2016 年 73 巻 2 号 p. 139-146
ヤモリは足に吸盤もないにも関わらず,垂直の壁を登ることができる.これは足に無数の繊毛があり,この繊毛と壁との間でvan der Waals力が働くためであるといわれている.筆者らが最近,従来吸着相互作用力がほとんどないと考えられてきたポリエチレン表面に対し,側鎖に長鎖アルカン鎖をもつ高分子がこの機構を分子レベルで実現して,非常に強固な相互作用を示すことを見いだした.この機構は,ポリエチレン表面分子と側鎖の長鎖アルカン鎖が疑似結晶を形成しているために生じると考えることができ,結晶化超分子間力と称されるものである.本報では,この結晶化超分子間力の発現メカニズムと,それを応用したポリエチレン表面改質機能について,これまでの研究をまとめて概説する.