症例は70歳代女性．Hepatitis B virusによる肝硬変症で通院中，各種画像検査で肝細胞癌（HCC）と診断され，肝部分切除術を施行した．術後8カ月目にα-fetoproteinが上昇し，腹部造影CTで右胸壁に腫瘤が描出された．18F-fluorodeoxy-glucose positron emission tomography（FDG-PET）CT検査では同腫瘤のみにFDGの集積を認め，HCCの孤立性胸壁転移の診断で摘出術を施行した．組織学的に原発巣と同様の低分化型肝細胞癌と診断された．生検や治療時の穿刺ルート，手術創などに起因しない血行性胸壁転移例は本邦報告10例目とまれであった．多くは外科的治療を施行されていたが，オンコロジックエマージェンシーである上大静脈症候群を発症した例もあり，HCC患者あるいは術後の患者では，胸壁転移も念頭においた検査・治療が必要であると考えた．
