1991 年 35 巻 6 号 p. 459-465
尿素を含むゲルを用い, 泳動途中で陰荷電還元剤チオグリコール酸を添加するSDS-ポリアクリルアミド電気泳動法をイムノブロッティング法と組み合わせることによって, 動脈壁III型コラーゲンの解析を行った. すなわち, 組織から抽出したIII型コラーゲン中で, 鎖間架橋結合をもたずに鎖間ジスルフィド結合を介して三本鎖として存在するもの, 鎖間架橋結合により二本鎖として存在するもの, および鎖間ジスルフィド結合をもたずにSDSだけで一本鎖に解離するものをそれぞれ分離定量した. これらを, それぞれIII型コラーゲンの分泌, 架橋, 分解の指標とし, ラット動脈壁および皮膚のIII型コラーゲン鎖の加齢による変化を検討した. いずれの組織でも加齢にしたがってIII型コラーゲン量が減少したが, 各組織でそれぞれの分子種の量は異なっていた. すなわち, 大動脈, 腕頭動脈では架橋が最も多かったのに対し, 皮膚では分泌が最も多く, 架橋は分解よりも少なかった.