肝臓
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症例報告
A型肝炎ウイルスの分子系統解析により感染時期・地域が推定された輸入A型肝炎の2例
小畑 達郎巽 亮二竹本 隆博田中 俊樹平田 邦明関岡 敏夫竹田 彬一石金 正裕横田 和久名取 洋一郎池谷 敬古川 恵一川上 万里高橋 雅春岡本 宏明
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2012 年 53 巻 11 号 p. 754-762

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抄録

症例1は30歳男性.2012年冬,発熱,嘔吐,下痢を主訴として当院初診.AST/ALT:1141/1980(IU/L),T-Bil. :7.55 mg/dL,IgM-HAV抗体陽性でA型急性肝炎と診断した.インドネシアを含む東南アジア諸国への頻回の海外出張歴があり,輸入肝炎が疑われた.症例2は38歳男性.2012年春(インドネシア滞在中)に40℃に至る発熱・悪寒を認め,現地の病院を受診するも原因不明とされて,帰国後当院初診.AST/ALT:835/1780(IU/L),T-Bil.2.2 mg/dL,IgM-HAV抗体陽性でA型急性肝炎と診断した.両症例の血清からHAV-RNAが検出され,分離されたHAVの分子系統解析により,インドネシア滞在中に現地で感染したと推定され,両症例のHAV株は99.3%の塩基配列の一致を示した.HAV侵淫度の高い国や地域への渡航前にはHAワクチンの接種が望まれる.

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© 2012 一般社団法人 日本肝臓学会
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