2011 年 31 巻 4 号 p. 422-429
複数の事象の空間的な関係を表す文の理解能力を調べる目的で「関係の理解テスト」を作成し, この検査が統語処理能力の低下では説明できない水準の障害を検出しうるか, それは左頭頂葉病変に特異的な障害であるかを検証した。対象は左頭頂葉に病変のある軽度流暢型失語症例 5 名, 左頭頂葉に病変のない失語統制群 5 名 (軽度流暢型 3 名・軽度非流暢型 2 名), 左頭頂葉病変群と年齢をマッチさせた健常統制群 10 名である。統制群 2 群は「関係の理解テスト」で良好な成績を示したが, 左頭頂葉病変群では全例で低下を示した。しかし, 失語症構文検査, トークンテスト, 助詞理解検査では左頭頂葉病変群の成績は良好で, 「関係の理解テスト」の成績とこうした従来の文理解検査の成績との相関は明らかでなかった。これらの結果から「関係の理解テスト」は文の統語的側面とは性質の異なる, 空間的な関係を表す文の理解障害を検出するのに鋭敏であることが示された。