症例1は30歳男性.2012年冬,発熱,嘔吐,下痢を主訴として当院初診.AST/ALT:1141/1980(IU/L),T-Bil. :7.55 mg/dL,IgM-HAV抗体陽性でA型急性肝炎と診断した.インドネシアを含む東南アジア諸国への頻回の海外出張歴があり,輸入肝炎が疑われた.症例2は38歳男性.2012年春(インドネシア滞在中)に40℃に至る発熱・悪寒を認め,現地の病院を受診するも原因不明とされて,帰国後当院初診.AST/ALT:835/1780(IU/L),T-Bil.2.2 mg/dL,IgM-HAV抗体陽性でA型急性肝炎と診断した.両症例の血清からHAV-RNAが検出され,分離されたHAVの分子系統解析により,インドネシア滞在中に現地で感染したと推定され,両症例のHAV株は99.3%の塩基配列の一致を示した.HAV侵淫度の高い国や地域への渡航前にはHAワクチンの接種が望まれる.