Academic Collaborations for Sick Children
Online ISSN : 1884-5002
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特集 小児がん治療後のQOL-妊孕性温存の最先端研究-
医原性不妊を回避する“一時的”卵巣移植
コラボレーション: 救急医療 * 生殖医療 * 臓器移植
福島 貴子中川 毅史野口 修平三原 誠
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2009 年 1 巻 1 号 p. 12-15

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抄録

 癌患者は多くの場合、抗癌剤治療や放射線治療の副作用のため不妊症を患う。成人では、精子や卵子/受精卵または卵巣組織の凍結保存が選択肢の一つとして考えられるが、凍結による細胞傷害のため妊娠率は非常に低い。精子や卵子を性成熟前に集めることはできないため、現在、子供ではこの問題に対する治療アプローチは皆無である。我々はこの論文において、ラットモデルを用いて、卵巣組織を凍結保存せず、生きているドナーとレシピエントの間で一時的に生殖器を移植することによって、生殖器の機能を温存するという新しい移植方法を提案する。この移植方法は、切断肢の修復を目的とした形成外科技術が基礎となっている。レシピエントラットから摘出した卵巣を、一時的にレシピエントラットに移植し、その後卵巣をドナーに再移植すると、自然妊娠、出産に成功した。顕微鏡観察によって、血管吻合を施して移植した卵巣内の卵子はほとんどが生存していることがわかった。また、大腿骨骨ミネラル密度解析により卵巣摘出後よりも骨密度が増大したことを確認した。さらに一時的卵巣移植の医療分野以外への応用として、私たちは、哺乳動物が卵巣を二個保有していることから、一つは移植用として保存しておくことで、閉経後に生殖器移植することで繁殖効率を改善させることができるのではないかと考えている。

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© 2009 日本学術連携医学会
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