1996 年 40 巻 3 号 p. 141-146
キャピラリー電気泳動と先端分析を組み合わせることにより塩基性薬物の非タンパク結合型濃度を解析するための新規超微量分析法を開発した. 電気浸透流が発生しない条件下で, 薬物-血漿タンパク質混合試料をキャピラリーに注入する. 先端分析の原理に基づいて, 試料ゾーンから非結合型薬物ゾーンが移動し, 台形状ピークとして観測される. このプラトー部分の高さから非結合型薬物濃度を求めることができる. 泳動緩衝液中にキラルセレクターを添加して光学活性な薬物のゾーンを光学分割することにより各異性体ごとの非結合型濃度を測定できる. 本分析法の試料注入量は約200nlであり, 従来法の500分の1である. 本分析法を用いて, モデル塩基性薬物とα1-酸性糖タンパク質(AGP) との結合に及ぼすシアル酸残基の影響を立体選択的かつ定量的に検討した. シアル酸残基はプロプラノロールとAGPとの結合における立体選択性の原因となるが, ベラパミルとの結合に影響しないことが判明した.