2012 年 53 巻 4 号 p. 294-301
喉頭全摘後の代用音声の手段として本邦で一般的に使用されているボイスプロステーシスはグロニンゲンボイスボタン®とプロヴォックス2®であるが,前者から後者にボイスプロステーシスを変更した同一患者の音響分析を含めた音声機能評価の報告は,われわれの知る限りではなく,今回以下のように多方面から音声機能評価を行ったので報告する.
2011年6月までにボイスプロステーシス発声が可能であった10例のうち,ボイスプロステーシスをグロニンゲンボイスボタン®からプロヴォックス2®に変更した6例を対象とした.自覚的音声機能評価法としては独自質問とVHI-10を使用した.MPTと発話明瞭度の測定に加え,音響分析としてPPQ,APQを測定し,音読時のサウンドスペクトログラムと平均ピッチの経時的変化を調べた.
他覚的音声機能では明らかな変化はなく,患者自身による自己評価でも大きな変化はなく,大きな問題も生じなかったことから,支障をきたすことなく移行可能であると考えられた.