2014 年 55 巻 3 号 p. 187-194
本研究では,日本語話者の発達性読み書き障害児群を対象に有色透明フィルム使用が音読速度に与える影響を,明るさを統制しない場合の色の要因に焦点を当てて検討した.対象は8~14歳の発達性読み書き障害児と典型発達児,各12名である.音読課題(ひらがな,カタカナの単語と非語および文章)をフィルム不使用条件,無色透明フィルム使用条件および有色透明フィルム使用条件の3条件で実施し,音読所要時間を計測した.実験手続きは後藤ら(2011)に従ったが,有色および無色透明フィルム使用時に低下した刺激の表面照度の補正は行わなかった.両群ともに,所要時間はすべての音読課題において3条件間で有意差は認められなかった.明るさを統制しない場合でも有色透明フィルムの使用は発達性読み書き障害児の音読速度に影響を及ぼさない可能性が考えられた.