもあり,島に居住している間はできる限り自立して生活する.このことが有意に作用しなかった一因とも考えられる.
本研究では,地域高齢者の自立維持の影響をライフスタイル,生活機能要因を投入する方法をとった結果,社会的な生活機能とライフスタイルが自立維持に影響力を示した.つまり高齢期の人々の自立維持にとって社会との関わりを持つことが重要であることが伺えられた.これらからIADLを調査することが高齢者の自立性の指標となり, 社会的な生活機能とライフスタイルを維持している高齢者が,サクセスフル・エイジングの獲得や維持に関連していることが考えられる.
【まとめ】
対象は,K町に住む高齢者223名(平均年齢76.4歳)で,初回調査時(2005年)に性,年齢,家族構成,転倒状況を聴取し,ライフスタイル22項目,生活機能13項目に関して質問紙を用いた面接調査を行った. これらの対象に対する追跡調査(2007年)でIADLの全項目が自立していた者は75.4%に見られた.各要因の自立への影響を検討するために,ロジスティック回帰分析を行った.その結果,社会的なライフスタイル,生活機能を維持することが高齢期における自立を維持するために有用であることが示唆された.

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© 2009 日本理学療法士協会
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