大気環境学会誌
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川崎市田島局における光化学オキシダント濃度と一酸化窒素濃度に関する研究
竹内 淨関 昌之井上 康明岩瀬 義男
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2009 年 44 巻 1 号 p. 52-57

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抄録

川崎市内の臨海工業地域に近い田島局の常時監視データを用いて,NOを含む前駆物質とOx濃度の長期変動,並びに,8月におけるOx濃度とNO濃度との関係を詳細に検証した。その結果,1985から2005年度では,年平均値及び8月の月平均値とも,NOの低下傾向及びOxの上昇傾向がみられた。特に,各8月の月平均値では,OxとNOの間にトレードオフの関係がみられた。8月のOx高濃度事例では,NOがOxの生成を緩和すると推測されたため,1985,1995及び2005年度の各8月における5時のNO濃度とOx日最高濃度の関係を検証した。これより,5時のNO濃度が高い日には,Ox日最高濃度が低く,5時のNO濃度が低い日には,Ox日最高濃度が高くなりやすいことが分かった。また,5時のNO濃度が高い日でも,風速が小さく,NMHC濃度が高い場合にはOx日最高濃度が高くなることが分かった。8月の田島局では,Ox日最高濃度は,NOによるOx生成の緩和作用とNMHCによるOx生成の促進作用が競合した結果に強く影響されると考えられた。田島局では,8月のNO月平均値が経年的に低下傾向を示しており,8月のOx月平均値の経年的な上昇傾向の一要因であることが示唆された。

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© 2009 社団法人 大気環境学会
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