日本蚕糸学雑誌
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カイコ幼虫血清タンパク質 (BmLSP) mRNAの発育に伴う変動とホルモンによる発現調節
藤原 義博山下 興亜
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1998 年 67 巻 5 号 p. 393-401

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抄録

カイコ幼虫血清タンパク質 (BmLSP) は5齢初期幼虫までの主要な血清タンパク質である。この論文ではBmLSPの遺伝子発現の調節機構を明らかにするための第1段階として, 血清中のBmLSP濃度の変化と脂肪体中のmRNA量の変化を定量し, アラタ体摘出とエクダイソン投与の影響を30kタンパク質と比較しながら調べた。血中のBmLSP濃度は5齢2日まで緩やかに上昇し, その後急激に減少した。脂肪体中のBmLSPmRNAは4齢の摂食期には多く脱皮期には検出できなかった。アラタ体を摘出した幼虫ではBmLSPmRNAは減少したが, 30kタンパク質は増加した。この効果は幼若ホルモン類似物質の投与によって打ち消された。BmLSPmRNA量は4齢と5齢幼虫遊離腹部への20ハイドロキシエクダイソンの投与によって押さえられた。BmLSP遺伝子の発現は蛹への変態への条件づけの状態を表していると考えられる。またBmLSP遺伝子は変態に伴う遺伝子発現の研究にとって適切なモデルシステムとなりうると考えられる。

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