日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
同一経営母体, 同規模の2カ所の特別養護老人ホームにおける outcome の比較
入所者の死亡および入院状況に関する検討
岡村 裕
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2001 年 38 巻 5 号 p. 665-673

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抄録

特別養護老人ホームの質の評価における結果 (outcome) 情報の有用性および活用方法について検討することを目的として, 施設の構造的要素に差がない, 同一経営母体, 同規模の2カ所の特別養護老人ホームA, Bにおける入所者の死亡および入院状況について比較した.
対象2施設の入所者の入所時点における基本的属性の分布に有意差は認められなかった. 一方で, 死亡退所者の平均生存期間はB施設が有意に短く (A施設1,165日, B施設831日, p<0.05), 入所者の累積生存率および累積非入院率に有意差が認められた (p<0.05). この施設差は, 比例ハザードモデルを用いて予後因子を調整した場合においても認められた (ハザード比: 死亡=1.562, 入院=2.526, p<0.01). また, 2施設の施設外医療機関の活用状況について違いが認められ, 初回の利用が入院だった者の割合はB施設で有意に高かった (A施設9.6%, B施設19.3%, p<0.05). さらに, 入院と死亡との関連をみると, A施設では入院した者としなかった者の死亡リスクに有意差はなかったが, B施設では入院した者の死亡リスクが有意に高かった (p<0.05).
施設の構造的要素に差がない2つの特別養護老人ホームにおいて, 累積生存率および累積非入院率の差が認められたことから, これらの outcome は, 施設の構造情報だけでは把握できない特別養護老人ホームの質の評価指標となる可能性が示唆された. 特別養護老人ホームの質の評価において, 入所者の死亡および入院状況という outcome 情報の収集は重要であると考えられる.

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© 社団法人 日本老年医学会
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